ウルトラセブン1999
最終章6部作

 

 

第1話:栄光と伝説

第2話:空飛ぶ大鉄塊

第3話:果実が熟す日

第4話:約束の果て

第5話:模造された男

第6話:わたしは地球人

 

第1話
栄光と伝説

引退を間近に控えたフルハシは、最後のミッションとして太陽系第10番惑星の衛星ヴァルキューレの調査に赴く。フルハシが月基地に帰還した直後、基地隊員たち同士で銃を乱射する事件が発生し、ウルトラセブンが駆けつけるが、彼の目の前でフルハシは息を引き取る。この事件をフルハシのクーデターと断定する地球防衛軍上層部に、フルハシを慕うウルトラ警備隊は反発するが、そこへウルトラホーク3号が乗っ取られ、街を攻撃する事件が起き、責任を問われたウルトラ警備隊はカジ大佐の指揮に入ることになる。地球防衛軍のカジ大佐は「フレンドシップ計画」を構想していた。それは生物が生存していると思われる惑星にミサイルを打ち込み、侵略の可能性を事前に摘む、という計画だったが、これに強硬に反対していのがフルハシだった。反対派がいなくなった今、カジは「フレンドシップ計画」実現に動き出す。

今回の話のポイントは、シリーズのキーになるであろう「フレンドシップ計画」の導入と、フルハシの死、そしてセブンがカザモリになるところでしょう。

今回はワープが出てきますが、これには相当の違和感を持ちました。冒頭に「何年か後」と字幕が出ますが、それが前回のシリーズから何年か後という意味だとすれば、時代設定としてはせいぜい21世紀始めのはずで、ワープを出すのは早いと思います。
ただし、もしワープを使わないでフレンドシップ計画を実行するなら、攻撃の結果を確認するのには何年もかかるだろうからワープを話に持ってきたと思うので、話の作りからいえば仕方ないとは思います。なのでここは、ワープは「実験段階」にでもとどめておいた方が、まだ飛躍の度合いは少なかったと思います。
ワープが出てきた違和感は、前回までそれを匂わせる技術さえも出てこなかったのに、今回いきなり、完成された技術として出てきたからでした。話の中で徐々に匂わせてくれればまだ抵抗はなかったのに、いつの間にそんな高等技術が開発されたんでしょうか?宇宙人から技術協力でもあったかな(「Xファイル」!)。
それはともかく、フルハシが、ワープアウトしたらいつのまにか年を取ってるんじゃないか、と思うとこは「スター・トレック」のドクター・マッコイみたいに、ワープを身近に感じる不安がちゃんと出ていてリアルに思いました。

フルハシの死は禁じ手を使った感じがしました。疑問だったのは、フルハシの死体が見付からないことになっていながら、ラストにはいつのまにか立派な墓ができていたことです。セブンが月基地に来た時には、既にヴァルキューレ星人は脱出艇に乗ってたので、こいつが遺体を隠す時間はなかったはずですし、セブンがフルハシの遺体を隠す理由も無いはずです。遺体はどこに消えていたんでしょう?それとも、墓の中にも実はフルハシの遺体は無いとか(いづれ復活か!?)。
フルハシといえば、オリジナルシリーズでの「北へ還れ」が良かったので、一度くらい、おふくろさんがその後どうしてるかを語っほしかったと思います。

フルハシがいなくなると、残ったオリジナルキャラはもはやダンと佐原健二だけでしょうか。フルハシに続いて、今度はカジがTVスペシャル版からの続投になりました。
カジ参謀を演じる影丸茂樹は「ウルトラマンティガ」など、ウルトラシリーズにはよく出ています(円谷専属だったような…)。
カジが一方的な悪役ではなく、「フレンドシップ計画」を進める原因になった心情を回想で見せているのは良いところです。しかしこの回想シーン、今までのシリーズの中ではウルトラ警備隊員の死を描いた話はなかったので、このシーンは抑制された描写なものの、凄まじさを感じました。ここでは影丸茂樹、それに毒蝮三太夫にとっても何年ぶりかの隊員服でしょう。

