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60年代から続いている、有名なアメリカンコミックの実写化映画です。
超能力を持つミュータント達の話で、このネタは日本でもコミックで描かれることは多いですが、故石ノ森章太郎氏の「サイボーグ009」や「幻魔大戦」、永井豪氏の「凄ノ王」などは、僕みたいに30代の人には強烈な記憶に残っていることと思います。
そういったコミックで描かれてきたサイキックやテレパシーなどの超能力のシーンを、この「X−メン」では「タイタニック」のデジタルドメインなど、高度なデジタル技術を持ったスタジオを使って見事に、かっこよく映像化してくれています。それだけでなく、日本のコミックでも描かれてきた、超能力者ゆえの悩みや苦しみもこの作品ではきちんと描写されています。
また、敵味方ともチームプレイという点では、日本の戦隊ものなど、特撮ヒーローものと同じ匂いもします。そういった意味では、コミックや特撮ものに親しんでいた人にとっては、この映画はかなりツボを押さえられる作品だと思います。
去年か一昨年あたりに、この映画に「新スター・トレック」でピッカード艦長役を演じたパトリック・スチュアートが参加することが報道されました。この人は「新スター・トレック」では、冷静沈着な指揮官というイメージにぴったりだったので、それだけで「X−メン」には期待していましたが、彼が演じるX−メンチームのリーダー・プロフェッサーXは、期待通りの渋い存在感を発揮してくれています。
一方、敵のリーダー・マグニートーを演じるのは、この「X−メン」の監督ブライアン・シンガーが、これの前に監督した「ゴールデンボーイ」での、狂気の演技が記憶に新しいイアン・マッケランです。
この、同じシェークスピア劇の経験がある2人のご老体の存在が、映画に適度な深みとリアリティーを与えています。
「X−メン」で特筆すべき点は、他のキャストもこの2人の重鎮に劣らない存在感を見せている点でしょう。
「X−メン」はチームの話なので、原作で登場するキャラはそれなりに多いようですが、映画では数を絞っています。とはいえ、ポスター(メンバーの顔の一部だけのポスターはなかなか渋いデザインでいい!)にも出ているように、メインで登場する超能力者は敵味方合わせて10人くらいいます。しかし、彼らの外見や使える特殊能力がそれぞれ異なっているため、キャラを混同してしまうことはなく、分かりやすい人物構成になっています。
今回の主役とも言える人物は原作コミックでも人気のキャラ・ウルヴァリンですが、他のキャラクターも劇中の個々の事件と適切に絡めているおかげで、どのキャラも魅力的に描かれています。
おかげで、パンフは700円と高めなのに、中に載っていた各キャラの大判の写真が気に入ってしまい、買ってしまいました。
キャラの関係であえて苦言をあげるならば、プロフェッサーXの本名が「チャールズ」であるという風に、映画の中ではコードネーム?と本名の両方を使っているため、本名を言われると誰か分かりにくくなることがありました。とはいえ、コードネームだけよりは、本名も持っている方がリアルではあります。
クライマックスでは、プロフェッサーXは表には出てこないのでパトリック・スチュアートのファンの人には面白くないかもしれません。しかしそのおかげで、それまではプロフェッサーXの手下といった存在に見えたX−メンチームのメンバー・サイクロプスやジーン・グレイ達、そしてウルヴァリンが前面に出て大活躍します。ここでは各人の特殊能力を生かした戦い方を披露して、映画全体の中でのキャラクターの出方のバランスとしては非常にいい感じがしました。
クライマックスだけでなく、全体の話も納得のいく構成です。
この映画ではウルヴァリンを中心に話が進みます。X−メンの組織では新参者の彼の視点で話が描かれるので、観客にもX−メンの組織が分かってくる作りになっています。それに加えて、もう一人の新参超能力者少女・ローグをウルヴァリンに絡ませて、一匹狼を好むウルヴァリンに、X−メンチームと共に戦う理由を与えてるのもうまい作りです。
「バットマン」や「ロケッティア」「スポーン」など、90年代に入ってからアメコミの実写化映画がちらほらと出てきていますが、「バットマン」や「バットマン:リターンズ」は世界観は良かったけど眠くなったし、「スポーン」なんかは記憶のかなたに忘れたいようなひどい出来で、いいと思える作品はあまり無かったように思います。これらの中では、この「X−メン」が今のところ、一番いい出来でしょう。
