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男子高校生による「男のシンクロ」を描く映画です。
シンクロナイズドスイミングは普通、女性が演技をするスポーツで、「男のシンクロ」は聞いたことがないのでどういうものなのか想像がつきません。また、この作品の監督である矢口史靖氏の前作「アドレナリンドライブ」が話にあまり乗れなかったので、今回の「ウォーターボーイズ」には期待していませんでした。
ところがこの作品、クライマックスがとても快調なノリを見せる、爽やかな作品に仕上がっています。
矢口監督のこれの前の作品「ひみつの花園」や「アドレナリンドライブ」は、変なトラブルに関わってしまう人々をネタにした映画で、今回の「ウォーターボーイズ」は一見それらとは異質な、正統スポーツものの話ですが、「男のシンクロ」というのはやはり変わった設定ではあります。
こういう変わり種の努力話は、男のストリップの「フル・モンティ」や、おかまのバレーボールの「アタック・ナンバーハーフ」を思わせます。ダメと思われていた奴らが最後に決めて見せるのは、これらの作品の共通点でしょう。
シンクロは音楽に乗せて演技をするという、いわばダンスのようなスポーツですから、クライマックスで観客をノセるのにふさわしい題材でしょう。特にこの作品では、PUFFYの「愛のしるし」やフィンガー5(キョンキョンじゃないぞ)の「学園天国」なんかで大いにノセてくれます。
クライマックスだけでなくそれ以前の、主人公たちを危機的状況に陥れていく展開は上手いし、キャラが「凍って」しまったような静かなシーンで、音や人をアクセントに笑わせる、間の取り方にはこの監督独特のセンスを感じます。
練習シーンは、一見シンクロと関係ないように見えることが実は重要な練習という、「ベスト・キッド」を思わせる描写ですが、「ウォーターボーイズ」はそれよりもウソっぽく見えて、こんな練習で演技ができるのか?と疑問を抱きます。とはいえそのウソっぽさも、ラストの気持ちよさで許せてしまいました。
主人公を演じる妻夫木聡は「富江:re-birth」に出演していましたが、あの映画ではクレジットは一応主役級だったものの、酒井美紀や遠藤久実子が目立ってたおかげであまり印象に残りませんでした。その意味ではこの「ウォーターボーイズ」が彼の本格主演作と言っていいと思います。矢口監督作品のキャラに通じるような、目の前で起こる現象に巻き込まれていってしまう情けない役を好演しています。
今までずっと出演していたミニストップのCMにも最近クレジットが入って、彼もようやくブレイクした感じです。
主人公のガールフレンドを演じる平山綾は、途中まではいらないキャラと思いましたが、クライマックスでちゃんとイベントに絡んでくれました。彼女は雑誌のグラビアに何度も出ていて、可愛いのは当然なのですが、この映画では単に可愛い以上のキラキラした表情を見せてくれます。
グラビアアイドル系では他に、主人公をシンクロに引き込んでしまう女教師役で眞鍋かをりが出ていて、無責任な脳天気ぶりはなかなかの名演です。また、「ファイブミニ」のCMで「ジャーンプ!」と飛び込む上野未来が、最後の方でチラリと顔を見せています。
主人公たちを助ける?キャラで竹中直人が出ていて、「赤影」に続いての暴走ギャグを見せてくれます。ちなみに、竹中直人と平山綾はほぼ同時公開となるTVスペシャルドラマ「君ならできる」でも共演しています。
これの上映が終ってから、何人かのお客さんが「面白かった!」と言ってたのを聞きました。
今のところ、矢口監督の最高傑作と言ってもいいのではないかと思います。
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