今回はダンも出てきますが、ラストではセブンはカザモリに変身したことを匂わせます。前のシリーズでほのめかしてはいましたが、ついにセブンがダンからカザモリへ、世代&主役交代になるかもしれません。
ウルトラセブンの場合、ウルトラマンティガみたいに生身の人間に入り込んでる(?)形ではなく、セブン自身がその人間に変身して身分を偽って存在してるわけだから、変身する人間が生きている(2人いる)と不都合なわけで、だからカザモリに「最後」を迎えさせたのだと思いますが、ダンが冷血に見えました。
ラストで元気に戻ってくるカザモリに、隊員たちが「あいつ、心配させやがって」と言います。このセリフは確かに、ダンが戻ってくるパターンと同じです。

ウルトラホークは簡単に乗っ取られますが、地球防衛軍にはワープができるほどのテクノロジーがありながら、ホークには部外者が操縦できないようなセイフティは無いのでしょうか?
ウルトラホーク同士の市街戦は、1号と3号が互いに戦うのは初めてなので面白いです。ただ、飛び方が軽い感じがしたし、地上の建物にも接近しすぎてる感じで、失速しそうに見えました。ビルの部屋の中からの見た目アングルは「ガメラ」の影響みたいですが面白い撮り方です。しかし、ホークを市街地で落とすなって。

冒頭に太陽系の各惑星が出てきますが、外観がぼやけてはっきりせず、まるで地球で撮った天体写真をはりつけたようにちゃちく見えました。惑星を抜けていく演出もなんかダサく、「新スター・トレック」のOPみたいに見せ方を考えてほしいです。

今回は太陽系に第10番目の惑星があり、その衛星に生物がいた、という設定ですが、太陽から遠く離れてる星なのに、地表に木があるのは変です。冥王星だって氷付けの星だと予想されているのだから、この星も氷に覆われているのが正しい描写だと思います。

敵であるヴァルキューレ星人は肉体を持たない設定なので、移動は影で現されますが、動きが不自然なため、一目見て影絵みたいに、板にライトを当てて影を動かしてるだけ、と分かります。ここでCGを使えばもっとリアルにできるのに、チープな感じがします。
ヴァルキューレ星人は肉体を持たないはずなのに、クライマックスでは実体を持って巨大化しますが、これはセブンと戦わせるためだけに、うやむやに巨大化させたように感じます(「うやむやに巨大化」という点はオリジナルシリーズでも多々ありますが)。
巨大化したヴァルキューレ星人のデザインは、単に肉体がぐちゃぐちゃしてるだけに見えて面白味が感じられません。前回のシリーズでもそうですが、オリジナルシリーズ以外で「セブン」に出てくるモンスターのデザインは印象が薄いように思います。モンスターデザインに関してはTVでの平成「ウルトラ」シリーズの方ががんばってると思います。

今回の主題歌は、歌詞はオリジナルシリーズと同じで、ささきいさおの歌でリニューアルしていますが、オリジナルの印象が強いせいか、今一つな感じがします。タイトルバックの影がいかにもビデオな質感だし、フォントもださいのは気になりました。ここはオリジナルと同じ明朝にした方がよかったと思います。

前シリーズでは司令室から出してもらえなかった、ルミ(あだち理絵子)が外に出るようになったのはよかったと思いますが、ヘルメットをかぶるとおばさんぽく見えました。

ラストは皮肉ぽい、「セブン」らしいエンディングです。

 

 

第2話
空飛ぶ大鉄塊

カジ参謀が指揮を取ることによる、ウルトラ警備隊の雰囲気の変化に嫌気がさしたサトミは、休暇を取ってルミと共に故郷の島へ向かう。そこで彼女の父が書いき、子供の頃によく読んだ「大鉄塊」(だいてっかい)という未完のSF小説を手にするが、同じ頃、ウルトラ警備隊は山中で巨大な鉄の塊を発見する。それが父の書いた「大鉄塊」と同じ物体と直感したサトミは警備隊に合流しようとするが、小説の残りの部分を要求する見知らぬ男が彼女の行く手を阻む…。

今回はサトミが主人公の話です。このシリーズは各隊員に焦点を合わせてるみたいですが、ドラマがふくらみそうでいいと思います。
今回の話は一見、前のエピソードで問題提起された「フレンドシップ計画」とは関係無さそうですが、途中でそうでないことが分かります。やはりこのシリーズは「フレンドシップ計画」を核として話が進んでいくようです。今回のシリーズのポイントは、カジ参謀がいかに考えを変えていくのか、という部分かもしれません。

