A New Traslation 星の鼓動は愛 |
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「機動戦士Zガンダム」3部作、ラストの作品です。
今回はエウーゴとティターンズの抗争に、ジオン軍残党のアクシズが加わります。彼らが時には手を組み、時には敵対する関係は複雑ですが、現実の国際情勢でも核や国連や領土やEUといったさまざまな問題で、国々の利害関係が違ってきます。物語はこういう現実の複雑な国際情勢の思惑を連想させて、実にリアルです。TV版の時は気づきませんでしたが、アニメでこんなリアルなお話をやってしまう「Zガンダム」の凄さが、今になって分かりました。
今回のウリは「誰も知らないラストシーン」ですが、これは大げさでしょう。しかしTV版とは違うこのラストは、戦争のニュースの絶えない今を反映しているようで、「星の鼓動は愛」のサブタイトルには納得です。このラストでようやく「New
Translation」の意味が分かった気がしました。
ただこのラストで、次のシリーズである「機動戦士ガンダムZZ」へのつながりがおかしくなったかもしれません。でも今回は「新訳」ということなので、その後のことは考えるべきではないでしょう。
今回の舞台は全て宇宙で、カミーユたちは地球には降りません。なのでフォウ・ムラサメは「ほとんど」出てこないし、ロザミィも前編からどうなったか不明だし、シャアの演説でのカミングアウトもありません。
でもこの地球編を入れてしまうとあと1時間ほど長くなり、かつ話が余計に入り組んでしまうかもしれないので、この大胆なカットは適切だったと思います。フォウのファンは不満かもしらんけど。
今回もTV版の絵が結構使われていますが、最後くらいはファーストガンダムのように、オール新作画でやってほしかったところでした。特に肝心なシーンまで前の絵のカットが出るのは、少しがっかりです。ただ、TV版の作画で馴染んでるシーンをヘタに変えるのもどうか?と思わないこともないのですが。
エンドタイトルの曲は今回もGacktですが、途中から激しい曲に変わってしまい、余韻がブチ壊しでした。シーンの最後に流れたバラードぽい曲を、最後まで引っ張るべきでした。
今回のサラ・ザビアロフの声は、前編での池脇千鶴ではありませんでした。変更したのはギャラのせいかな。
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今回のラストはTV版と違い、希望を謳い上げるようで好感が持てました。戦争を終わらすのは人の素直なつながり。大義や利害に惑わせない素直な心。そして人にとって一番大事なものは普通の生活、と言いたいように解釈します。
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A New Traslation 恋人たち |
「Zガンダム」3部作の中編である今回は、カミーユがロザミィたちの襲撃で宇宙に上がりそこなうところから始まり、フォウ・ムラサメやサラ・ザビアロフといった女性たちを知っていく物語です。
今回で主人公カミーユの乗るマシンが、ガンダムMkIIからZガンダムに代わります。普通のロボットアニメなら、主役メカの交代というのは話の大きなターニングポイントですが、今回の映画でのZガンダムの登場はTV版以上にあっさりしたもので、あんまり重要視されていません。このように今回は(も)モビルスーツよりも、人間関係の描写に重点が置かれています。
しかし話はやはり分かりにくく、TV版を見ていない人はついていくのに苦労することでしょう。元々のTV版の話がファーストガンダム以上に込み入っているせいか、今回も「機動戦士ガンダムII」以上にお話が目まぐるしく展開します。富野監督はインタビューで、映画に恋愛や政治など色々なメッセージを込めたと言っていますが、話があまりにも目まぐるしすぎて入ってきません。
今回は、前回名前も呼ばれなかったパプテスマ・シロッコが目立っていて、彼の動きが今後物語に重要になっていくことを予感させます。クライマックスは前回のような感動はありませんが、新作画と音楽で迫力が出ていて、三枝成彰のBGMは20年経ってもパワーを失っていません。またここで「退く」決断をするシロッコの潔さには、少ししびれました。
ここで出てくる白いモビルスーツて、TV版では出てこないオリジナルのような…。
今回は前回より新作の絵の割合は増えた感じですが、新作とTV版の絵のクオリティの差は相変わらず歴然で、本当に馴染ませる処理をしてるのかと疑いたくなります。新作の絵は大画面で見ると、宇宙戦艦の動きがコンピューターで書いているせいか滑らかで、気持ちいい感じがしました。
