スパイダーマン

 

 

何10年もの歴史を持つ有名なアメコミ「スパイダーマン」の映画化の話は何年も前から言われていて、一時は「T2」の次回作としてジェームズ・キャメロンが監督するなんていう話が出たこともありました。
その後も話が消えたり浮上したりして本当に出来るのかと思っていましたが、「シンプル・プラン」などを作ったサム・ライミ監督に落ち着き、やっと完成です。
スパイダーマンはいわばクモ男で、手から糸を出し、それに掴まって宙を舞う浮遊感あふれるアクションが魅力で、映画はそれを忠実に再現しています。この、ビルとビルの間をスパイダーマンが渡り飛んでいく飛行感覚は実に爽快で、そのスピード感は映画ならではの表現です。このアクションを見るだけでも映画館に行く価値があります。

サム・ライミの初期監督作品「死霊のはらわた」や「ダークマン」などには彼独特の毒っぽさがありましたが、「シンプル・プラン」や「ギフト」など、ここ数年の彼の作品は面白いものの、オリジナリティーが薄れたように思います。この「スパイダーマン」も例外ではありません。
この作品がヒットを約束されたビッグバジェットのハリウッド大作ということで、たくさんの人に受けるように考えたのか、ライミらしい毒っぽさはあまりなく、マイルドな感じに仕上がっています。
とはいえこの映画、ハッピーエンドでお茶を濁しがちなハリウッド大作と違い、「ダークマン」を思わせる、辛口のヒーロ―ドラマに仕上がっています。
人智を越えるパワーを持ってしまえば、それを自分の欲望に使おうと誰もが考えるでしょう。この映画は、主人公がなぜ自分の力を悪に使わないかという理由をちゃんと描写して、「力を持つ者の責任」というテーマを出した点はうまいところです。これは同時多発テロの報復に対する批判にも見え、今っぽいテーマです。

同時多発テロといえば、この映画には崩壊してしまった世界貿易センタービルが映っているので、それを消さなければならなくなったことが事件後に話題になりました。実際本編ではそれらしいものは映っておらず、消去は成功しているようです。ま、残っていたとしても、飛ぶシーンのカメラワークは速いので気付かないでしょう。
スパイダーマンがビルからビルへ飛んでいく描写は、カメラが常に速いスピードで動いているので、デジタル合成を使わなければ表現できなかったはずです。CGでスパイダーマンを作ったカットもあるかもしれません。特に敵であるグリーンゴブリンは、メタルのボディなのでCGで作りやすそうです。そういう意味では、この間の「ロード オブ・ザ リング」と同様、この作品はデジタル技術が無ければ映画化は不可能だったと言えます。
冒頭のクレジットで、SFXのスーパーバイザーとして「スター・ウォーズ(4)」や「宇宙空母ギャラクチカ」などに関わったジョン・ダイクストラの名前が出ています。しかし、彼の会社だと思っていた「マスク」などに関わったアポジーの名前はエンドクレジットの特撮のところには無く、そこには「スターシップ・トゥルーパーズ」を手がけたソニーピクチャー・イメージワークスがクレジットされていました。

スパイダーマンである主人公ピーターを演じるのはトビー・マグワイアです。「サイダーハウス・ルール」でも「ワンダーボーイズ」でも、彼は陰のある、繊細なキャラクターが似合っていましたが、この「スパイダーマン」ではその感じが、辛口の話にぴったりハマっています。
主人公が思いを寄せる少女、MJを演じるキルスティン・ダンストは「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」の吸血少女役以来、最近では「チアーズ」などちょくちょく出てるようです。僕は彼女がそんなに美人とは思えないのですが、この作品ではミニスカ姿やら、胸が透けるシーンがあったりして、ヒ−ロー物のヒロインらしからぬ色っぽいフェロモンを出しまくって目を楽しませてくれます。
敵役グリーンゴブリンを演じるのはウィリアム・デフォーです。この人は悪役顔だと思うのですが、ブレイクした作品が「プラトーン」だったおかげで演技派と見られるようになったせいか、悪役はあまり多くなく、ワルを演じるのは「スピード2」以来かもしれません。このグリーンゴブリンも「スピード2」の悪役ぽいエキセントリックな感じのキャラですが、ウィリアム君は楽しそうに演じています。
主人公の育てのおじ役でクリフ・ロバートソンが出ています。「まごころを君に」など、60年代には主演作が多かった彼も今やじーさまになってしまいましたが、元気な顔を見せてくれるのは嬉しいです。

この作品で音楽を担当したダニー・エルフマンは「バットマン」をやってますし、コミック原作のTVドラマ「フラッシュ」でもテーマ曲を作曲してました。「ダークマン」の音楽も彼だったと思うし、ヒーロー物にはやたら縁があるようです。

「スパイダーマン」は20年以上前に日本でもテレビドラマになっています。といっても原作や今回の映画版とは大幅に違い、スパイダーマンは宇宙刑事の元祖のような奴で、最後には巨大ロボットに乗って敵と戦うという、いかにもの東映ヒーロータイプにアレンジされていました。DVD出るかなあ?権利が…。

この映画はパート3まで製作が決定しているそうです。ラストで次の敵を匂わせるようなセリフがありますが、その通りならヒーローは辛いなあ…。
主人公を噛んだクモの行方を映画では語っていないし、もしかして…?

