12月29日木曜日。曇り。

朝から吾郎がなんかやってる。
今日の吾郎はおめかし吾郎だ。さっきから鏡の前を行ったり来たりしてる。
別に変じゃないと思うんだけど、まだ暫く続けるつもりらしい。

「あ、ぴろた。ちょっと待ってね」
って俺、なんも待ってないけど? ご飯ならさっき食べたし。吾郎、ぼけてんのか?大丈夫か?

「何じっと見てるの?僕、カッコイイ?」
うわ!なんでそういう事、平気で言うんだ?聞いてられないっつーの。
この間、貰ったので遊ぼうっと。
なんか吾郎がくれたけど、いろんな所に動いて面白いんだよな、これ。

「ぴろた、本当にそのボール気に入ってくれたんだね。よかった」
うん。まぁな。
「でも、今日はもう片付けてね」
えぇ〜!なんでだよ。しかも、吾郎、俺が嫌いな箱みたいなの持ってる。
これは捕まるわけには行かない!

「あ!ぴろた!もう!どうしてキャリーバックが嫌いなの?HERMESなのに」
そんなのに入れられてたまるかっつーの! なんか顔だけ出して運ばれるなんて、カッコ悪いじゃん!絶対やだね。
しかも、 それで外歩いてると、人が超見るんだもん!恥ずかしいっつーの!

「もう!せっかく連れていこうと思ったのに。置いてっちゃうよ」
一人で行けよな。俺は家が好きなんだっつーの。
「よかった。早めに準備してて。」
吾郎はいっつも準備に時間がかかるからな。たまには早めに行ったらいいんじゃねーの?


って、俺のカリカリの音だ!


でも、これ絶対罠だよな。これに釣られて出て行ったら、箱に入れられるんだ。
その手には乗らないぞ。

「あ、もしもし?うん。ぴろたに逃げられちゃって。うん、大丈夫。連れてくか ら。」
誰と話してるんだよ。時々、吾郎って一人で話してるんだよな。気持ちわりぃ。

じゃなくて、カリカリだよカリカリ。俺、それ好きなんだよね。
でも、吾郎、あんまりくんねぇんだよ。
欲しいなぁ。
でも箱だしなぁ。

「ぴろた、カリカリいらないの?」
いるよ。いるに決まってるだろ。

「おいで。ぴろた。そんなドアの影から見てないで。早くしないと食べちゃうよ 」

嘘だろ?だっていっつも吾郎はそれ食べないじゃん!
でも、口開けてる。
食べるの?
嘘だろ?
マジ?

「あ〜ん」
「それ俺の!!」





捕まった


「捕まえた♪えへ」

がーん

「ぴろたもまだまだ子供だね」

ショック。
吾郎にしてやられた。

「はい。カリカリあげるからおとなしくしててね」

凹むよ、これ。 でも車みたいだし、まだマシ。
あ〜あ。カリカリくれても嬉しくないし。

「もしもし?今から行くよ」
また吾郎一人で話してる。
今日は相槌なんて打ってやらないんだから。








どっか着いたけど、どこだろう?
びょーいんじゃないからいいけどさ。

「こんにちは。お邪魔します。」
「いらっしゃい、吾郎さん。こんにちは、ぴろた君」

誰だよ。吾郎の友達?

「ちゃんとご挨拶して。ぴろた」
「よく分からないけど、吾郎をよろしく」
「可愛いね」
「綺麗でしょう?」
「うん」

「さ、入って入って」
「うん。ありがとう」

「あ…こたつ。やっぱり冬はこたつだよね」
「うん。気持ちいいよ」
「ほら、ぴろたも、もう出ていいよ」

え…俺、いい。

「人見知りで場所見知りなんだよね」
「でも本当可愛いよ。いいなぁ、小猫」
「うん。楽しいよ。」
「そっかぁ。僕も飼おうかな。」

なんか楽しそうだけど、俺、ここでいい。
って、わぁ!
だから、いきなり抱くなってば!!
あ、ちょっと待って吾郎。
知らない奴に渡すなよ〜!!
大丈夫かよ、こいつ。
そんな恐々触るなよ。俺、噛んだりしないし。
なんだよ、 こっちがビビるじゃん。
吾郎、助けて〜。