今回は個々の隊員がキャラの性格をちゃんと出した演技をしてるし、カットのつなぎもいいし、音楽の使いどころもよく、ようやく新「セブン」シリーズのエンジンがかかった感じです。この勢いでTVもやってほしいとも思います。

今回はサトミが主役だけに、演じる鵜川薫の演技が話の出来を左右することになりますが、大熱演で感動的な話になりました。朝ビデオシーバーが鳴ってる時に、彼女がまちがえて目覚しを消そうとするとこなど、細かい芝居も上手いです。
鵜川薫はもっと出世してほしいけど、アクションができるだけに、このままだと「ゼロ・ウーマン」あたりに行くキケンはありそうです。でもこの方向で出世した女優はあまりいないから、そっちには行かないことを祈ります。
彼女はメイキングでの説明も決まっていましたから、レポーターとしてやっていくのもいいと思います。
冒頭の方の、防衛軍基地でのサトミの独り言は説明くさい感じがしました。しかし、ラストのサトミの独白は彼女の演技の上手さと、後ろの隊員たちのリアクションを効果的に挿入することで感動的になりました。このシーンは、前回の話で目的を失ったウルトラ警備隊の役目を彼らに再確認させ、次のエピソードから本来の話に戻す意味を持っている感じです。

サトミのおばさんが、サトミの父のいる出版社が「宇宙人に襲われた」という話を「まさかね」と言っていました。しかしこの「ウルトラセブン」の世界では、宇宙人は地球に何度も侵略してきてるから、それが普通に受け止められている世界のはずで、宇宙人に襲われる、という話はもっと現実味を帯びているのではないかと思います。
ただし、そういう設定にしてしまうと、この話が今我々の生きる現実世界とかけ離れてしまう危険はあります。もしウルトラ警備隊が、一般人に分からないように宇宙人と戦っている、というならこのおばさんのセリフも理解できますけど、彼らはポインターで派手に動いてますもんねえ。
サトミがおばさんに、自分の職業をOLと偽ってるのはリアルでした。

今回のシリーズは全6話と話が増えたせいか、ロケット発射など、月基地や防衛軍基地内のメカシーンが多くなったことは嬉しいことです。動きが軽い感じがする時もありますが、大きさの感じはそれなりに出ていると思います。
ウルトラホークの発進は1号、3号とも地上からになっています。オリジナル通りだと、1号はいいとしても、3号なんて出たとたんに滝に打たれて落っこちるかもしれないから、この方が無難でしょう。

大鉄塊のエネルギー吸収パターンなど、今回は光線系のデジタルイフェクトは気合いが入っていました。細かいカットで火花を付け足す効果なんかも上手いです。
冒頭の、星の破壊シーンはデジタルで処理したと思っていましたが、メイキングで見ると、ちゃんと氷を爆破した映像を使っていて、リアルさを出しているのはいい点です。

「大鉄塊」という「SF小説」ではなく、「空想科学小説」を話のネタにしたのはレトロな感じで面白いのですが、本編中の時代設定には無理を感じました。ドラマの中では「大鉄塊」の出版は20年前と言っていましたが、この小説の感じはどう見ても大正か昭和初期です。
今回のシリーズの時代設定は不明ですが、おそらく20世紀末(今てことか?)か21世紀初めでしょう。それより20年前てことは、「大鉄塊」が出版されたのは1980年代くらいになるのでしょうが、この時代に「大鉄塊」みたいな小説は時代錯誤です。オリジナルシリーズの時点で20年前、というなら話は分かりますけど。
分かりきったことですが、この部分は目をつむって楽しむべきなのでしょう。

この話ではセブン=カザモリとはっきり描写されるのですが、セブン自身のキャラが出る時(セブンが宇宙人と話す時とか)はなぜか、ほとんどダンになってしまうし、変身する時もダンで変身します。
エンディングで流れるシーンにはカザモリがウルトラアイを着けるシーンがあるので、いずれカザモリで変身するのでしょうけど、今回はまだ早いということでしょうか。
ダンと辺見が対話するシーンは影を付けて、異次元的な雰囲気を出そうとしているのは分かりますが、「ウルトラマンティガ」みたいにフィルムでやった方がもっと雰囲気が出たと思います。何でこのシリーズ、ビデオで撮るかなあ。