ただし、この作品には物足りない部分を2点感じました。
1点め。この映画の中の世界では、ミュータントと呼ばれる超能力者が世界各地で増えていて、普通の人々がミュータントを脅威に思って彼らを差別している、という設定なのですが、その描写が映画にはほとんど出てこなくて、冒頭での議会のシーンでの、ミュータントについての議論がそういった世界観の紹介になっています。
しかし、差別などの具体的なシーンが描かれていないので、これにはどこか唐突な感じを受けました。例えば「ロボコップ」みたいにTVニュースのような形ででも、ミュータントの現状を説明してほしかったと思います。
2点め。プロフェッサーXはミュータントと人類の共存という立場に回り、敵のマグニートーはミュータントによる人類支配を主張して対立します。しかし、ミュータントが迫害を受けている世界ならば、マグニートーの目的の方が単純に理解できます。
プロフェッサーXや配下のストーム達は、人類から迫害を受けているのにかかわらず、なぜ人類を守る立場に立つのか、その理由の説明、あるいは描写が無いのが気になりました。この点は日本のアニメや特撮ものの方がていねいかもしれません。
原作はウルヴァリンのコスチュームが黄色だったりと、かなり派手で、そのまま実写にしてしまうと60年代の「バットマン」TVシリーズみたいにギャグになってしまいそうですが、この映画は90年の「バットマン」と同様に世界観を渋く抑えて、なおかつスーパーバイクや小型ジェットを出すなど、リアルとコミカルとぎりぎりの線をうまく出しています。
X−メン基地は学園の地下にあるという、これも日本のアニメにあったような設定ですが、これのデザインは無機質ながらも、広がりを感じさせる面白いデザインです。
今回の映画で気になっていたキャストはウルヴァリンなのですが、このキャラを演じるヒュー・ジャックマンは、原作のイメージ通りの凶暴性を感じさせてくれて、役にぴったりでした。どこかの批評にあった「若い時のクリント・イーストウッドを思わせる」言葉にはうなづけるものがあります。ウルヴァリンとサイクロプスとの憎まれ口合戦(こういう何気ないシーンがあることによってキャラが立つのでしょう)は笑えるシーンです。
ジーン・グレイを演じるファムケ・ヤンセンは、「ゴールデンアイ」でのキレた悪女とか、「パラサイト」では怪物に取り付かれる女など、変な役ばかり演じているイメージがありましたが、今回のキャラのような、強くてかわいい女性の役も似合うのは発見でした。
映画の終りは続編を暗示させる形になっています。現にパート2の制作も決定したようですが、早くも楽しみです。
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アメコミ原作のヒット映画「X−MEN」の続編です。
映画の長さは2時間以上ありますが、冒頭のナイトクロウラーの襲撃シーンから、前作以上と思えるテンポで飛ばしてくれて、時間を忘れて楽しめました。
登場するキャラクターはメインだけでも前作以上の人数になっていますが、各々の活躍シーンが上手く整理されていて、混乱することはありません。
しかし人数の多さゆえか、ミュータントたちが人間以外の存在になってしまった孤独というような、ドラマとしての深みは前作に比べるとあまり感じられませんでした。
今回はプロフェッサーXやローグの出番が前作に比べるとかなり少なくなっています。それに反して、ストームは目立った感じがしました。ストーム役のハル・ベリーはアカデミーを取って以来人気が出たけど、プロフェッサーX役のパトリック・スチュワートやローグ役のアンナ・パキンの名前は最近聞かないから、登場シーンの多さを人気に比例して配分したように思えました。
この映画が完成したのはイラク戦争前のはずですが、映画での戦いの決着の付け方は、イラク戦争(ブッシュ主義と言うべき?)のアンチテーゼぽい感じを受けました。
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ファイナル ディシジョン |
ミュータントを人間に変える新薬「キュア」が開発され、ミュータントたちはそのままでいるか人間に変わるかという選択を迫られる。一方、X-MENを救うために犠牲になったはずのジーン・グレイ(ファムケ・ヤンセン)が生きていて、エグゼビア(パトリック・スチュアート)の学園に収容されるが、彼女の抑圧されていた悪の人格が解き放たれ、「キュア」の根絶を目論むマグニート(イアン・マッケラン)の側についてしまう…。
