日の光りが傾き出す。 オレンジを増したその輝きは次第に明るさを失い、赤く、 黒く色を変えていく。 光と共に影が姿を消し、闇が訪れたとき、夜が支配を開始する。 愚痴を零しながらも優雅な時を過ごす女。 忙しいとぼやきながらも満足な表情を浮かべる男。 愛の象徴に身を包む女と愛を形に表そうとする男。 それらはいつの間にか姿を消し、街は夜の主役たちを迎える。 愛を金で売ろうとする女と金で愛を買おうとする男。 愛なんてないと言いつつどこかでそれを求める男女。 今、隣の二人は交渉がまとまり、前の二人は言葉を交わす必要さえない。 その中を今日も羽ばたく。 「黒鳥」の異名の通り舞い踊る。 「黒鳥さんこんばんは」 「今日も綺麗ね」 掛けられる声に商売道具で答える。 それに対する歓声に悦に入りながら、獲物を探す。 すぐに捕まるようではつまらない。狙い定めて値踏みする。 そこに挑むような視線を感じた。突き刺さるような視線。 顔を向けると闇の中で光る獣の目を持った顔を見つける。 精悍な顔立ちは嫌いじゃない。 立っているだけで寄ってくる者に困らないだろうに、わざわざこの場に来る、 その態度も嫌いじゃない。 「気に入った」 見下した笑いを口の端に乗せ呟く。 どうやって落とし、遊び、捨てるか。思い描くと自然に笑みが零れる。 可憐な、しかし確かに毒牙を含む笑み。一度刺さると骨まで熱に浮かされる。 それこそ「黒鳥」の名の由来だった。 |
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「なんだ、簡単。」 男の寝顔を確認し、冷たい床へ足を下ろす。 静かに移動し、男の荷物を物色する。 紙幣やコインなら、あとで正当な方法で手に入れられる。 それなら、と手に取ったのは、街の外へ出ない黒鳥が出会ったことのない品々。 煌びやかな宝石。凝った細工の望遠鏡。小型化された写真機、そして沢山の写真。 始めてみるそれらを恐々手にする。 「興味津々?」 いきなり声を掛けられ、驚き、取り落とす。 「意外に鈍感だね。気がつかないで後をとられるなんて不覚じゃない?」 「乱暴する人は好きじゃない。」 強く握られた右手に目を向ける。 「知ってる?」 男は面白そうに言葉を切った。 期待しない展開に黒鳥は嫌そうに目をそらした。 「東の国では物を盗むと、その手を切り落とされるらしいよ。」 「ふーん。野蛮だね。」 「何で?もう二度と盗めないようにするんだから、理に適ってると思わない?」 何かを暗示するように掴んだ黒鳥の右手に力を込めていく。 「罰金でも取った方が近代的でいい。」 嫌な予感に男の意見を否定する。 「それにここは、どこぞの東の国じゃない。」 「それはそうだ。」 からかうように黒鳥をねめつける。 「でも、俺、東の文化好きなんだよね。」 「だから?」 「そもそも、そっちが悪いんだろ。人の物を盗っちゃいけないって言われなかった?」 「何か盗んだっけ?」 「盗もうとしただろ?可愛い顔して、なかなかやるね。オディールちゃん。」 「気持ちよくなって眠りこけてる方が悪いんじゃないの?」 黒鳥の簡単には自分の物にならないその態度が男を刺激し、 上にあげられたまま、強く握られ、色を失った黒鳥の右手が更に男の嗜虐心を煽った。 弱さと強さを併せ持った黒鳥の魅力に、ここでも男はやられたことになる。 自制心を失い、またも黒鳥を押し倒す。 両手を上へあげさせ、ベッドの端に括り付ける。 ナイフをかざし、黒鳥を見やる。 余裕の笑みを浮かべているかと想像したが、予想に反して顔を引きつらせていた。 その姿に燃え盛っていた男の気持ちに一瞬水が注した。 しかし、馬乗りになり、勢いづいた行動が止まる事は無かった。 右手首に一本、赤い線が浮かび上がる。 そして、そのまま、それはZの文字を作った。 さすがに切り落とすつもりなんかないんだからさ、そんな引きつらなくても。」 黒鳥に向けていった言葉だったが、聞かれないまま終わった。 身を切る痛さに黒鳥は気を失っていた。 「案外お姫様なんじゃん。色々修羅場を乗り越えてこその『黒鳥』かと思ったけど。」 一人呟き、男は部屋を出た。 |
2004.11.13 UP
Happy Birthday to TAKUYA!
とはいっても、中居さんJRAイメージキャラクター決定記念でできた話です。
でも、木村さんも喜んでるだろうという事で(笑)
どんなCMがいいか?って話し合っていたメールからできてきたお話です。
詳しくはこちらへどうぞ。
(thanks to norikoさん)
まだまだ、この話続きそうです。