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ユベール(ジャン・レノ)は手の早さが玉に傷の、パリ警察に勤める刑事。彼は19年前に姿を消した日本人女性ミコを今でも思っている。そんなユベールのもとに、日本の弁護士からミコが急死したので遺言に立ち会ってほしいと電話が入る。日本に来た彼は、ミコには彼との間にできた娘ユミ(広末涼子)がいて、あと2日で二十歳になるまで彼が後見人として指名されていることを知る。ユベールは突然のことにうろたえ、父だと名乗れないままユミと行動を共にし出すが、その周りに怪しい男たちの影がちらつき始める…。
ジャン・レノが女の子を守るというパターンは「レオン」を思わせますが、あの作品ほど暗く悲惨ではありません。むしろ「TAXi」に近いアクションコメディと見るべきでしょう。「TAXi」ほどムチャクチャじゃないけど。
話も「TAXi」同様にご都合的で調子よく、「レオン」ほどの深みはありません。
しかし、腕っ節は強いけど女は苦手なユベールと、そんな彼を振り回す奔放なユミという対照的なキャラのギャップは笑いを誘います。「TAXi」でもそうですが、このキャラクターの違いがいい化学反応みたいなものを出しているおかげで、2人のキャラが立っていて、特にユベールとユミが一緒にいるシーンは楽しめます。
ユミ役の広末涼子はタイトル前にクレジットされる大役です。日本人の女の子が外国映画でこれだけ奔放なキャラとして描かれたのは初めてではないかと思いますが、広末はノリノリで演じている感じがします。さらに、フランス語のセリフが妙に合っているのは意外でした。
日本が舞台ということで、この作品には日本人の役者も多く登場しますが、広末以外の出演者は知らない顔ばかりです。もしかしたら日本人じゃない人も混じっているかもしれません。せめてミコと敵の親玉くらいは有名な役者を使ってほしかった。
「WASABI」のタイトルにはそれなりの意味があるようで、ユベールがそれを語るシーンが当初あったようですが、本編ではカットされています。なので、単にワサビが出るからこのタイトルかい?と思ってしまう作品になっています。ま、ユベールのワサビの嗜好は笑えますが。
日本の描写は「TAXi2」なんかに比べればかなりまともな方でしょう。ジャン・レノがダンスダンスレボリューションをやっているのは笑えます(それも渋谷BEAMの地下!)。
変に思えたのはせいぜい弁護士事務所の障子と、日本人同士でもフランス語で会話するシーンがあるところくらいです。東京と京都の往復時間など、地理的におかしいシーンもあるのですが、外国の人には分からないだろうし、ドラマのためのウソと割り切ればいいと思います。
本編には日本語の歌も何曲か使っていますが、僕の分かったのはエンドクレジットでのパフィーの「これが私の生きる道」(シングルとは違うバージョンだと思う)くらいでした。
広末涼子がこの作品の記者会見で泣いたことがワイドショーで話題にされましたが、映画を見ていると、撮影中は広末とレノの雰囲気はいい感じだったのだろうと思います。こういう現場ならマスコミに煩わされることも無く、安心して撮影に臨めただろうから、彼女は現場が離れがたかったのではないでしょうか。
この作品は、東京都が昨年設立した「東京ロケーションボックス」が協力した初めての海外メジャー映画です。ここはロケのコーディネートなど、東京都で撮影する映像作品に協力する事務局で、海外では役所がこういう部署を置くのは当たり前ですが、日本では最近になってようやくいくつかの自治体が動き出した段階で、まだ多くはありません。
「東京ロケーションボックス」は現在の都知事・石原慎太郎氏の肝入りで設立されたそうですが、文化産業に造詣のありそうな石原都知事らしい事業です。今後もがんばって東京、いや日本を積極的に世界に紹介してほしいものです。
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クライマックスでの銀行のシーンでは、ユベールの元仲間らしき日本人が結構いたくせに、結局ヤクザたちをけん制するだけで、銃を撃つのはレノ1人だけというのは、さすがに不自然でした。日本国内で大量の武器を調達して勝手に銃を撃つのも問題あるぞ。
冒頭の方でユベールに好意を持つ女性が登場します。ユベールが今でも昔の女を忘れられないということを表現する意味では存在意義があったのに、それ以降は出てこなくて中途半端に思いました。
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