39
刑法第三十九条

 

話の前半は退屈な箇所もありましたが、途中で犯行に対してのどんでん返しが分かってから面白くなります。どこがいいのかさっぱり分からない「失楽園」なんぞよりは何億倍も良い出来だと思います。
少年法で加害者が保護される理不尽さや、心身衰弱者が罪に問われないことの怒りなどがちゃんと出ていて、後半のどんでん返しの展開も、そういったテーマに沿った理由で納得がいきました。
新聞や週刊誌ではよく少年法に対する疑問の記事が載りますが、映画で取り上げたのはこの「39」が始めてではないかと思います。心身衰弱者が罪に問われないことの理不尽さを取り上げたのは、円谷プロの「怪奇大作戦」で放送禁止になったエピソード「狂気人間」以来ではないでしょうか?
画面は、色が褪せたような色調処理とか、不安そうなキャラの顔の大アップが多用されたり、見ていて不快な感じを受けました。テーマの暗さを一段と深める効果は出てると思いますが、話が前半途中まではあまり劇的に展開しないため、この効果がかえって退屈さをあおったように思います。
冒頭の殺人現場検証のシーンは、刑事達の声がぶつ切りで聞こえることで、徐々にどういう事件か観客に分かってきますが、この手法は斬新です。
後半で子供の死体をモロに映したシーンが出てきますが、ダミーだと分かって(まさか本物の死体を使うわけがないもんね)いてもショックでした。そんなに長く死体の顔を映してはいませんでしたが、特に目が印象的でした。いかにも生気を失った目、という感じがよく出ていたと思います。目のライティングが上手かったのかも(撮ってて嫌だったろうなあ)。「始皇帝暗殺」でもそうですが、アジア映画は子供にも容赦はしませんね。
対人恐怖症のようにうつむいてしゃべる杉浦直樹や、いつも薄ら笑いを浮かべて、人を小馬鹿にしているような岸部一徳など、キャラのくせの設定は面白いです。
鈴木京香演じるキャラの「香深(かふか)」という名前は意味深でした。香深は堅物の設定なので、劇中で胸の谷間が見えてしまうシーンは、こんなシーンが出てくるとは思わなかったのでちょいとドキリとしました。
大部分の映画では、終わりには主人公は明るくなったりして、性格が変わるものですが、この作品の香深にはそういうことも無く、最後までおどおどした性格のままなのが、暗いタッチのこの映画らしいです。
香深が犯人の過去を調査しに秋田や博多へ行きますが、この時の出張費は誰が出すのか?と思ってしまいました。税金から出るんだろーか?
原作が永井泰宇氏というのは意外でした。この人の小説は10年以上前に「真・デビルマン」や、他の永井豪作品のノベライズしか読んだことなかったので、僕にとってはノベライズ作家というイメージが強く、こういう一般小説を書いていたとは初耳でした。
そういえば今、メディアワークスから「デビルマン:THE NOVEL」なる小説が永井泰宇氏著で出ていますけど、「真・デビルマン」の新装版かなあ?

 

 


 

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