「パラサイト・イブ」の落合正幸監督の作品で、「パラサイト・イブ」と同様、よく売れた小説の映画化です。映画版「パラサイト・イブ」は原作とかなり違った話にされていましたが、今回の「催眠」はそれ以上で、キャラクターの名前と設定、それも一部だけ原作と同じで、あとは全く違った話と言ってもいいと思います。
映画は、動機の見当たらない連続自殺事件から話が始まりますが、話が進むにしたがって菅野美穂演じる、多重人格のキャラ・由香が中心の話になってしまい、連続自殺事件を仕掛けた犯人や犯行の目的がいつの間に忘れられて、語られないのは釈然としませんでした(結局これは話のきっかけでしかなかったのでしょう)。
謎を出しておいて語らないのは「エヴァンゲリオン」がそうでしたが、あれと同様に、製作者達が謎を出すだけ出しておいて、その回答を考えずに逃げたのではないかと想像します(「エヴァ」の悪影響がついに出たか!)。
原作は話が論理的に展開していたので、映画もそうなるかと思っていたら、最後は「リング」みたいな呪い系のホラーになってしまったのは、原作のエッセンスをぶち壊した感じがしました。クライマックスの菅野の出方は人間じゃないです。「リング」がヒットしたので、霊的なホラーにした方がいいと思ったのかなあ。とはいえ、予想外の展開に、作品をぶち壊し具合を楽しめたのも事実なのですが。
落合監督の前作「パラサイト・イブ」は話の論理性はあったものの、退屈しましたが、今回の「催眠」は話は退屈しなかったものの、論理性が感じられませんでした。この監督は原作を大幅に変えるのが好きなのでしょうか?映画版「リング」第1作みたいに、原作のエッセンスだけ抽出して、話の展開は原作と同じにするやり方だってあったでしょうに。
原作はあまり面白いとは思えませんでしたが、催眠にはTVでやっているようなショー的なもの以外にも、いろんな種類があると分かったのは勉強になりました。原作では催眠を心の有効な治療法としてポジティブに捕らえていましたが、映画は原作には無い、催眠暗示を使った殺人を描写して、催眠をネガティブに見せている感じがします。原作者はパンフに書いてあったインタビューでは映画を絶賛していましたが、本当にこれで満足しているのか疑問です。
催眠暗示での殺人という着想は、「CURE」ですでに出てきたので、新味は感じませんでした。
菅野美穂は「富江」でも存在感を見せてくれたし、ホラー系のキャラならお任せという感じがします。今後は屈折したキャラの役しか来ないんじゃないかなあ。
主役の稲垣吾郎は、初めのうちはTV「ソムリエ」まんまの感じがしました(いつ「以上」て言うのかなー、なんて)。菅野美穂と共演なので余計そんな感じがしたのかもしれません。
宇津井健が映画に出たのは久しぶりだと思いますが、この人の存在感というか、貫禄は映画にふさわしい感じがしました。今後はもっと出てほしいです。
渡辺由紀はタバコのCM以来気になっていますが、今回の、宇津井健の部下で仕事に慣れていない新米刑事(?)の役は初々しい感じで、TV「ハッピーマニア」で演じた不良OLの役よりはこっちの方が好みです。福田明日香が20代になったら(芸能界に復帰するか!?)ああいう感じになるかなあ。
升毅はTV「沙粧妙子 最後の事件」でのサイコ野郎のイメージが強烈だったので、予告を見た時は彼が黒幕かと思って楽しみにしていたのですが、以外に平凡な役どころだったのは少しがっかりしました。
上映2日目に新宿で見ましたが、客席は高校生や大学生ぽい人たちでほぼ満席でした。やはりホラーは当たるんでしょうか?「キャリー」と同じパターンだったラストには、客席から悲鳴上がりました。