アルティメット・クライシス
金田一智子のア・ブ・ナ・イ仕事

 

 

金田一智子(かねだいちこ=水野美紀)は推理小説マニア。麻衣子(佐藤リナ)と共にウェイトレスをしている。カバンを大事そうに抱える客から時計の針の音を聞いた一智子は警察を呼び、警官隊が店を包囲する。その時彼女が読んでいた小説は爆弾魔の話だった…。
この爆弾騒ぎを見ていた田中(丹波哲郎)は一智子と麻衣子に、彼の会社の極秘書類が入っているというカバンを渡し、湯沢温泉にいる彼の社員に渡すように頼む。産業スパイから目立たなくさせるための作戦だそうだ。韓国アカスリツアーを夢見る一智子は20万という報酬と、ホテル代&交通費全額持ちという条件に釣られて引き受ける。だが温泉街を歩く2人に、サングラスをかけた怪しい男と、その男を追っている刑事らしい男が近づいてくる…。

90年代初め、ビデオテープを安く仕入れて販売するという告知でフランチャイズを募集しながら、やり方がずさんで社会問題になり、結局潰れてしまった「ビデオ安売王」レーベルのセルビデオのオリジナル作品です。

主演は水野美紀ですが、この作品の一番の売りは、彼女のコスプレと言えるでしょう。
彼女はこの作品の中でウェイトレス、それもアンナミラーズぽいミニスカや、水着や短パンといった姿を見せてくれますが、売れっ子になってしまった今ではこんなコスプレは見せることはないでしょう。その意味ではお宝の作品です。
ましてや、「ビデオ安売王」はセル専用のビデオで、レンタルに出ていることは無いはずなので、買った人しか持っていないであろう貴重品ビデオです。
このビデオのパッケージには、水野美紀の作品については「チューしてよのCM」としか書いておらず、まだ売り出しの時期に出ていた作品だと分かります(「くの一忍法帖」と同じくらいの時か?)。実際今より若く(初々しく)見えるし、売り出し時期ゆえにコスプレもOKだったのでしょう。

話は大きく3部に分けられます。初めがレストランでの爆弾騒ぎ、次が温泉街での運び屋、最後がまたレストランでの強盗団事件になります。パッケージのストーリー紹介はかなり誇大ですが…。
中盤の温泉街のパートが一番長いのですが、土曜ワイド劇場でひところあった、混浴温泉モノ(さすがに水野は脱ぎません)を見てるように思いました。そういえば、脇役で出ている相川恵里ってこのテの2時間ドラマに時々出ていたような…。
このパートの最後には、裸のねーちゃんが群れで出演するというおいしいシーンが出てきます。TVの混浴温泉ドラマよりも多人数で、しかも下半身まで見せるのはビデオならではの強み?でしょう。加えてボカシが入ってないのもセルビデオならではの強み?です。ま、見えやしないけど。

主人公が、思い込みの激しい推理小説おたくというキャラは、他に類似が思いつかなくて、面白さを感じます。その名前から、誰からも「きんだいち」と呼ばれてしまうけど、いかなる状況でも「かねだ」と直させるのも笑えます。楽天家の一智子に、心配性の麻衣子という配置はいい凹凸コンビです。
丹波哲郎がゲスト出演でちょこっと顔を出していますが。ふだんTVドラマで見るよりも、軽めの明るい役というのは、変わった感じでした。

最後に登場する強盗団の男4人は初め、延々と森高千里の話をします。事件を起こす前に他愛ない話をするというのは、クエンティン・タランティーノを意識したように思えます。ここは、リーダー役の藤原喜明の丁寧な言葉づかいに個性が感じられて面白いシーンでした。

水野美紀の転機は、「踊る大捜査線」だったと思います。もしこの番組がそれほど人気が出ず、映画にもならなかったら、彼女は今でも脇役の位置に甘んじていたかもしれませんし、もしかしたら「アルティメット・クライシス2」なんてのを作ってたかもしれません。
今よく出てるような一般のドラマもいいけど、やはり水野美紀にはアクションをやってほしいなあ。「千里眼」で見せたように、彼女こそアクションと演技の両方ができる女優なのに…。

 


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女子高生コンクリート詰め殺人事件

 

 

1989年に起こった女子高生コンクリート詰め殺人事件。この事件を推理を交えて再現し、篠井英介をホスト役として進行していくビデオです。
「ビデオ安売王」レーベルのセルビデオで、今は手に入りにくい作品です。

他のVシネで同じ事件を扱った作品がありましたが、あの作品は被害者の女のコをAVギャルの竹内あや?が演じていたせいか、レイプ等のHシーンをAVぽく見せていて、事件のこと自体は深く追求していなかったように記憶しています。
しかしこの「女子高生コンクリート詰め殺人事件」は、例えば被害者がレイプされてるシーンでは、少女を写すのではなく、周りで見てる少年たちを写すといった風に、エロ的な描写は抑制されています。
その分?輪姦後に繰り返される、被害者を痛めつける描写は凄まじいものがあります。少女の手や足を焼いてしまうところをモロに写した(当然ダミーでしょう)シーンは凄いけど、やけどした足で立たせるところはもっと痛々しい感じがしました。グロいシーンに抵抗がある人には薦められない作品です。

受けを狙うなら、こういったグロや、他の作品のようなエロに走る方がいいのでしょう。
しかしこの作品のいいところは、内容を単に事件の再現にとどめるのではなく、加害者の少年たちを裁く少年法の、罪の軽さに対する「怒り」をテーマにしている点です。
また加害者だけではなく、何もしなかった加害者の家族の行動とその罪をも指摘しているのも徹底しています。彼らへの怒りも、その通りだと思います。
少年法の罪の軽さや、加害者の人権ばかりが優先される、といった問題点がマスコミで取り上げられるようになってきたのは、榊原事件の前くらいからだと記憶しているのですが、このビデオが作られたのはそれより前です。その意味では、テーマとしては先駆的なことを言っていたいえます。
時期的に、このビデオが少年法の議論のきっかけになったように見えますが、そんなに話題になった作品ではないのでしょう…。

このビデオでは、被害者が監禁された家に戻ったといった、裁判などでは明らかになっていない不可解な行動の理由もドラマで再現していますが、この場合「こうした!」とは断言せず、あくまで「推測」に留めた点も好感が持てました。
断定的に描かれると、本当かよ?て、かえって疑いたくなります。

普通のドラマやドキュメンタリーであれば、事件の説明はナレーションのみで行うところでしょう。しかしこのビデオでは篠井英介氏がホストとして出演し、進行させています。
ニュース番組などで、解説者が語った方が説得力があるように、このビデオの場合でも、単にナレーションで語るよりホストが出て語った方がより、テーマである少年法に対する怒りが伝わり、効果的のように思いました。
ただこういう場合、ホストが感情的になり過ぎるとかえって引いてしまいます。その点篠井氏は、「アナザヘヴン」や「FIVE」といったドラマで演じたキャラのように、知的に見えながら抑制を効かせ、感情を少し表しながらもオーバーになることなく演じて、適役です。

このビデオの販売はソフト・オン・デマンドと書かれています。昔はこういう、エロじゃないビデオも売っていたんだなあ…。

知ってる人は少ないと思いますが、埋もれさせるには惜しい作品です。

 


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