劇場版
ウルトラマンコスモス2
THE BLUE PLANET

 

 

ムサシ(13才)少年編

 

宇宙飛行士となった春野ムサシ(杉浦太陽)は、怪獣を保護している遊星ジュランに向かうが、そこは死の星と化し、怪獣たちも息絶えていた。ムサシは突如出現した怪獣スコーピスに襲撃されるが、何とか命を救われる。地球に帰還した彼は、幼ななじみのツトムの結婚式に出席するためにサイパンを訪れ、不思議な少女シャウ(斉藤麻衣)に出会う。そこにスコーピスが飛来し、ムサシの目の前でシャウは怪獣レイジャと一体化してスコーピスに立ち向かう…。

「ウルトラマンコスモス」主演の杉浦太陽が傷害と恐喝容疑で逮捕され、彼のいないバージョンで公開という可能性が言われていましたが、容疑が晴れた?ことで無事オリジナル版での公開となった、映画版パート2です。
今回の時代設定はTV版より後の時期になっていますが、映画版第1作「The First Contact」での子供時代のムサシの友人たちが成長した姿で登場し、この時に隊員で出ていた風見しんご、そして赤井秀和も出てくるせいか、この映画はTV版よりも映画版の続きという雰囲気がします。
ウルトラマンコスモスのテーマといえば「怪獣保護」ですが、「The First Contact」とTV版でこのネタを結構やったせいか?今回の作品にはそれはあまり感じられません。なので前作のようなクサさはあまり感じなかった代わりに、「コスモス」の独自性が薄れて、フツーの対ウルトラマン怪獣話になってしまっています。ま、話は退屈はしないし、子供たちは楽しんでいたようですから、それでもいいのですが。

最後に登場する親玉怪獣サンドロスは口が4つに開く、普通の怪獣と違う異質なデザインで、「ティガ」の最後に出てきた怪獣ガタノゾーアを連想しました。しかしガタノゾーアでも「ガイア」の最後の怪獣でもそうでしたが、どれも最後は世界を闇にしようとするばかりで、やることが変わり映えしません。
またこのサンドロスとの戦いで、ウルトラマンコスモスが危機になった時の「ヘルプ」はあざとい感じがしました。コスモス一人でがんばることが感動を生むと思うんだけどなあ…これじゃ甘えに見えるぞ。
異星人ジーンとシャウは怪獣レイジャに乗り移り、一体化しますが、これはウルトラマンの変身に似ています。これをうまく生かせば、以前はコスモスに変身して怪獣と戦えたはずのムサシが、今は変身できない、というジレンマを出してドラマに深みが出せたかもしれません。この一体化の設定が単に怪獣と戦うためだけにされているのは、もったいない使い方です。

とはいえ、やはりチームEYESの登場シーンと、ウルトラマンコスモスの変身シーンでは泣けました。宣伝のクレジットにはチームEYESのメンバー達の名前は出ているのに本編ではなかなか出てこないので、こういう演出で来るとは予想がついたし、コスモスの変身シーンも、杉浦クン事件の絡みでワイドショーでよく流れていたので、こうなると分かっていたのですけど。

今回のキャストの特徴は、平成ウルトラシリーズの重要なキャストが違う役で登場していることでしょう。中心となって活躍するチームSEAのメンバーは「ウルトラマンダイナ」の斉藤りさを始め、全員が隊員役などで過去の「ウルトラ」に出ていたメンバーです。
また、防衛隊の高官たちの役には「ウルトラマンダイナ」の隊長・木之元亮(「「ダイナ」の隊長」と観客の子供に言われてた)、「ウルトラマンティガ」の隊長・高樹澪、「ウルトラマンネオス」の隊長・嶋田久作、そして「ティガ」の副隊長・大滝明利と、知ってる人が見ると豪華なキャストです。「ウルトラマンガイア&ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ:超時空の大決戦」で、世界観の違う平成3大ウルトラマンが揃ったのを、今度は人間の方でやった感じです。
その代わりというべきか、今回の映画には前の映画では時々あった、桜井浩子など旧ウルトラ作品の出演者の特別出演はありません。しいて言えば「ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ:光の星の戦士たち」での科学者役の、杉本彩が顔を見せているのがそれに相当してるように見えます。

今回は前半の舞台がサイパンという、ウルトラシリーズでは珍しい海外ロケをしています(だから?映画館ではサイパンのCMが…)。でもホテルが出てきたりして、2時間ドラマでよくあるような、タイアップの臭いを感じました。特に最後は…なんでコスモスがそこまでするかなあ…。

このバージョンを見ると、杉浦クン逮捕を受けて急遽作られたという、ムサシ無しのバージョンの話の想像がつきません。コスモスが出てくるところはいいとしても、それ以外の人間の話ではほとんどムサシが絡んでるし。
と思っていたら、そのムサシ無しのバージョンも公開されることになりました。13歳のムサシが見る夢という形になるそうですが…やはり想像つかない。

