12月28日木曜日。晴れ。


朝から吾郎がなんかやってる。
昨日は一日機嫌が悪かったけど、今日は鼻歌歌ってる。
機嫌がいいらしい。
風呂場で鼻歌ってことは、今日はデートか?
なんかいい匂いがする。

あ!!
これって・・・

しまった!!
こんなところでゆっくりしてる暇はない。
俺のシャンプーの匂いじゃん!

どっか隠れなきゃ。
ソファーの下・・・はすぐ見つかりそうだし。
カバンの中・・・は怒られるし。

あ!吾郎の部屋のベッドの中!
そうしよう。

気づかれないうちに移動、移動。
って、部屋にかぎかけてるのかよ!!
ドア、開かねぇじゃん!
マジで?
ちょっと待ってくれよ。
どこにしよう。

「ぴろた?どこ?」
って返事するわけないじゃん!
俺、シャンプー嫌いなんだよ。

「でておいで。お正月を迎える前に綺麗にしようね。」
なんか優しい声出しちゃって気味悪い。
出て行くかっつーの!

「ぴろた?あ、そこにいたんだ。」
げ・・・見つかったよ。
ちょっと来んなよ!来るなって!

「あ・・・そんなに毛を逆立てちゃって。もう。そんな事すると、ペットサロン連れて行くよ。あそこ、綺麗なトリマーさんいるんだよねぇ。」
それって。
「綺麗なお姉さんに可愛くしてもらおうか、ぴろた。」
それって、俺が一番苦手なやつじゃないの?!
だったら、吾郎にやられる方がマシなんだけど。
「どうする?ぴろた。」
じっと見つめられてるよ。あ〜あ。俺、弱み握られてる。
「いい子だね、ぴろた。ほら、こっちおいで。シャンプーしようね。」
なんか癪に障る。
けど・・・車に乗るのも嫌いだし。なんか箱みたいなのに入れられるのはもっと嫌いだし。
しょうがねえから、ついていくか。

あ〜でも、やっぱり苦手。
腕まくりして、やる気満々の吾郎も苦手。

「ちょっと、ちょっと待って。俺のタイミングで入るからさ。」
「何?早く入ってってば。」
「無理やり押すなっつーの!心の準備が必要なんだよ!」
「僕はシャンプー大好きなのに、どうしてぴろたは嫌いなのかな?」
「何?何かよくわからねえけど、今は吾郎の言ってる事なんて聞いてる場合じゃないんだよ。」
「ほら、気持ちいいでしょ?」
「うわ。顔にお湯かかった!体はいいけど、顔はやめろよ!」
「うるさいなー。ほら、いい子にしてて。」
「だから、やだって言ってるじゃん!しかも、絶対吾郎キレだすんだもん。なんで俺が精一杯我慢してやってるのに、キレるんだよ。」
「ぴろた!!動かないで!」
「ひぃ。なんかにゅるにゅるして気持ち悪い!」
「ほーら。シャンプー気持ちいいでしょ?だんだんぴろたは気持ちよくなーる。」
「なんかマシになってきた。」
「いい子だねぇ。」
「あ!尻尾触るなよ!気持ち悪いだろ!」
「はいはい。おとなしくしてて。」
「・・・・・・」
「ほら。最初からおとなしくしてればいいのに、素直じゃないな。」
「そういう問題じゃないと思う。」
「こんな気持ちよさそうにして、やっぱり僕、トリミングうまいのかな?」
「確かに気持ちいいけどさ。」
「よかったねぇ。ぴろた、気持ちよくて。」
「もういいよ。早く終わらせろよ。」

あ!来たよ!なんか水がいっぱい出るやつ!
これのせいで、顔に水がかかって嫌なんだよ!
ちょっと!かかるって!やめろよ!!
ちょっと丁寧にしろよ!!
雑なんだよ、吾郎は。

「あと、ちょっとだから、静かにして。」
「だから、顔に水が!!」
「・・・・・・」
「うわ!!かかった!なんか目に痛いのも入ってきた!!やだぁ!もう、やだぁ!」
「あ!!ちょっとぴろた!!引っかいたでしょ?今!」
「しらねーよ。もう終わりだろ?早くドア開けろよ!」
「こら!!ほら、血が出てきた。」
「吾郎が顔に水かけるからだろ!!」
「ダメ!!」
「わかったよ。わかったって。だから早く出してくれって。」
「いい?爪で引っかいちゃダメ!分かった?」
「分かった。分かったってば。」
「ちょっとまだシャンプー残ってるからじっとしてて。」
「なんでもいいから早くしてくれ。」
「はい。おしまい。」

あ〜もう、力、入りまくって体が痛い。さっさとソファーで寝ようっと。
って、なんでドア開けてくれないわけ?

「拭くから待っててね、ぴろた。じっとしてるんだよ。」

タオルでゴシゴシが待ってたよ。
これが終わって、あと変な風みたいのが終わらないとダメなんだった。
これで、ぶるぶるしたら、すっごい怒るんだよな。
もう疲れたからじっとしてようっと。

やっと風呂場脱出。
これこれ。吾郎がいつも使ってる風の機械登場。
吾郎さ、座ってくれないかな?
俺、それ、膝の上でやってもらうのが好きなんだけど。
向こうの部屋のさ。ソファーのところでやろうよ。なぁ。

「何?ぴろた?リビングでやるの?ま、いいけど。」
「そうそう。そこでやろうぜ。」
「あ。ちょっと乗ってこないでよ。」
「え?なんでだよ。」
「タオル引くから待ってて。」
「早くしろよ。」
「はい。どうぞ。」

やっべぇ。気持ちよくなってきた。寝そう。
なんか吾郎の指が気持ちいいんだもん。
あったかいし、いいにおいするし。
ま、いっか。
もう寝る。おやすみ。



2006.12.26UP
猫のシャンプーについては・・・
すべて聖奈の想像です。
ドライヤーなんて・・・するよね、きっと。