2003秋・京都紀行

1：清水寺・光る眼の仏たちと243年ぶりの秘仏と「HERO」

ある日、敷物に使おうと引っ張り出した古新聞をふと見ると、「246年ぶりに清水寺の秘仏が公開」と書かれた記事がありました。
京都、そして清水寺には２０年くらい前に何度か行ったことがありましたが、この仏さんを見たくなって、久しぶりに行って見ました。

清水寺の境内に入るのには300円取られますが、この仏さんが安置してある、「清水の舞台」で有名な本堂の内部は、さらに100円が取られます。にもかかわらず僕と同様に秘仏目当ての人はかなり多いようで、入り口には有名美術展みたいに人の列ができていました。
拝観の順路としてはまず。本堂裏手にある仏象から見ることになります。ここには阿修羅像やカルラ王像など、ちょっと変わった仏さんたちが並んでいます。これらの仏像は江戸時代に作られたそうですが、外見を鎌倉時代風に作っていて、動きにリアルな迫力がある仏さんたちです。
堂内の明かりには電気を使っておらず、ローソクのみでかなり暗いのですが、見えないということはないし、昔はこうだったろうと思えてリアルでした。

ここで特に凄かったことは、仏さんの目が時おり光ることでした。
これは、ローソクの炎が仏像の目にはめ込まれている水晶の玉「玉眼」に反射するために起こる現象です。でもこれによって仏さんの目に光が宿り、まるで生きているように見えました。
昔の人がこれを見たなら、さぞかし畏怖を感じたことでしょう。
僕はずっと、仏像に玉眼が使われた理由は、目がリアルに見えるためだけだと思っていました。今回清水寺に来て始めて、ローソクの火の効果を知ることができました。

この仏さんたちの裏手に、目的の秘仏が安置されていました。

その仏像は、「清水の舞台」で有名な清水寺の本堂の奥にある、「奥の院」というお堂に安置してある千手観音像です。昨年この像が重要文化財に指定されたことで、2003年の１２月まで本堂に移されて一般公開していました。
この仏像が最後にご開帳されたのは1760年だそうで、実に243年ぶりとなる公開だそうです。
千手観音の像というのは、清水寺からちょっと歩いた距離にある、有名な三十三間堂に安置してある像のようにたいがい、立っていて顔は一つという形です。でも清水寺奥の院の千手観音像は、正しくは「三面千手観音菩薩坐像」と言われるように、座っていて、顔が３つ(正確には頭上にも２５面の顔が)ある点が、一般的な千手観音像と大きく違っています。
この千手観音像には３本の紐が結んであって、これは参拝者が触れる長さまで伸ばされています。参拝者がこの紐に触ると観音様と縁ができるそうで、もちろん僕もちゃんと触れてきました。

もし僕が古新聞を引っ張り出してこの秘仏の記事を眼にしなければ、今回清水寺に行くことはなかったはずでした。ただの偶然かもしれないけど、「縁」を感じてしまう出来事です。
この千手観音像は2003年の１２月７日に公開が終了すると、今まで通りに奥の院の厨子に納められます。そして次のご開帳は、何百年も後になるそうな…。

清水寺では、この時、「青龍会」というお祭りをやっていました。

「青龍会」は清水寺の境内、そしてみやげもの屋が並ぶ門前の通りを、兵士や僧侶に導かれた龍が練り歩く（たまに走る）という祭りです。
これは本堂のご本尊の御開帳を記念して３年前に始まった、かなり新しい清水寺のお祭りです。
この祭りに出てくる龍、そして人物の衣装のデザインは、黒澤明の映画「乱」でアカデミー賞を受賞し、最近では「HERO」で鮮やかな衣装を見せてくれた、ワダエミ氏です。
そのせいか兵士など、キャラクターの衣装は「HERO」を思わせるエスニックな感じを漂わせていて、日本とは違う雰囲気がするのですが、かえってこれが境内の朱塗りの三重塔や西門に実にマッチしています。
龍は清水寺にある古い写経を張り合わせて作っている、お寺らしい独特な外観で、デザインはドラゴンと言うより、やはり東洋風の「竜」といった印象です。
祭りのデザイナーにワダエミ氏の起用とは面白い着眼点です。おかげでこの祭りはすでに何百年も続いているような重厚感があります。

2：陰陽師の神社は人気スポット！

“陰陽師”安倍晴明をまつる「晴明神社」には、これまでに２度行ってます。
１度目は１５年くらい前で、この時は僕の持っていた京都の地図に、晴明神社は載っていませんでした。
でも「一条戻り橋」というバス停があることは知っていたので、そこに行けば何とかなると思い、バスを降りた後に堀川通りという大きな通りをあてずっぽうで歩いていたら、発見！
入ってみると、神社には観光客らしい人は誰もおらず、非常に閑散としていました。そんな中で唯一の参拝者だった僕は、神社の提灯や瓦に描かれた五ボウ星に「「帝都物語」（そういう時期だったのさ）と同じじゃー！」と大興奮していました。

