まだ見ていない人
主人公が軽めのセリフを使うのに親近感が持てました。主人公の友人のサムライ二人との「3バカトリオ」のかけあいもいい感じです。言葉づかいやキャラクターなど、時代劇ぽくない、普通のドラマの感覚であるのが逆に面白いです。この方が今の観客には受けやすいと思います。展開がややスロー気味な感じはしましたが、キャラクターの面白さと状況の意外さで退屈せず、終わりもさわやかで気持ち良く見れました。
白黒映像が主体ですが、所々入るカラー(単色)が効果的でした。特に人を切ったカットで入る赤は入り方が一瞬で、アニメを思わせる心地よい速さでした。
映像が白黒なのは予算のせいらしいですが、雰囲気があって結果として良かったと思います。白黒ということで黒澤映画を思い出しますし、宿場で2つの勢力が対立してるって「用心棒」の設定そのままの話もありますが、監督が黒澤映画の大ファンということで納得でしょう。
敵役になる布袋寅泰が、目がコワい感じを上手く生かして合ってます。自分は悪いことをするつもりはないのに状況が悪い方向に転がってしまい「なぜそうなる?」とぼやくのが面白いところ。彼の音楽も各シーンに合ってました。
緒川たまきってまともに見たのは初めてでしたが(今さら…)、こんなにかわいいとは知りませんでした。健気で気立てのいい性格の設定であることはもちろん、髪型が普通の時代劇と違うのも良かったです。
宿場の女親分役である夏樹マリは久しぶりに見ましたが、登場シーンはなかなかセクシーでした。なのにその後にしわだらけの足首を見せたのは意図があるのかなあ?彼女が布袋の前で踊るシーンも、踊りというよりはダンスという言い方があってる感じで、面白い見せ方でした。
主人公の父親役の内藤武敏や、忍びの頭領役である谷啓など、キャラクターに笑えるひとくせが加えてあって興味が持てます。谷啓はよぼよぼの役所(「タオの月」での彼は下手だと思ったけど、これは演技指導の責任か)で、登場シーンは毎度笑えるのですが、その部下たちは登場時は凄腕、というのも落差があっていいです。しかし、この部下たちも活躍する時にはやっぱドジばかりってのは頭のせいか?
ここ数年、劇場公開の日本映画は増えていますが、その大多数はいかにも低予算で通好みぽい、キャラクターの心理や映像主体の感じを受ける作品ばかりで、本数の割には見たいと思うのは少ないです。この作品みたいに、違う方向性を見せてくれれば見る気にもなるんですが。
サムライものは海外ではもともと受け入れられやすいようですし、この作品は今っぽい軽めなテイストもありますから、アメリカやアジアで公開したら受けるかもしれません。
クレジットにはエピソード1と書いてあったので、2作目もありかもしれません(だといーなー)。これが冗談で入れたクレジットじゃなければ。
不満だったのは、パンフが薄いくせに1000円だったことでした。せっかくパンフ買う気になってたのに、この薄さじゃ高すぎるっス。
すでに見た人
ナレーションで「これが300年前の僕だ」というような言い方が冒頭に出てくるのですが、このナレーションを喋っているのは主人公の生まれ変わりなんでしょうか?でも、その説明を入れるとなると現代のシーンをこの作品に入れなきゃなんなくなり、雰囲気がぶち壊しになるかもしれません。
布袋が最後の方で、自分を殺そうとした夏樹マリを殺すのは分かるのですが、その後に彼女の手下を全員切ってしまうのはやりすぎと感じました。一番親しかったポン引きまで殺すことはないだろうと思ったんですが。
布袋は敵役ですが、憎しみを誘うほどの悪人ではなく、メインキャラクターで死ぬのは彼だけ、それも自滅で、他の人は誰も死なないで、ハッピーエンドなのはさわやかで良かったです。ただ、緒川たまきがラストで普通の髪型になってしまったのは興ざめ。