人気コミック「Xメン」シリーズの3作目です。前2作までの監督ブライアン・シンガーは「スーパーマン リターンズ」に行ってしまったので、今回は「ラッシュアワー」のブレッド・ラトナーが監督を務めています。
今回はメインキャラの何人かがお亡くなりになったり力を失うので、完結編といっていいかもしれません。しかしミスティークの運命は意外だったし、サイクロプスなど前2作まで目立ってたキャラが余り活躍せず、ぞんざいに扱われているのにはがっかりしました。ローグ役のアンナ・パキンは、アカデミー賞を取ったはずなのに最近名前を聞きません。落ちたなあ。
今回の話のキーになるジーン・グレイの行動は、原作のコミックにはあったそうですが、映画での設定はこの映画で初めて出てきて、とってつけたみたいに見えました。今回の彼女は立場をいま一つはっきりさせないので、何を考えてるのかよく分からないキャラにされてしまっています。
特撮は今回も全体的に悪くなく、特にゴールデンゲートブリッジの「移動」は迫力でした。その目的は笑えましたけど。
映画の原題のサブタイトルは「ラスト・スタンド」なのに、なぜ日本のサブタイトルが「ファイナル ディシジョン」とカタカナになるのでしょう?「最後の選択」じゃいけないのかなあ。
今回で完結ぽいとはいえ、前作まではいづれウルヴァリンの出生の秘密が語られることになっていたように思います。続編の可能性はまだあるかもしれません。
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X-MEN ZERO |
「X-MEN」シリーズの4作目となる今作は番外編として、主人公格キャラであるウルヴァリンの、失われた記憶の部分が語られます。その真相は要は、ウルヴァリンと彼の兄ビクターとの「壮大な兄弟ゲンカ」なのですが、兄弟とも超能力者だけに破壊をしまくってはなはだ、はた迷惑であります。
映画はこの兄弟ゲンカとウルヴァリンの悲しい恋を、これまでのシリーズ同様のスピード感と迫力のアクションで描き、今回はさらに香港映画ぽいガンアクションも加わります。退屈はしないけど、若干情感が削がれたようにも思いました。
特筆すべきはラストでの「あの人」の登場でしょう。クレジットにはありませんが、出てればいいなと思っていたので、嬉しいサプライズでした。まあ、メイク目立つ感じしたけど。
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ファースト・ジェネレーション |
「X-MEN」シリーズの過去編としては「ウルヴァリン」がありましたが、今回はそれより以前の、プロフェッサーXとマグニートの過去ということで、役者を変えて彼らの友情と別離のお話です。物語は、歴史上有名なキューバ危機の影に隠れた話、という感じの壮大な内容になっています。
セレブロや恵まれし子らの学園、そして戦闘機のオリジンももちろんですが、これまでの作品でも匂わされていたプロフェッサーX=チャールズとマグニート=エリックのかつての過去の関係が、映画ではやはり最も興味深い部分です。しかし、チャールズが良かれと思ってやったことが、けっこう裏目に出てしまうことが多い、皮肉なエピソードが続くお話でもあります。
チャールズとミスティークの関係は、これまでの作品を考えると意外な設定でした。ミスティークの切ない想いが彼女のその後の運命を決めていくのも、上手い展開です。
監督のマシュー・ヴォーンは「キック・アス」が評判になったことで起用されたそうで、僕はその映画は見ていませんが、手堅くまとめています。
映画の前半には、シリーズでウルヴァリンを演じているヒュー・ジャックマンがワンカットだけ顔を見せています(映画で唯一のオリジナルキャストでは?)。「X-MEN」シリーズが出世作になったからだと思いますが、なかなかに義理堅い人のようで。
映画にはVFXでジョン・ダイクストラの名前がクレジットされていました。「宇宙空母ギャラクチカ」(「GALACTICA」のオリジナル)なんかで活躍した彼も、もはや前世紀の人物というイメージがしていたので、意外でした。
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