劇場版
ウルトラマンコスモス
THE FIRST CONTACT

 

 

一昨年の「ウルトラマンガイア」以来の空白を破る、新作ウルトラマンの登場です(昨年の「ウルトラマンティガ:THE FINAL ODYSSEY」は新マンではないでしょう)。
この「ウルトラマンコスモス」は、TV版の放映がすでに始まっていますが、劇場版では主人公ムサシの少年時代の、ウルトラマンコスモスとの初めての出会いを描く、TVの前日談といった話です。

今回のウルトラマンの特徴は、怪獣を倒すのではなく、保護する(静める)という優しい方向になっている点だそうです。そのせいか設定の方も、怪獣と対峙する人間側のチームは公的なものではなく、SRCというボランティアの団体で、武力らしいものは持たず、戦闘はSHARKSという防衛隊がすることになっています。
SRCの隊員が他にも職業を持っていたり、マスコットのロボットが出てきたり、怪獣を「静める」シーンでコメデイタッチの描写が見られるなど、 この「ウルトラマンコスモス」は、「ウルトラマンティガ」や「ガイア」みたいにハードではなく、むしろ「ウルトラマンタロウ」や「ゼアス」に近い「ユルさ」が目立つ作品です。
そのせいか、SRCやSHARKSの組織系統の説明は映画の中で触れられていませんが、「タロウ」が放映されていた時代ならこういうあいまいさは許せたかもしれないものの、今のような「怪獣科学序説」みたいな突っ込み本が出る時代になると、気になってしまうところです。
また、ウルトラマンコスモスが頭上を飛んでいるのに誰も気付かなかったり(防衛隊のレーダーに映ってないんかい!)、SHARKSの作戦がたった1人の人間のおかげで台無しになる描写があるなど、突っ込みを入れられる部分も所々あって、僕みたいに「ウルトラマンティガ」等の平成ウルトラシリーズのハードさを期待した人には好きになれない作品かもしれません。

しかし、ハードな話が好きな人が見ると「オイオイ」と思うかもしれない、怪獣を「静める」おちゃらけたシーンは子供たちには受けていました。
でも、その他の「静める」シーンでは、こんなことで怪獣が静まるのか?と突っ込みたくなるような、甘いとしか思えない描写も出てきて、怪獣保護のテーマは分かるものの、興醒めしたシーンがありました。
またそういったテーマを言いながら、映画では敵であるバルタン星人と地球人との関係をあいまいに描いてしまっていて、都合よくお茶を濁した感じです。

とはいえ、クライマックスでのウルトラマンコスモスの登場シーンはそれなりに盛り上げてくれて、ムサシはかっこよく見えました。バルタン星人との戦闘シーンなど、怪獣と戦うような、従来通りの展開に沿ったシーンは盛り上がります。
もしかしたら、「怪獣保護」の描写フォーマットがまだ確立できてないおかげで、製作側も試行錯誤しているのかもしれません。

平成ウルトラシリーズの映画版は年ごとにCGシーンが増えていく感じですが、今回も前回の「THE FINAL ODYSSEY」以上にCGを多用しているようです。
ただ、ウルトラマンコスモスとバルタン星人の空中戦や、コスモスが地上すれすれに回転するアクションなど、実写では難しい描写にCGを使うのはいいのですが、コスモスの関節がモロにCGと分かってしまうシーンも見られます。こういうシーンはワイヤーアクションを使えばCGでなくても、着ぐるみで見せられると思うのですが・・・予算の関係なのでしょう。
怪獣の描写では、鎮めるシーンは穏やかだったりコミカルだったり、スピード感や盛り上がりには欠けるものがありますが、クライマックスであるウルトラマンコスモスとバルタン星人との戦闘は、デジタルを駆使して武器や特殊能力を盛り沢山に見せ、スピード感に溢れて迫力がありました。それまで、あまり戦闘を描かなかった穏やかさを一気に爆発させた感じです。

バルタン星人はウルトラシリーズではポピュラーな宇宙人ですが、こいつが主役になる話は意外にもそんなに多くはなく、特に「ウルトラマンティガ」等の平成ウルトラシリーズでは全く出てきません(それはそれで、世界観の違いが出ていいとは思います)でしたから、たぶん「ウルトラマンパワード」以来久々のメインキャラでしょう。ましてやバルタンが本格的に活躍するオリジナルストーリーというのは初めてだと思います。
そのバルタンのデザインも「パワード」でのフォルムをより昆虫的に、あるいは戦闘的にした感じでかっこいいです。今回のバルタン星人はノーマル体型から戦闘体型に「変型」しますが、これは近年始まったステージ版の影響のようにも思います。
それに対して、もう1体他に登場する怪獣・呑龍(ドンロン)は日本に古来から住みついてるという設定のせいか、顔とかのデザインは獅子ぽい東洋的ですが、体型がずんぐりむっくりでかっこよくありません。これじゃあガシャポンになっても欲しくないぞ。

今回のシナリオと監督は、初代「ウルトラマン」でのバルタン星人の回の脚本と監督を担当した飯島敏宏氏です。話には特に古さを感じませんでしたが、前回の「THE FINAL ODYSSEY」までは小中千秋氏など、下の世代の人がメインスタッフだったのに、21世紀になってまた古い人を使うというのは。先祖帰りしたようで釈然としません。ウルトラシリーズをこれからも続かせるには、新しい人を使って後継を養成することが不可欠でしょうに。
音楽は冬木透氏で、この人もやはり「ウルトラセブン」から「レオ」まで担当していた古株のスタッフなのですが、さすがに雰囲気に合っていました。

主人公ムサシの父親を演じるのは赤井英和ですが、やはりこの人は筋の通ったオヤジの役は合っている感じです。
赤井の上司役など、初代「ウルトラマン」や「Q」に出ていた人たちが、これまでの映画版同様にゲストでチラチラと顔を見せているのはウルトラのファンには嬉しい点でしょう。
また、この作品のナレーションは「ウルトラQ」のナレーターだった石坂浩二氏が担当しています。僕のような「Q」でウルトラにハマった人には嬉しいキャスティングですが、つい最近「Q」のDVDが出たばかりなので、新しく「Q」に触れた人にも興味深い点ではないでしょうか。

「怪獣保護」という考え方は「ウルトラマンガイア」に出てきた「怪獣も地球の一員」という設定から出てきたものだと思います。怪獣を人間の敵ではなく、共存の対象として捉える見方は新鮮でした。ただし、基本的に怪獣退治だった「ウルトラマン」を毎回この形に持っていけるのか、この「ウルトラマンコスモス」は新しいウルトラマンの試金石になるかもしれません。

 

 


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