「ぴろた君こんにちは」
「誰なんだよ」
「今日はゆっくりしていってね」
「なんか、ぴろた強張ってるけど大丈夫?」
「笑ってる場合じゃないだろ、吾郎 。助けろよ」
「僕、嫌われちゃったのかな」
「嫌じゃないけど、どうすればいいのか分からないし。」
「おいで、ぴろた」

手を広げてる吾郎の所に行くのって癪に障る。
やーだよ。
って、この家なんか寒い。暖房入ってないんじゃないの?


「ねぇ、暖房入れてよ」
「ん?何?ぴろた君」
「暖房。ピッてしてよ」
「ぴろた寒いんでしょう?」
「早く〜」
「だから、こっちおいでって言ってるのに。ほら」

だーかーらー。どうしていつもいきなり抱くんだよ!
もう!

ん?

なんかあったかい

「気持ちいいでしょ?よかったね」

なんだ?これ。
吾郎ん家にはないけど…

「あ。調べてる」
「初めてのこたつだからね。」
「気に入るかな?」
「気に入るよ。猫だもん」

なんか笑ってるのが聞こえる。
俺は気持ちいいし、吾郎は楽しそうだし、こいつ、いい奴じゃん。
また来てもいいぞ、ここ。


てゆーか、よく喋るな。
まだ帰らないの?
暗くして何してるんだろう?
大きい音もするけど。


「なかなかいい作品だったね。」
「うん、よかったね。映画館で見れればもっとよかったけど。」
「そうだね。でも、家でゆっくり見るのもなかなかよかったよ。」
「うん。」
「うん。」
「お茶にしようか、吾郎さん。」
「いいねぇ。」
「僕、ぴろた君にも用意したんだよ。」
「本当?わざわざありがとう。」

「ぴろた君」
なんだよ。俺、もう飽きちゃった。

「おやつにしよう」
あ。吾郎が美味しそうなの持ってる。 俺も欲しい。
「それ美味しいんだろ?俺にもくれよ。」
「ぴろた君はこっちだよ」
「なんだよ」
「ほら、ぴろた貰っておいで」

いつものカリカリか?なんか形が違うけど。
なんだよ、これ。

「どうぞ、ぴろた君」
「召し上がれ、ぴろた」

おぅ。
なんだよ、これ。
なんかうまい!
なんだ、なんだ?

「気に入ったみたいだね」
「そうだね」
「ねぇ、もうちょっとくれよ」
「何?ぴろた君」
「もっと食べたいんだけど」
「もっと欲しいの?」
「あげていいの?吾郎さん」
「うん。ありがとう。よかったね。ぴろた」

これ、美味い! 吾郎もいつもくれればいいのに。
はぁ〜あったかいし、美味いし、いい気分。吾郎達の声聞いてたら眠くなってきちゃった。


「あ、ゴロゴロ言ってる。甘えてるの?」
「きっと、眠くなっちゃったんだよ。おいで、ぴろた。」

だから、手、広げてる吾郎のところに行くの癪に障るの!
でも、眠いしな。
もう、いいや。
行っちゃおうっと。





2006.12.29UP
どんどんbaby化していっているぴろたです。
猫の場合、顔だけ出して移動って事はないのでしょうか?
最近、電車の中で、わんこが顔だけ出してるのが、
可愛いけど、何処か違和感だったので書いてみました。
ぴろたは「箱」といっていますが・・・。
どうでもいいのですが、吾郎さんからもらう「カリカリ」はビスケットのような、
ドライフードのような甘くないもの、お友達(なんとなく名前は出しませんでした)
からもらったのはミルクボーロのようなちょっと甘いものを想像してかいてます。