シュリ

 

まだ見ていない人

99年秋の東京国際映画祭で見ました。
「シュリ」のことはだいぶ前に新聞で、韓国でメチャヒットしてるという記事を読みましたが、とりあえずチェックしてみようか、という感じであまり期待していませんでした。
しかしフタを開けてみれば、この作品がこの回の東京国際映画祭での一番の収穫でした。

映画を見終わって、心から「面白かった!」と言える作品は1年のうちにそう何本もありません。「シュリ」はその数少ない1本です。
いくつか「?」と思う部分もあったのですが、怒涛のクライマックスの荒波に、ささいな疑問は頭から吹き飛びました。
韓国以外の国で公開したかどうかは知りませんが、ヒットするのも当然だと思いました。どういうシーンがあるか、とかいう予備知識は全く無しで見たので、余計に衝撃が大きかったかもしれません。
僕にとっては、1999年に見た映画のベストワンです。

映画の内容は、韓国に入り込んだ北朝鮮のスパイ部隊を公安部が追いつめる話ですが、南北問題のテーマを分かりやすく、退屈させることなく話に絡めています。
北朝鮮をただの悪者にするのではなく、彼らの主張(過激すぎるので、本当かと思いますが)も入れているのが作品に厚みを出しています。彼らの国での現状は政治の責任だと思いますが、そういうことまでは彼らは思いもしないように教育されてるのでしょう。
北朝鮮での軍事訓練シーンから映画はスタートしますが、このシーンの凄まじさとカットの速さでもう映画に引き込まれます。
ガンアクションもすごい迫力でしたが、これは兵役のある国だから当然かもしれません。CGもがんばっていました。
この映画で一番気に入ったのはラストの切なさです。このラストのおかげで、「シュリ」はハリウッドに多い単純なアクション映画(それが全て悪いとは言いませんが)とは違う、「男たちの挽歌」のような、キャラクターの情念を感じさせる作品になりました。
主演のハン・ソンギュは、「八月のクリスマス」での性格の穏やかなキャラクターとはと全然違うキャラを好演しています。ヒロイン役の女優は映画初主演だそうですが、そうとは思えないほど上手いです。

日本映画でも、ここまで良く出来たアクション映画はあったでしょうか?

話といい、アクションといい、韓国でなければ作れなかった作品かもしれません。
「ソウル・ガーディアンズ」とかを見た時に、韓国もなかなかやるな、と思いましたが、これほど早く日本映画なんぞ超える作品を作られるとは思っていませんでした。
韓国、恐るべし!

「シュリ」の日本版のHPでは「踊る大捜査線」の本広監督や、平成「ガメラ」シリーズの樋口監督が、誉めているコメントを載せています。面白い作品を作る人はちゃんと見てます。

 

 

 

すでに見た人

冒頭の北朝鮮での軍事訓練シーンは、訓練というよりも殺し合いといってもいいように見えますが、事実に基づくシーンなのでしょうか?こんなことをしていたら、優秀な人材をかえって減らすことになると思うのですけど。北朝鮮の軍人はそういう考え方はしないのかなあ。

クライマックスでの、ヒロインの最後の表情と、それを見つめる主人公の表情はとても印象に残りました。

ヒロインは死ぬ瞬間、悲しかったのでしょうか?

僕はそうは思いませんでした。彼女はたぶん、とても律儀で、逃げることなど考えられない、任務に忠実にならざるを得ない性格だったのでしょう。

だからこそ、彼女は殺してほしいと、いや、自分を止めてほしいと恋人に思ったのではないでしょうか。

彼女はたぶん、愛する人にとどめを刺されたのが、せめてもの救いだったと思いながら死んでいったのではないかと思います。

僕は主人公が幸せにならない映画は好きにはなれないことが多いのですが、この作品は例外です。
見終わってから、この作品の韓国のHPを見てみたら、クライマックス部分でのヒロインの写真があったのはうれしいです。

 

 


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