大鉄塊は筒の形から変形しますが、その形からどうやってロボットになるのか納得できませんでした。ただ、これのデザインは、「ウルトラセブン」の新シリーズでやっと面白い感じのものが出てきたと思います。話のコンセプトに特徴があったからでしょうか。
大鉄塊に対して、それを操るガロ星人は単なるのクモのミニチュアみたいで、ライブのシーンでは人の頭に着いているだけで全く動かず、ださい感じでした。メイキングでスタッフが遊んでたように、髪飾りにしか使い道ないです。

今回はウルトラセブンと敵・大鉄塊との格闘シーンは長いと感じませんでした。格闘オンリーではなく、サトミや辺見のシーンなどのドラマを絡めたため、格闘が浮いた感じにならなかったのだと思います。ここで流れたインストのBGMもドラマの盛り上げに効いていました(初めて新しいBGMがいいと思った)。
このシーンではサトミは大熱演で涙を誘われましたが、気になったのはセブンのいる特撮ステージは曇り空なのに、サトミが叫ぶライブは青空で、同じシーンなのに空の色が違ってしまった点でした。先に撮ったのはサトミオンリーのライブシーンだったでしょうから、特撮ステージで空の色を合わせるか、ライブ撮影の時になるべく空を入れない形で撮るべきだったと思います。

 

 

第3話
果実が熟す日

ベモジョ星系人の宇宙船がペルーに墜落し、その生き残りの一団が日本に潜入したことが分かる。新宿で一人のベモジョ星系人を発見したウルトラ警備隊は彼を追いつめるが、忽然と姿を消す。消えた場所にはミズノがぞっこんである美人歯科医・冴子がいた。怪しんだカザモリは冴子のいる歯医者に向かう…。

今回の主役はミズノですが、冒頭の方の演技がオーバーなのが鼻につきました。歯医者で治療中にじっと女医を見つめるなんて、こいつはストーカーか?
冴子役の宮内知美は、グラビアアイドルだけにきれいだし、意外にセリフ回しは上手いです。グラビアで結構出ていたのだから、優香や安西ひろこみたいにもっと売れてもいいと思うのですが、トークが下手なんでしょうか?
冴子が普通にしゃべる時は「だわ」口調なのに、宇宙人のセリフになると「なのだ」口調に変わるのはよくあるパターンだし、おかしく思いました。特にラストでミズノと話す時に口調が変わるのは気になりました。宇宙人の時にいわくありげに笑うのもパターンです。
また、地球でのボラジョの使用には彼女に悩んで欲しかったと思います。本編ではミズノに対しては何の感情も持たず、彼を利用しただけに見えて、ラストのセリフは空回りした感じでした。

ベモジョ星系人が新宿の町中を本当に走る撮影はよくやりました。かなり引いたショットなので、許可を申請しないゲリラ撮影ではないかと思います。通行人があまり驚かないのが新宿らしいです。
ベモジョ星系人の驚いたアクションなんかは大げさで、笑いを取るためのように思いますが、空回りな感じです。

今回は森次晃司はナレーションのみで登場し、珍しくダンは出ません。カザモリが「ジョワ」の声も含めてウルトラアイ着眼まで、初めて単独でやったのではないでしょうか。徐々にバトンを渡してきているようです。しかしカザモリ、セブンのくせに、歯医者で冴子と会った時になぜベモジョ星系人だと見破れないのだろう?。
カプセル怪獣がこのエピソードで始めて復活したのはうれしいです。出す必然性はあまり無い感じですが。

ボラジョて何なのかよく分かりませんでした。ベモジョ星系人を巨大化させる物質でしょうか?巨大ベモジョ星系人のデザインは、植物をごちゃ混ぜにしただけのようなデザインで面白味がありません。

怪獣がやられる時は爆破のダミーを使うせいか、じっと止まったままになるので、ここで決着、とあからさまに分かってしまいます。ダミーの手とかでも動かすようにしてほしいです。

 

 

第4話
約束の果て

浜辺の町・竜の宮市にパトロールに来たシマとカザモリは、町が過去の村の姿に変貌する現象に遭遇する。その時シマは、亡くなった母の面影を持った正体不明の女と出会う。現象が収まった後ミズノは、何者かが町に過去の時間を送り込んでいると推測する。翌日調査に出かけたシマの前で、再び過去の風景が出現し出す。ミズノが特定したタキオン粒子の発信地点は、例のシマの母に似た女性だったが、シマは彼女を止められなかった。その女は、かって約束をした男に会おうとしていた…。