富野監督は声のキャストはTV版と同じにはこだわっていないそうで、今回重要である女性キャラ、フォウ・ムラサメとサラ・ザビアロフのキャストはTV版と違っています。フォウの声を演じているゆかなという人の声を聞いたのは初めてだと思いますが、違和感はありません。
サラの声は若手名女優の池脇千鶴(隠れガンダムファンか?)が演じていますが、セリフが時々ぎこちなくなるのが気になりました。アニメは実写で演技するのと勝手が違うのかもしれません。富野氏のインタビューによれば、それも意図なのだそうですが。
サイコガンダム対ガンダムMkIIの戦闘は、「ガンダムSEED」など今の、ガンダムがいっぱい出てくるガンダムシリーズの先駆に思えました。さすが元祖。
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A New Traslation 星を継ぐ者 |
「機動戦士Zガンダム」のTV版が放映されたのは1985年頃だったと思います。それから四半世紀経って、前作「機動戦士ガンダム」と同じく3部構成の映画となり、今回はその第1部です。TV版の1話から12話までくらいまでのエピソードを再構成しています。
それにしても今頃映画化というのは、バンダイがこれまで「Zガンダム」をたびたびTVゲーム化してきて上手く盛り上げた結果でしょうが、プラモを売らんがための陰謀、という気がしなくもありません。
「機動戦士ガンダム」と同様、今回の「Zガンダム」の絵も古いTV版と新しく描き起こされたカットの混合です。しかし今回は、「ガンダム」以上にTV版と新作カットの絵のギャップが目立ちました。新作カットをデジタルで描いたから、こんなに差が出たのでしょうか?
新しい絵は劇場でもちゃんと見れるクオリティになっていますが、TV版の絵は大画面にするとかなり雑に見えます。チラシには既存映像と新作の絵のマッチングをやったと書いてありましたが、とてもそんな風には見えません。
キャラクターの顔も、TV版の絵と新作カットでは少し違う感じで、TV版の方がキャラクターデザインの安彦良和氏の絵に近いように思えて、新作の絵はちょっと違和感があります。
しかし戦闘シーンの迫力やスピード感はやはり新作カットの方が上で、わりと新作カットが増える後半での、ギャプランやアッシマーといったモビルスーツ戦は見ものでしょう。シャアとアムロの再会シーンも新作のせいかきれいになっていて一番盛り上がり、感動的でした。
どうせなら作画にもっと時間をかけて、全編描き起こしにしてほしかったところです。一番人気の冨野版「ガンダム」なんだし、それくらい金と時間と気を使ってほしいぞ。
お話は、特に地球へ降りるまでの前半はかなりハイペースで進みます。カミーユがジェリドを殴るきっかけのシーンが無いし、カミーユの親の死やエマの脱走なんかのエピソードは駆け足といってよく、キャラの心理を考えると慌しすぎます。このへんはTVの再編集でなく、話を初めから練り直すべきだったのではないでしょうか。
またエウーゴとティターンズの関係など、映画には世界観に関する説明はロクにありません。なので初めて見る人は予備知識が必要でしょう。
今回の映画は、前作「機動戦士ガンダム」以上に不親切に作られている感じで、ファンで無い奴は見るな、て言ってるようにも思えます。
映画にはパプテスマ・シロッコが出てきますが、彼の名前は言われません。TV版でもこの時点では、彼が何者かということは分かりませんでしたが、名前くらいは呼ばれていたと思います。後半では重要なキャラクターになるのに、名前も言われないのはどういうことか?と思います。彼の名セリフ「落ちろ!蚊トンボ!」も無かったし…。
また1つか2つですが、セリフがぶつ切りになっているカットがありました。元のTV版からそうであっても、今のデジタル技術なら修正は十分可能でしょう。編集ちゃんやってんのかね。
声のキャストは大方、TV版と変わっていませんが、25年も経っていてほぼ同じキャスト、というのは凄いと思います。ただハヤトの声はTV版の鈴木清信氏ではありませんが、この人は亡くなったのかな?
音楽はTV版と同じ三枝成彰氏で、TV版のスコアをそのまま使っている感じですが、曲が流れるとやはり雰囲気が「Z」という感じがして、嬉しいところでした。
次回「恋人たち」では、新作カットが増えてくれる、てゆーかできれば全編新作画を願いたいなあ…。
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