今回は「ウルトラマンコスモス2」の前に、短編作品「新世紀ウルトラマン伝説」が上映されます。これは第1作目の「ウルトラマン」から、最新作の「コスモス」まで、歴代ウルトラシリーズの映像を流していく作品です。中には「ウルトラマンゼアス」や「ウルトラマングレート」など、ビデオや映画のみに出てきたウルトラ戦士はもちろん、「ザ・ウルトラマン」や「ウルトラマンUSA」といったアニメ、さらに大方がCMのみの展開だった「ウルトラマンナイス」まで出てきて、全てのウルトラマンを網羅しているといえます。
この中には懐かしめの「ウルトラマン」や「ウルトラマンセブン」なども出てくることで、子供だけでなく、今のウルトラには疎いかもしれないパパ世代も一緒に楽しめる形になっていて、子供に「ウルトラマンは〜だった」なんて自慢もできそうです。案内役として「ウルトラマンダイナ」で隊員役で出ていた布川敏和が子役と出演しているように。
この映画はフッくんと子供が歴代のウルトラマンの戦いを見るという形で進んで、彼らは過去のウルトラのフィルムと新たに合成されています。例えばガッツ星人に捕らえられたウルトラセブンが、本来のシーンではウルトラ警備隊のビームを当てられて助かるシーンで、映画ではそのビームがフッくん親子の手鏡の反射光になっている、といった感じに、背景のウルトラマンとフッくん親子のアクションを上手く合わせています。
しかし今「マン」や「セブン」など初期のウルトラシリーズを見ると、さすがにフィルムの質感が今とは違うし、オプチカルのイフェクトの立体感の無さが大スクリーンのおかげ余計に目立って、ダささを感じて(作られた当時は最先端だったけど)しまいました。

歴代ウルトラシリーズが流れる間、途中途中にウルトラマンたちによる《ウルトラマンエクササイズ》なるエアロビみたいなダンスシーンが挿入されます。ご愛嬌といったシーンですが、シリーズが進むしたがってウルトラマンたちの数が増え、アニメ版も含む全28体ウルトラマン勢ぞろいのダンスはなかなか凄いものがあります。

歴代ウルトラシリーズのシーン、そしてダンスのシーンと、交互に違うシーンが展開しますが、流れる音楽は切れ目なく続き、気持ちのいいテンポを作り出しています。そして各ウルトラマンの登場シーンでは、その時の音楽がそのウルトラマンのテーマ曲をアレンジしたものに変わって、ちょっと感動させられます。
また、随所に各番組のオープニングタイトルやウルトラマンの登場シーンが挿入され、この短編映画は全体的に「ウルトラマン」の長い歴史を感じさせる構成になっています。

 

 

ムサシ(13才)少年編

 

「ウルトラマンコスモス」主演の杉浦太陽が傷害容疑で警察に拘留されたことで、TV版の「ウルトラマンコスモス」は放映が中止になりました。
かつて円谷プロは、「ウルトラセブン」第12話を被爆者団体からクレームが来たことで再放送から放映中止にし、それから何十年も経っているのに今だに封印していますが、そういった、公的に何かまずいことが起きるとそれに関連する作品の公開をストップするという、世間体をものすごく気にしているらしい体質は今だに変わっていないようです。
とはいえ「ウルトラマンコスモス」は、視聴者からのクレームが殺到したためか、再編集で杉浦クンを登場させないバージョンを作り、数週間後に放映しました。
映画版「ウルトラマンコスモス2」も主演は杉浦クンなので、当初はおクラ入りの可能性が心配されていましたが、このまま映画が日の目を見ないのは円谷プロも惜しいと考えたのか、杉浦クンが登場しないバージョンを再編集と追加撮影で急遽作ったものが、「ムサシ(13才)少年編」と呼ばれるバージョンです。
結局杉浦クンが釈放されたことで、「コスモス」はTVも映画も、当初の予定通りに彼が入ったバージョンで公開になりました。
おかげで皮肉なことに、「ムサシ(13才)少年編」の話は立ち消えになりました。なのでこのバージョンはおクラか、良くてDVDの付録という形になるのかと思っていましたが、やはりこれも出さないのは惜しいと円谷プロは思ったのか、モーニングショーやレイトショーといった形で細々ながらも、劇場公開されました。

「ムサシ(13才)少年編」は急いで作ったということで、あまり期待しないで見たのですが、驚いたのはキャストでした。
ムサシ役には、前作でムサシを演じた東海孝之助が再度この役を演じます。さらに、杉浦クン登場版(正編)には出ていなかったムサシの母親が冒頭に出演し、ちゃんと前作と同じ高橋ひとみが演じています。また正式版でも重要な役割を演じる、ムサシの幼なじみ・マリも中学生の姿で顔を見せ、やはり前作と同じ宇野あゆみが再び出演しています。シャウを演じる斉藤麻衣も登場し、製作時間があまり無かったわりには正式版とはまた違う、豪華なキャストを揃えたものだと感心しました。

このバージョンの話は、中学生になったムサシがロケットの事故のために宇宙開発が中止になるらしいと聞き、将来を悲観して、かつて前作でウルトラマンコスモスと始めて会った場所に行き、そこでシャウに彼の将来の姿を見せられ、再び元気を取り戻す、という形になっています。
いわば杉浦クン出演版で描かれた出来事を少年ムサシが夢の中で見る、という形ですが、さすがに杉浦クンの姿を完全に切ることはできず、後ろ姿やロングなどでは元のままで出てくるし、わずかに彼のセリフも聞こえました。しかし、「なぜ命を奪うんだ」といったムサシの肝心のセリフは、見ている少年ムサシが激昂して叫ぶ、という感じで語られます。
こういう構成で作るのは別にいいと思うのですが、ツトムの結婚式やシャウの1人でのビールかけなど、ここまで少年ムサシに見せなくてもいいだろうと思えるシーンもあります。たぶん、正式版がおクラになってしまっても、なるべく全部映画の内容を見せようという製作側の意図ゆえに入れられたものと想像します。

普通のSFであれば、過去の人間に未来の光景を見せたら、忘れさせるとか言わせないとかいうような処置を取ると思いますが、この映画ではそんなシーンは出てきません。なのでムサシにツトムの結婚など、未来のことを知ったままでおいていいのか気になりました。特にチームEYESに関しては、シャウは「入る」とは言わなかったけど、ムサシは自分に重要なものとは分かってしまっているはずです。いいのかなあ?

 

 


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