今回はセブンでは初めてのタイムスリップもののせいか、他のエピソードとは異質な感じですが、雰囲気はいいです。
雰囲気の良さは、タイムスリップのシーンの上手さゆえでしょう。このシーンは、風景が歪むだけではなく、過去の風景が現在の風景ととなりあった感じで出てきます。このイメージは今までのタイムスリップものでは見たことのないイメージですが、それらしく見えるイメージでした。また、タイムスリップした過去の場所は夏らしく、話の中の「現在」では季節はずれの、セミの声が流れます。過去のシーンではSEのみで、普通こういうシーンにありがちな不気味な音楽も流れません。これがかえってキャラの抱いた異様な感じが共感できて、効果的です。
ただ一つ気になったのは、過去のシーンでセミの声と同時に、半鐘が鳴っていたことです。SEとしては非常に効果的なのですが、半鐘というのは非常時でもないと鳴らさないはずなのに、別に人が騒いでるわけでもなく、誰が鳴らしてたのか気になりました。
タイムスリップのイメージだけでなく、今回登場する怪獣・大龍海が登場する時の光など、光学系のイフェクトは今回もうまいです。反対に、ウルトラホーク1号の操演の糸は目立ちました。

今回の主役はシマです。今までのエピソードでは少々存在が薄い感じでしたが、今回でやっと面目躍如といった感じです。特に、シマが女を探して宿を飛び出す時、ごはんをまず一口ほおばってから出ていくのは、性格が出ている感じで面白いシーンでした。
今回のヒロイン・乙姫とシマの母親が似ているというのは、シマが乙姫を助けようとする動機にするための設定だと思うのですが、乙姫とシマの母親を演じるのが同じ女優なので、シマが乙姫に関連ある(宇宙人の子孫とか)のかとかえって謎を期待してしまいました。
シマに関して残念だったのは、クライマックスで彼が活躍しない点です。サトミが主役だった「空飛ぶ大鉄塊」ではクライマックスではサトミの見せ場がありましたが、今回のシマにそういうシーンはありません。せっかく主役なんだから、もっと活躍させてあげれば良かったと思います。
今回かわいそうに思った点はカザモリにもありました。前回はカザモリの姿の時にウルトラセブンに変身したのに、今回はまた森次晃司の姿で変身します。カザモリは後を託されたはずで、もうセブンの変身は彼に任せてもいいと思うのですけど、軽い扱いをされているように見えます。ただ、カザモリからダンに変る時のタイミング(トランジション)はすごく自然に撮られていて気持ちいいです。合わせるのに苦労したことでしょう(何テイク撮ったのかなあ?)
サトミは今回は脇に回ってあまり出ていませんが、鵜川薫の演技は上手くありません。メイキングで見ると、シリーズの中ではこの作品が初めての撮影のようで、まだ調子が出てなかったのでしょうか。でも彼女が主役の「空飛ぶ大鉄塊」も同じロケ地で、同時期に撮影しているんですけど。

今回の怪獣、大龍海は登場させる必然性は感じませんでした。「セブン」だから戦闘シーンは入れなければならないだろうからしょうがないのでしょう。デザインは「メカゴジラの逆襲」に登場したチタノザウルスみたいですが、魚と龍の合成みたいな個性は感じられます。
今回の話にはフレンドシップ計画のような、メインの話に関わる話は出てきません。ただ、乙姫がセブンに「なぜ人間を守る?この不実な生き物を。」と聞くシーンがありますが、このセリフはシリーズのテーマを匂わせた感じです。

乙姫が宇宙人なのか、いつどこから地球に来たのか(元から地球にいるのか?)など、本編ではその正体に関する話はしていません。その点は特に不満を感じなかったし、このおかげで、この「約束の果て」は「ウルトラセブン」の中では異色な、不思議なファンタジーという感じがしました。

 

 