 

 


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スパイダーマン2

 

 

全世界的に大ヒットしたコミック原作映画の続編です。前作から2年しか経っていなくて続編ということは、前作の製作時にすでにパート2が決定していたのでしょう。

予告編で今回の話は、ヒーロー生活に疲れた主人公ピーター(トビー・マグワイア)が一旦スパイダーマンをやめるものの、再び戦いの舞台に立つことを決意していくお話かと予想しましたが、まさにその通りに展開になります。
なのでストーリーに意外性はあまり見られません。新味が無いと言えばないのですが、中盤以降の話は、観客がこうなって欲しいと願うであろう展開になっていきます。こういう期待を裏切らない話というのは、ヒーロー物の王道かもしれません。

映画の前半は、普通の人生でなくヒーローを選択したゆえのピーターの苦労が描かれます。彼は人のための行いをしても誰からも認められることなく、それどころか生活が苦しくなるなど、かえって追い詰められることになります。
ピーターは警察や消防が出動するたびにスパイダーマンに変身してるようですが、いちいちそんなことをしてればバイトも出来ないし、生活に苦労するのは目に見えているでしょう。警察や消防は頼りにはならないかもしれないけど、ある程度は彼らに任せる割り切りがあっていいと思います。
いくら特殊な力を授かったとはいえ、全ての犯罪や悪を背負い込む必要は無いと思うし、それを一手に引き受けるなど不可能です。もっと要領よくやれよピーター…と前半は引いてしまいました。

しかしピーター君がそんな考えを変えていく?後半での、列車のシーンは感動的でした。朝日新聞の読者評での「スパイダーマンが多くの愛に包まれるシーン」という文は上手い表現です。
ヒーローが守るだけではないこういうパターンは、日本の特撮ヒーロー物でもたまに出てきますが、やはり熱くなります。
このシーンには「ナウシカ」を連想させる箇所がありますが、サム・ライミは「呪怨」のリメイク版のプロデューサーもやってるくらいだから、日本のアニメや特撮モノをけっこう見てるかもしれません。

またこの感動シーンの前の、列車での戦闘シーン。今回の敵ドック・オクは、飛行攻撃が主だった前作のグリーン・ゴブリンとは違い、歩きが主体の重量級の攻撃をします。なのでここの戦闘シーンは前作以上の迫力があり、ピーター君痛そうです。
このドック・オクの最後が、単なる悪役にならなかったのも良かった点でした。単なる悪で終わらないパターンも、日本のヒーロー物の影響かと思いたくなります。
それにしても、ドック・オクはもともと核融合をやる博士なのに、なんでタコみたいな触手が必要なんだ?と突っ込みたくもなりますが、それは考えるだけムダでしょう。

前作はラストが「ダークマン」と同じパターンだったのが不満だったし、話自体もそんなに見るべきところのない出来でしたが、今回は熱くなるシーンもあって、シリーズ物では珍しく、前作以上の仕上がりと思いました。

この作品、すでにパート3の製作が決まっているし、その伏線をラストに引いています。次回の悪役はこれで分かるけど、まさかMJがスパイダーウーマンになる、なんて展開にはなるまいな(プライド高そうなキルスティン・ダンストが承知するか?)。

 

 


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スパイダーマン3

 

 

3作目でもちゃんとサム・ライミが監督続投している今回は、ヒーロー扱いされて思い上がったピーター・パーカー君の慢心話といった内容です。
予告編で分るとおり、今回は父の復讐に燃える2代目ゴブリン・ハリー、そしてピーターの叔父を殺した真犯人がなぜか変身してしまうサンドマン、そしてピーターに取り付く謎の生命体と、敵キャラが多いのですが、お話は分散することなくそれなりにまとまっていて楽しめました。
クライマックスはヒーロー好きなら予想がつくかもしれない展開ですが、「おおっ!」と興奮する箇所がありました。とはいえ全体的に、前作ほどの感動はありません。

今回も主人公のガールフレンド・MJは敵に狙われます。この人、毎度のようにスパイダーマンの争いに巻き込まれてるけど、スパイダーマンと別れればこんなメに合わないのにねえ。
そのMJの恋敵みたいな立場になるのがグウェンですが、彼女を演じているのは「ヴィレッジ」や「レディ・イン・ザ・ウォーター」などに出ているブライス・ダラス・ハワードです。しかしそういった作品と全然違うイメージで、クレジットを見るまで彼女と気がつきませんでした。

慢心したピーターが話の中盤で取るイケメン的?行動は、ヲタクがイケメンのヤなイメージを描いた感じで、バカじゃねーの?て匂いがぷんぷんしました。まるで、ヲタクであろうサム・ライミのイケメンへの恨みが噴出してるようでした。

 

 


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