circlet 〜the one ring〜(2)
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朝、目覚めると、いつもの場所に指輪はあった。 一瞬躊躇った自分を笑い飛ばして、指に嵌める。 木村と一緒になる今日、それを嵌めないわけにはいかなかった。 指輪がはまっている事を確認して家を出、はまっている事を確認して楽屋に入り、楽屋から出た。 収録が始まった時にも確かに中指には確かな存在があった。 ゲストとのトークに集中していくうちに自然と指輪の事は気にならなくなった。 楽しく話し、おいしく食べてもらう。何も変わらない、普段と同じ収録が終わろうとしていた。 「ありがとうございました〜」 ゲストの名を呼び、拍手をする。後は改めて感謝を伝え、それで終わる筈だった。 なのに、また中指には何もはまっていなかった。 「なんなんだよ。」 一気に心は沈んでも、笑顔を消す事はしなかった。 ゲストを見送り、メンバーを振り返る。誰も何も気付いていなかった。 木村も他愛のない話に笑っている。 中指を隠してその輪に入って行った中居には誰も気付かなかった。 まだ、長い収録が中居を待っていた。 衣装替えの途中、ふさぎ込んだ様子に声がかかった。 「中居さん、どうかしました?あ、指輪!」 「また、なくなった」 「またですか?」 「声がでかいよ」 驚いて大声を出すマネージャーに顔をしかめる。 思わず強く言ったのは木村に聞かれたくなかったから。 聞こえる場所にいる筈がないとわかっていても、つい神経質になった。 あんな話をした後で指輪を外していたら、絶対に疑われる。 まるで、指輪をくれと言っているような物だ。 貰っても付けないと言った自分の言葉は嘘だったのだと思われても仕方がない。 「すみません」 「ずっとあったのに」 「中居さん痩せたから指から抜けた、とか」 「んー。」 適当に返事をしながら、中居の意識は別の所に向かっていた。 指輪がない事に木村は気付くだろうか。 マネージャーが気付いたのだから、木村も気付いてしまうかもしれない。 不自然に中指を隠し、スタジオへと向かった。 ぎゅっと握られたこぶし、元気のない顔。いつもとは違う中居を木村は見ていた。 元々、カメラが回っていない所では、テンションは高い方ではない。 ゲストや気を遣う相手がいないなら、尚更だ。 「リーダー、今日お疲れだね」 メンバーもそんな会話を交わしている。 「ねえ?木村君」 「ああ」 問われて相槌をうってはみたものの、ただ疲れているだけのようには見えなかった。 声をかけようとして、それが出来ないまま収録が始まった。 木村は歌う中居を盗み見ていた。 横顔を、後ろ姿を、降ろされた前髪を、そして差し出された指先を。 |
2006.2.28UP