第5話
模造された男

石立市にストーンヘンジのような石柱が現れ、ウルトラ警備隊が調査に乗り出す。その頃カジ参謀は、フレンドシップ計画の切り札として、かつてウルトラセブンとの戦いで神戸港に沈んだキングジョーを修復し、世界の地球防衛軍に配備する計画を発表する。カジは軍需産業の最大手、新甲南重工の社長・カネミツとこの計画の準備を進めていた。だが同じ頃、カネミツはキングジョーにレスキュー用の電子頭脳を搭載し、平和の使者として再生させると発表した。カジはカネミツの豹変に怒るが、カネミツは取り合おうとしない。カネミツの変心には、「願いをかなえる」効果のある例の石柱が関係していた…。

今回のストーリーは、本来のエピソードの核であろうフレンドシップ計画の話にようやく戻っていく感じです。また今回は、オリジナルシリーズでの「ウルトラ警備隊西へ」でウルトラセブンを苦しめた強敵・キングジョーの再登場なので、オリジナルシリーズのファンにもとっつきやすい内容でしょう。キングジョーが暴れだす原因や石柱の関連はあまりはっきりしませんが、カジの「心のコピー」としてキングジョーが暴れるという設定は、カジの本心を表現しているようで面白い手法です。

「願いをかなえる」石柱がこの話の重要なアイテムになりますが、この石柱を誰が何のために作ったのか、本編で明らかにしていないせいか、よく分からない、あいまいな存在になっています。
石柱が現れた時は、特に宇宙人との関連は示唆されていないから、普通警察が調べると思うのですが、何でウルトラ警備隊が調査に出てくるのか疑問でした。怪しいものなら全てウルトラ警備隊に任せるのなら、仕事が膨大になりそうに思います。
この石柱が人間のあらゆる願いをかなえてしまうので、殺しの願いもかなえてしまう恐れがあるため封鎖する、というのは面白い理由だと思いました。でも警備するのは人間だから、警備の人が何か願えば、かなえてしまうと思うんだけど。

今回のキングジョーは、「ウルトラ警備隊西へ」の時に神戸港で倒されたロボットを回収し、有明の工場で修理します。そのドックの中で、キングジョーのど真前に「安全第一」の大きな看板がかかっていたのは、それっぽいリアルな光景でした。

クライマックスでの怪獣との戦闘シーン、このエピソードではウルトラセブンとキングジョーの戦いですが、今回の戦闘シーンは戦い方のパターンや撮り方に工夫が見られ、シリーズ中最高とも思える迫力を感じました。
キングジョーが合体するのはオリジナルエピソードと同じ設定ですが、今回はセブンのエメリウム光線を避けるため、結合体を解いて光線を避け、再度合体します。今回はCGを使って合体を描写していて、その利点をうまく使ったスピード感のあるカットに仕上がっています。合体の行程もただオリジナルと同じではなく、独自のパーツを加えてオリジナル以上にそれらしく見せています。繰演でやったオリジナルの時代と比べると、技術の恩恵を感じます。
セブンの方でも、セブンが倒れた直後にエメリウム光線を足元から撃つシーンで、カメラが光線の軌跡を追っていく、スピード感のあるカットがありました。
また今回のシリーズではアイスラッガーがあまり使われていませんが、このエピソードではその回数を挽回するがごとく、セブンがキングジョーに執拗にアイスラッガーを投げ続けます。この戦法はオリジナルでは見られなかったやり方で面白いです。ただ、最後でアイスラッガーああなってしまうと、今後が気になります。
今回の戦闘開始時のBGMは、セブンの戦闘シーンでよくかかるような軽快な主題歌の変奏ではなく、エイリアン襲撃時にかかるようなショック的な曲です。相手はかつてはセブン1人の力では倒せなかった強敵・キングジョーなので、セブンの苦戦しそうな苦悩?が出ていて合ってる感じでした。
またこの時、戦闘シーンはしばらくの間、水面に映ったセブンとキングジョーを映します。ちょっと見にくいけど、面白い撮り方です。

 

 

