富江

 

まだ見ていない人

歌舞伎町にある新宿ジョイシネマ3でのみのレイトショー公開です。レイトショーならあまり客はいないだろうと思っていたら、上映20分前には既に列ができていて、その中には女性も目立っていました。
これって、それだけホラーが一般に浸透してきたといえる現象なのでしょうか? それとも原作の伊藤潤二が女性に人気がある、ということなのでしょうか?菅野美穂が出ているからでしょうか?
「富江」はジャンルに分ければホラーですが、「リング」のような心臓をドキリとさせる作品ではなく、冨江という凄まじい女のキャラクターで観客を引き付けていく作品です。
冨江を演じるのは菅野美穂です。冨江はわがままで気まぐれで、男に媚びを売ることがうまい、まるで女の嫌な性格を抽出して人の形にしたような奴なのですが、菅野美穂がやると嫌みに感じられません。か弱げな女と、キレるとドスを効かせるコワイ女の両極を持つキャラクターを上手く出してます。菅野美穂が冨江を演じたからこそ、この映画が成り立っているといっても過言ではなく、彼女以外に冨江を演じられる女優がいるとは思えません。
菅野美穂は上手いのですが、「エコエコアザラク(1)」でも危ないキャラを演じてた(ミサ役の吉野キミカを食ってたもんなあ)し、「催眠」でもたぶん二重人格のキャラを演じるだろうし、このままだとキワモノ女優になりかねない感じがします。
ポスターでもスタッフロールでも、クレジットで一番始めに出るの菅野美穂ではなく、主人公(?)月子を演じる中村麻美なのですが、彼女の存在は冨江という女を語らせる役割にすぎないようで、菅野美穂に比べると印象が薄いです。冨江のキャラが強烈すぎる、ということなんでしょうけど。
洞口依子と田口トモロヲの二人の存在も、冨江のバックグラウンドを語らせる狂言回しという感じです。
田口トモロヲは冨江を追う刑事役ですが、殺人現場にデイバッグを背負ってきたりして、軽るめで変な感じを出しています。
あと、悲惨な最期を迎える月子の友人役で、チュンソフトの実写サウンドノベル「街」に水曜日役で出ていた留美が出演しています。

 

すでに見た人

バスケットに入っていたであろう、生きている富江の首がどうなっているのか見たい気がしました。ここでは富江の顔は見せない方がいいので、この描写でいいと思うのですが、出したらそれはそれで不気味なシーンだったでしょう。たぶん首から小さな胴体が生えていたのではないかと思います。
後半での月子と冨江が病院で初めて対面するシーンでは、カメラが月子の目になり、その月子に向かって富江が話し掛けるので、冨江がカメラ目線で話すことになり、ここは菅野美穂のために用意された、まさにクライマックスという感じでした。このシーンまでは富江の顔がまともに映されないのも、ここに至るまでのタメなのでしょう。菅野富江爆発!て感じで迫力がありました。
田口トモロヲが冨江と直接対決すれば、いつもの(?)狂った感じが出て面白かったかもしれないけど、そうならないのが物足りない気がしました。
ラスト近くに出る湖のシーンの色調が、その前のシーンである夜の色調と余りにも違って(ナイトとデイの違いはあっても差がありすぎ)いたので、回想シーンかと思って気になりました。色調を不気味にしようという意図は分かるのですが、色感の統一は欲しいです。
冨江が切断しても死なないなら、燃やせばいいだろうと思ったので、ラストの富江の「殺し方」には意外性は感じませんでした。
ラストカットで冨江が一瞬顔を出しましたが、この顔の出し方と、エンドロールへの切れ方の素早いタイミングが気に入ってしまいました。ここで合成を使って幽霊ぽく冨江を出すことも有り得たかもしれませんが、下手な合成より効果的でした(安上がりだし)。
月子のボーイフレンドが持っていった冨江の首の行方を語っていないし、田口トモロヲもまだ富江の行方を追おうとしてるみたいだし、まだ続編ができそうな感じがします。

 

 


 

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