２度目に行った時は映画「陰陽師」第1作が公開される年の春でした。この時には一条戻り橋のバス停に、前に来た時には無かった、晴明神社への案内板があるのに驚きましたが、境内に若い人が結構いて、安倍晴明の人気の高まりが実感できました。

そして、晴明神社への３度目のお参りとなる今回は、祭神である安倍晴明が主人公の映画「陰陽師」パート２の公開まで、わずか半月という時期でした。
そのせいか参拝客は前回以上の多さで、門前にはついに、以前には（たぶん）無かったみやげもの屋ができてました。今やこの神社、すっかりメジャーな場所になったようです。
メジャーになったからといって境内が広くなるわけではありませんが、その狭い境内の鳥居のすぐ傍らに、晴明が式神を飼っていたという、戻り橋の再現があるのは初めて見ました。その横には晴明が使役していたという式神の像がありましたが、かわいいというか不気味というか…妙な姿です。
その他におみこしや、晴明の一生を絵にしたパネルの展示なども前回に来た時は無く、そういった境内の変化には驚かされましたが、全体の雰囲気が少し乱雑になった感じがして、社寺とはこうして俗化していくのか、とも思わされました。

その２日後、二条城に行くと「陰陽師２」の試写会の準備に出くわしました。どうせ応募だろうから入れないけど、世界遺産の中で「陰陽師」の上映、見たかった･･･。

3：もうすぐしばしのお別れ！平等院の阿弥陀さん

京都の南にある平等院は、今も多くの観光客でにぎわっています。
ここを訪れる人々の目的は、国宝である鳳凰堂と、そこに安置されている大きな阿弥陀さんでしょう。
しかしこの阿弥陀仏像は2004年以降、解体修復が予定されています。なので2004年のいつかは分かりませんが、阿弥陀さんは鳳凰堂から修復専用の建物に移されることになり、何年か後に修復が完了すると再び、元の場所に戻されます。
つまり、おそらくあと少しの期間で、阿弥陀如来坐像が鳳凰堂に安置されている有名な姿が当分、見られないことになるのです。
境内のどこかにＴＶディスプレイを設置して修復中の阿弥陀さんを映す、という計画もあるようですが、それでは「見た」という気にはならないでしょう。
今後平等院の阿弥陀さんを見ようと思っている方、早めに行くことをおすすめします。

4：激ウマ！つけもの丼

京都に一人で行くときに困るのは食事でしょう。
でもメニューを問わないなら、そう悩むこともありません。京都にも、すき屋やココ一番屋やマクドナルドなど、東京と変わらないチェーン店はいっぱいあります。
しかし、京都らしい食事ができて、一人でも入りやすい店というのはあまり聞かないと思います。
そんな貴重な店が、京都駅の地下１階にありました。
伊勢丹の入り口の手前、地下のみやげもの屋群に漬物屋「西利」のコーナーがあります。その奥にこの西利の直営店である、つけもの専用のレストランがあります。
メニューは「つけもの丼」や「京漬物の天ぷらそば」、「漬物アイスと漬物シャーべット」など全てつけものを使う、どこでもあるようなものではない、変わったメニューです。
僕はここで一番安い食事メニューであるつけもの丼、そして漬物アイスと漬物シャーべットを注文しました。
まず例によってお茶が出されましたが、これがちょうどいい温かさで、おいしく感じました。
そして丼の登場。そのふたを開けてみると、細かく刻んだ漬物がご飯の上に、一面に敷き詰められています。それに別ボトルでだしが付いています。
丼の味はだしをかけなくても悪くないのですが、これをかけてみたところ、この薄口のかつおだしが丼に凄く合い、とてもおいしくなりました。
丼にはみそ汁がついているのですが、これが京風の白ミソで、なぜかカラシが浮いています。具がフと湯葉なのも、いかにも京都て感じです。

漬物アイスと漬物シャーべット、は普通？のアイスにしば漬けなど、刻んだ漬物が入っている、というものです。甘味系の漬物とアイスの組み合わせが以外に合っていて、これもうまいです。
この店に入ったのは京都を離れる直前でしたが、最後の日に京都らしい（たぶん東京では食べれない）食べ物に出会えたのは、何だかトクした感じでした。

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髑髏（どくろ）城の七人

衝撃が忘れられません。
「髑髏城の七人」。
映画ではありません。劇団・新感線による演劇です。
僕は映画は大好きなくせに、なぜか演劇にはあまり興味が無く、大手劇団の演劇を見たのはサンフランシスコで「レ・ミゼラブル」を見て以来、１０年以上ぶりです。
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お話は戦国時代の末期、関東を支配し世を再び乱世に戻そうと企む髑髏城の主、第六天魔王に挑む人々の冒険活劇です。
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この物語、今年の１０月にはキャストを全て変えて、市川染五郎主演で再演される予定です。
今回のバージョンの主人公・玉ころがしの捨之介を演じる古田新太は、話の中では「デブ」とか揶揄されていましたが、市川染五郎が捨之介を演じるとまた違ったキャラになるかもしれません。どう変わるのか楽しみです。