ULTRAMAN

 

 

航空自衛隊・百里基地所属のF15パイロット、真樹(別所哲也)は命に関わる病気になってしまった息子と過ごす時間を増やそうと、引退を数日後に控えていた。そんな時にスクランブルがかかり、真樹は同僚の蔵沢(永澤俊矢)と出撃するが途中、蔵沢機はマシントラブルで帰還。直後に真樹は赤い光と衝突し、意識を失う。だが機体の大破にもかかわらず、彼はかすり傷一つない健康体で帰還する。そして除隊後、航空会社のセスナ乗りとなり妻(裕木奈江)と子と水入らずの時間を過ごしていた真樹は、ある日突然沙良(遠山景織子)が指揮する部隊に拘束、監禁される。そこで彼は自分以外にも光と遭遇した者(大澄賢也)の存在を知らされるが、それは危険極まりない怪物と化して、真樹の元へと近づいていた…。

これまで作られた映画版「ウルトラマン」は、「ウルトラマンティガ」や「ウルトラマンコスモス」のようなTVシリーズからのスピンオフでしたが、今回はどのTVシリーズともつながりのない、現代の世界を舞台にした完全なオリジナルストーリーです。
お話のベースはTV版「ウルトラマン」第1話である、青い光・ベムラーを追って地球に来た赤い光・ウルトラマンが、地球人ハヤタの乗るジェットビートルに衝突した結果、ハヤタの命を救うために同化したエピソードでしょう。
映画はその物語をリアルにリメイクした形で、前半はちょっとだけ見ると「ウルトラマン」とは分からないかもしれません。なんせ、ウルトラシリーズではおなじみの、防衛組織なんて出ないし、もちろん超兵器メカも出てきません。実際、僕が初めてこの作品の予告編を見たときは、途中まで「ウルトラマン」だとは気づきませんでした。

この映画は「ウルトラマン」ではありますが、普通の人が人間ではない力を手にしてしまったらどう行動するか、といった「スパイダーマン」などを意識したようなリアルタイプのヒーロー話といえ、「ウルトラ」シリーズの中ではかなり異色な話と言えるかもしれません。
キャラクター自身の描写は今一つ面白味に欠けますが、それなりに丁寧に描いています。先読みできる物語だけど、子供のリアクションや助っ人などの定番の展開をちゃんと、待ってました!という感じでやってくれます。おかげでまあ…泣けること泣けること!
これまでのウルトラシリーズの映画で「ウルトラマンダイナ&ウルトラマンティガ」でも泣けましたが、今回はそれ以上に涙腺がウルウルになりました。
今回の「ウルトラマン」は、ウルトラシリーズで育った世代がヒーローに出した一つの回答、いわば円谷英二が投げた球の返球という感じがしました。最近のTV版「ウルトラQ」には閉口しましたが、これなら満足です。劇場版「ウルトラマン」シリーズの中で最高傑作!と言ってしまいましょう。

ただ残念なのは、劇場の観客が圧倒的に子供が目立った点でした。ウルトラシリーズとすれば当たり前かもしれませんが、今回のお話は大人の方が楽しめるでしょう。映画の宣伝はろくにされなかったようですが、もっと、高年齢層向けの宣伝をして欲しかったところです。

今回は「超時空要塞マクロス」などのアニメで活躍してきた板野一郎氏が、フライングシーケンスディレクターなる肩書きで飛行シーンの演出を担当していて、そのせいかウルトラマンと怪獣の空中戦はスピード感がとてもよく出ています。「デビルマン」も同様にアニメ出身のスタッフが関わっていたはずですが、それの100倍は迫力があります。
パンフのインタビューによれば、この作品の特撮監督は変身シーンを「デビルマン」をリアルにやった感じにしたいと言ってました。また敵モンスター「ザ・ワン」は生物を取り込んで成長していく設定は「デビルマン」のデーモンを思わせるし、最終形態も「悪魔!」と呼ばれるシーンがあります。もしかしたらこの「ULTRAMAN」は「デビルマン」を意識して作った部分があるのかもしれません。
いっそのこと、この作品のスタッフで映画版「デビルマン」を作った方が、先に公開された実写版より、もっといい映画になったのではないかと想像します。

今回のウルトラマンのデザインは生物感を強調しているのが面白いところです。怪獣はやはりベムラーを元にしたような感じがしますが、人間大の時はいかにも着ぐるみに見えて、そこだけB級映画ぽく感じました。

東京国際映画祭の小中監督の挨拶の中に「ウルトラファンをくすぐるネタがあります」という言があるのはホントでした。航空関連に注目。

 

 


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