第6話(最終回)
わたしは地球人

まだ見ていない人

中国奥地の遺跡からオーパーツが発掘された。ウルトラ警備隊はオーパーツを地球防衛軍極東支部の保管施設へ移送する任務を受けるが、その中身は彼らにも知らされていない。現地での移送作業中、カザモリはそこの女性兵士(渡辺典子)のテレパシーによって「真実はその中にある」と伝えられるが、オーパーツの中身はカザモリ=セブンの透視力でも分からなかった。防衛軍本部に戻ったカザモリの前に女性兵士が再び現れ、真実を確かめるよう言う。カザモリは彼女を追って保管施設に潜入し、その深部に向かうが、情報部の伊集院に阻止される。カザモリは重要機密に触れようとした罪で身柄を拘束されてしまい、任務を外される。地球防衛軍を離れたカザモリは、フルハシの墓のある寺で例の女性と再び接触するが、カザモリを尾行していたウルトラ警備隊に捕まってしまう。その正体を悟ったカジ参謀はカザモリを極秘に処刑しようとするが、オーパーツの処理に疑問を持つウルトラ警備隊は、カザモリ救出に動き出す…。

第1話に出てきた、フレンドシップ計画の核心の話が出てきたり、フルハシの「その後」も出てくるし、テーマからいえば実質的にこのエピソードが、第1話からの続きです。
さらに今回は、オリジナルシリーズの「ノンマルトの使者」の設定を使って話の風呂敷を広げています。「ノンマルトの使者」は地球人のアイデンティティーを問う名作でしたが、それだけに今回の話は、地球人は侵略者かどうかがテーマの、かなり重い話になっています。
話の結末は憲法第9条を意識したような形になって、甘い感じはしますが、普通のドラマでも出てこないような難しいテーマを扱ってる点は、試みとして評価できます。
また、カジの主張やノンマルトの言い分には、今の民族紛争もテーマに織り込んでる感じがしますが、こういう政治的な話はまともにドラマにすると問題が多いと思うので、SFという形が最適でしょう。こういったネタはウルトラセブンならではのテーマで、最終回にふさわしいヘビーな話といえます。

ノンマルトの主張は結構なのですが、行動に一貫性が無いため(シナリオの欠点か?)、彼らもエゴイストのように思え、同情できませんでした。
渡辺典子の演じた役も、ノンマルトの代弁者というのは分かるのですが、彼女が一体何者なのか明確に語られていない点が気になりました。彼女がノンマルトのことを「仲間たち」と言うところをみると、彼女はノンマルトの残留思念か霊体のようなものかもしれません。
ノンマルトはザバンギとかいう怪獣を使って、地球防衛軍にあるデータの開示を要求しますが、ここで怪獣を出すのは合ってない感じがしました。データがほしければ、ハッキングする方が賢いでしょう。実力を行使すると言いながら怪獣を使うなんて、破壊としか思えない、古いやり方です。
ザバンギのデザインは「帰ってきたウルトラマン」のアーストロンみたいで、特徴が感じられません。しかし、ザバンギとセブンが戦うシーンは、カットを長く、音楽も重いものにして、セブンの迷いや苦しみを効果的に表現しています。

今回はカプセル怪獣・ウィンダムとミクラスが出てくるのはうれしかったのですが、彼らの活躍シーンがあまり無くて、すぐにやられてしまうのは残念です。せっかく出てきたのだから、ザバンギに一矢報いるシーンがほしいです。本編では彼らはやられてそのままになってますが、メイキングにはダンがカプセルに戻すカットが出ていました。

セブン今回は2回変身します。1回目はカザモリの姿で、2回目がダンの姿というのは配分がとれた感じでいいです。

今回は最終回らしく、「セブン、セブン、セブン」のオープニングタイトルはなく、始めのクレジットは本編に出ます。冒頭に「キリヤマ隊長の想い出に捧げる」という内容の英文の字幕が出ますが、それにしてはこの話でのキリヤマ隊長の扱いは哀れでした。いくらキリヤマ役の役者が亡くなっているとはいえ、この扱いはオリジナルシリーズのファンとしては悲しいです。

話は中国の遺跡から話が始まりますが、遺跡がある地下は「インの時代より古い地層」と言いながら、周りの仏像はトンコウ風な感じだし、遺跡の外や中のイメージも古代中国という感じはしませんでした。
今回のデザインワークは、過去のノンマルトの都市はオリジナルシリーズでのデザインを思わせるし、オーパーツのデザインもそれらしい感じがしますが、冒頭の遺跡などは詰めが甘い感じがしました。人間の遺跡などのリアルなものは不得手なんでしょうか?

