circlet 〜the one ring〜
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楽屋で暇を持て余し、中居はぼんやりと指輪を眺めていた。 決して気に入らないわけではない。どちらかというと気に入っている。 それでも中居の視線は次第に険しくなっていった。 「もうちょっといいのにしとくんだったかな」 敢えて安価な、輝きのない物にした。 いつか貰う高価で煌めく指輪の為に。 でも、それを手にする事はない。もうその事には気付いていた。 「いっそ外してみようかな」 (そうしたら木村は何も聞かずに指輪をくれるかな) 言外にそんな想いを載せて呟く。 でも、そんな事をした所でお互いに辛いだけなのは、分かっていた。 「ただの友達から貰ったただの指輪」にはどうしたってならないのだから。 なんの意味も持たない指輪にはどうしたってならないのだから。 中居は顔を歪めると手近にあった煙草をドアに投げ付けた。 「中居さん、どうかしましたか?そろそろスタンバイお願いします」 「あ、はい」 スタッフの声が掛かり、中居はもう一度、憎々しげに指輪を睨み、部屋を後にした。 共演者との付き合いは、もう三年を越え、格式張った挨拶は必要ない。 無意識に指輪を弄りながらセット裏での会話を弾ませる。 お客さんを前にしたトークでも無駄な気負いはなく、何気なく指輪に手を伸ばし、 触ろうとした。 えっ?! 思わず自分の指先を見つめる。 無かった。 指輪が無かった。さっきまでここにあった筈なのに。 周りを見渡してみても、どこにもそれは無かった。 忌ま忌ましい程に、大きさの割に存在感を示していたそれが、今すっかり消えていた。 |
2005.2.17UP
「circlet-サークレット-」指輪と言う意味です。
中居さんがいつもつけてる指輪。
たまーに、外す時あるよね。
と思って、よく見始めたら、全く不規則に付けてたり取ってたり・・・。
そこから生まれたお話です。
タイトルは迷ったのですが、
聞きなじみがなくて不思議な言葉だった上に、
「secret-秘密-」や「sacred-神聖な-」
にも発音が似てて面白いかな、と思って決めました。
妄想メールに付き合ってくれたぶんちゃん。
アイディアに手助けをしてくれた後輩。
どうもありがとうです。
(ちなみに、もうちょっと続きますので悪しからず)