ウルトラマンコスモスVS

ウルトラマンジャスティス
THE FINAL BATTLE

 

 

 

ムサシ(杉浦太陽)が救った怪獣たちを宇宙に移住させるためのロケット基地に、巨大ロボットが出現する。ムサシはロケットを守るためにウルトラマンコスモスに変身するが、そこにウルトラマンジャスティスが出現し、コスモスは倒され、ロケットは破壊される。その対策のための国際会議の席に、人間体ジュリ(吹石一恵)の姿で現れたジャスティスは、「35時間後に地球上の全生命体をリセットする」と宣言する。そんな中、ムサシの友人や旧TEAM EYESのメンバーが集まり、行方不明になったムサシを捜そうと、彼が初めてコスモスと会った森に入る…。

映画とTVで続いてきた「ウルトラマンコスモス」は、この作品で最後になるそうです。
ラストにふさわしく、TV版のメインキャラクターであったTEAM EYESのメンバーは全員登場するし、映画版の前作「THE BLUE PLANET」に出ていた異性人たちや麻衣とムサシの母、そして嶋田久作や高樹澪など前作に出てきた参謀たちも登場という、けっこう豪華な顔合わせが見られます。
人間たちだけでなく、TV版でムサシが救った怪獣たちも何対か出てきて、特に彼らが活躍する中盤は泣きそうになりました。

今回の敵となる「宇宙正義」は、人間たちが将来宇宙を破壊すると予想し、その危険を回避すべく人類をリセットしようとしますが、脅威になる前に滅ぼしてしまえ、という主張はイラク戦争におけるアメリカ軍の言い分を思わせます。フブキが言う「滅ぼすなど、簡単なやり方に逃げてる」とジャスティスを批判するセリフなんて、ブッシュに聞かせてやりたいです。
映画のテーマはそういった、「人間の可能性を信じる」ということでしょう。でも映画の話は最後に(予告でも言われてる通り)新しいウルトラマンが登場して、めでたしめでたしになります。新しいウルトラマンが危機を解決という形は、ウルトラシリーズではよくあるパターンで安直だし、おかげでテーマもうやむやになってしまいました。
新しいウルトラマンの登場は、子供には魅力かもしれませんが、それで事件解決といったイージーな話を子供に見せる価値があるのか?と疑問にもなります。戦いを回避しようとした、TV版の最終回の方がまだがんばっていました。

ウルトラマンジャスティス自身は「宇宙正義」ではなく、彼(彼女?)は「宇宙正義」を名乗るデラシアンとかいう種族?に協力する立場で行動しています。このデラシアンが映画ではメカ以外は姿を見せません。こいつが本当に「正義」なのか、何をもって「正義」を名乗るのかが気になりました(劇中の参謀たちも、もっと突っ込めよ…)。実は彼らの真の目的は地球侵略で、ジャスティスがだまされていた、て形もありだったと思います。
その「宇宙正義」が送り込む敵はロボットです。パンフでは「グローカー」と呼ばれていますが、本編では名前は呼ばれません。こいつは3つの形態に変形進化していきますが、モノアイのような、表情を見せない面構えがかえって不気味で、デザインもなかなかかっこよく、関節などが動く音もメカらしく聞こえます。

ウルトラマンジャスティスは前作「THE BLUE PLANET」で登場しましたが、今回はこの時に出なかった人間体を見せてくれます。それが女性というのが意外だし、演じるのが吹石一恵というのもまた意外なキャスティングです。
映画では、暴走族や「コスモスが死んだ!」と盛り上がる若者など人間のイヤなところを出して、「やっぱり人間は滅ぶべきだ」とジャスティスに思わせる描写はパターンですが、こういう世紀末的な描写は今までのウルトラマンでは見られなかったので面白く思えました。その後のジャスティスの心の揺れのきっかけの描写に、子供と動物が使われるのもまた、いかにもなパターンです。

ウルトラマン同士の戦いは、過去には「ウルトラマンガイア」でのガイアとアグルのいさかいや、ウルトラマンティガの映画版「The Final Odyssey」での昔のウルトラマン同士の戦いシーンなんかがあって、そう珍しい描写ではなくなりましたが、「仮面ライダー龍騎」でのライダー同士の戦いに触発されたアイデアのようにも思いました。

今回はフブキがTEAM EYESのリーダーになっているのはうれしい出世ですが、コスモスとジャスティスの戦いや、暴走族のシーンなど、ホケっと見ているだけで、アイズ何やってる?て突っ込みたくなるシーンが多いのは気になりました。製作者たちはそう思わないのかなあ(EYESてそんなに存在感が薄いのか…?)。

 

今回同時上映の短編は「新世紀2003ウルトラマン伝説/THE KING'S JUBILEE」なるタイトルで、ウルトラマンキングの30万歳の誕生日を祝うウルトラマンと、怪獣たちがダンスバトルを見せる作品です。
しかしこの映画、内容のほとんどは、ウルトラマンと怪獣たちが着ぐるみでダンスをするだけで、ダンスの舞台をそのまま撮っただけのような安直な作りで、全く面白味がありません。怪獣がダンスやるなら、せめてCGでも使って腕を伸ばすとか、動きに特徴を見せるべきでしょう。長編であれば眠っているところです。
またお話は、怪獣チームとウルトラチームに対決の形で交互にダンスしていく形ですが、その勝敗が決まる直前、ウルトラの父と母が勝敗の決着を止めさせてしまいます。これって前に新聞で見た、ある学校の運動会で、順位をつけるのはよくないからという理由で勝敗を決めない、という世の中の真理を無視した偽善的な話を思い出しました。
これは、前年の短編「新世紀ウルトラマン伝説」が好評だったから作ったのかもしれません。確かに「新世紀−」にもウルトラマンたちがダンスをするシーンがありましたが、あの作品で楽しめたのはダンスシーンよりも、フッくん親子と過去のウルトラとの絡みのシーンでした。
ほとんど舞台中継かと思えるこの映画、制作費が安上がりだということで安易に製作してしまったように思います。

 

 


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