カジ役の影丸氏は叫んだり泣いたり、この話で始めていろんな表情見せたように思います。初めこの役はミスキャストのように思いましたが、結果的に合っていたようです。セブンと取っ組み合いをした人間も珍しいかもしれません。

メイキングパートは今回で最後のせいか、感動的な仕上がりです。特にラストの方の、シロガネ隊長役の南条弘二のナレーションは感情がこもっていて、シリーズが好きな人はジーンと来ると思います。

 

すでに見た人

ラストでは地球防衛軍が宇宙文明に向かって不戦の誓いを発信することを決定します。これは憲法第9条を意識した展開だと思いますが、その後の歴史を見れば実質的な軍隊である自衛隊が作られたし、これで安心はできなでしょう。もしかしてウルトラ警備隊が自衛隊にあたるのかな?このラストはオリジナルでの「超兵器R1号」のラストの感じも思わせます。

ノンマルトの「地球は自分たちが元々住んでいた土地だから戻る権利がある」という主張は、アラブに戻ったイスラエルを思わせます。彼女は秘匿していたノンマルトのファイルを見せろと言っておきながら、シロガネ隊長がその情報を開示しようとすると、今度は地球人が情報を開示する証拠は残さないと、ザバンギを使って発信元のパラボラを壊そうとするし、結局こいつは復讐したいだけのエゴイストのように思います。
それにしても、「宇宙に向かって発信する」って、どこに向けるつもりだったんでしょう?防衛軍のパラボラだけなら、わずかに限られた角度しか発信できないと思うんだけど。

ノンマルトの情報を隠すように指示したのが誰か語られないのも気になりました。防衛軍の長官もノンマルトを知る人が処分されてるのを知らなかったようだし、内部で勝手に暴走していたということなのでしょうか? これの秘密を守ろうとする保安部とは一体どういう組織なのかもよく分かりません。
キリヤマが行方不明にされている設定は悲しくなりました。オリジナル版の主要キャラがこんな悲惨な運命をたどっているなんて、まるで「Zガンダム」でのアムロ登場時の処遇を思わせます。
それにしてはフルハシだってノンマルトの存在を知っているはずだし、他の隊員も同じ扱いをうけないのは不自然に思います。

数万年前の過去でのノンマルトへの侵略シーンでは侵略者、つまり今の地球人の祖先が宇宙船みたいなメカで攻撃をしていますが、そんな科学力が昔の地球人にあったのなら、今の科学はもっと発達しているはずです。この科学力はどこに消えてしまったのでしょう?ムー大陸とでも言いたいのかな?それとも「神々指紋」のような大洪水?

オーパーツの中にはフルハシの体が入っていましたが、第4話からのエンドタイトルの画面には、第1話で消えたはずのフルハシが出ているし、オーパーツの大きさも人の身体が入るくらいの大きさなので、この展開の想像はつきます。
なぜわざわざ死んだはずのフルハシなのか、とは思いますが、彼の役目は防衛軍が持っているノンマルトのデータを補完する証言をする目的なのでしょう。だからこそ話の終わりになってセブンによって開けられる意味が出るのであって、それ以前にフルハシが出てきたなら、誰もノンマルトのことをろくに知らないから、彼の証言はただの気狂いとして扱われたかもしれません。

セブンの正体を隊員たち全員が知るところは、TVの平成ウルトラシリーズのパターンを感じました。このシーンでカザモリ=セブンはサトミ達に「カザモリは戻ってくる」と言いますが、ダンが最後に、カザモリを殺した砂漠で「ミラクルマン、ありがとう」と言ってカプセルを空に投げるのが、その解答なのでしょうか?

ルミがサトミを平手打ちをするシーンは、今までのエピソードで彼女が感情を爆発させるシーンが無かったので意外だし、またサトミ達のカザモリ救出の決意を固める意味でも効果的なシーンでした。
ルミといえば、メイキングパートでの神沢監督のインタビューで、監督の背後のモニターに「空飛ぶ大鉄塊」のクライマックスが流れていましたが、セブンとダイテッカイが戦ってる時にサトミがダイテッカイに向かうシーンに、ルミも映っていました。でも本編のこのシーンでは彼女、いたかなあ?(あのシーンをほめていながら、もう忘れている)

前の時代なら、宇宙人は悪で地球人は善という単純な図式で済んだものを、セブンのオリジナルシリーズでそれに疑問を持たせ、さらに今は、自分らこそ悪かもしれないという、アイデンティティーを問う形の話は、時代の流れを感じます。

 

 


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