―今週から始まりました。新番組『二人の生活』この番組はファンの方々の提供
によりお送りします。
記念すべき第一回は『お引越の巻』二人が新居に引っ越して来る様子をお楽しみ下さい。―


真新しい部屋に二人がやってきた。大きい箱を軽々持つ、艶ツヤの髪の持ち主、
木村と、一回り小さな箱からさらさらな髪を覗かせている中居。
日差しが降り注ぐ部屋に揃って眩しそうに顔をしかめた後、また揃って目を輝か
せた。

木:「おっ、なかなか良くない?」
中:「俺、こっち〜!こっちの部屋の方が、ちょっと広い!」
木:「じゃあ、俺こっち〜!こっちの方が窓がでかい〜!」

いきなりお互いの部屋を決めたらしい二人は、そう広くはない新居を見て回る。

中居はちょこちょこと走り回り、各部屋に足を踏み入れては、

中:「おっ!風呂、広い!」
中:「あっ!トイレが自動で流れる!」

と、いちいち歓声を上げている。

木:「このキッチン使いやすそうだなぁ。収納スペースがいっぱいあるし、シン
クも広い」

と、細かく見て回るのは木村。

ばらばらなように見えても、
「荷物運び入れますよ」
の声に
「お願いしま〜す」
と答えたのは同時だった。 

二人が並んで同じ方向を見て立っている。天然の光を浴びて、同じ場所を指差し、
何かを語り合う。それだけで、何も演出がいらない位かっこいい。が、声を拾
ってみるとそんなにかっこよくもなかった。

木:「ダイニングテーブルはここで決まりだろ?」
中:「テレビは?テレビ。つーか、こたつは?」
木:「こたつは中居の部屋に置けよ」
中:「え〜!やだよ!だって木村知ってる?この家、テレビ一台しかないんだぜ。
   こたつに入って野球見れないなんて、俺、死んじゃう」
木:「それは冬になってから考えればいいだろう。これからはいらないんだから」
中:「分かってないな。これから『寒の戻り』って奴が来るんだぜ。そんな時に
   こたつがなくて、きっと俺、風邪引いちゃうな。どうしよう!風邪こじらせてレ
   ギュラーに穴開けちゃったら。ねぇ、どうしよう?木村」

木村の袖を引っ張り、下から見上げるその瞳は楽しそうに笑っている。それでも、
たまにしか仕事をしないタレントさんはドギマギしたりもするけれど…

木:「大丈夫。寒かったら俺が抱きしめてやるから。」

木村には通用しなかった。

中:「お、お前テレビの前で変な事言うなよ」

逆に中居の方が明らかに同様した。

木:「って事で、こたつは却下で、ここにテレビで、その正面にソファ。G+は入
   るからそんなにしょげるなって」

少し下にある肩を木村が叩いた所で今回の勝敗は決まったらしい。 

荷物は次々に運び込まれる。自身が宣伝をしているパソコンにプリンター。沢山
の本とCD。実際に寝る事はないだろうが、ベットが二つ。二人の生活空間を演出
する為にできるだけ「ありそう」を目指す。 

中:「一応、一個持って来たけど、この部屋でも撮る事あるのかな?」

そういう中居が持っているのは、お馴染みの水族館のクッション。

木:「眠かったら寝ていいんじゃねえ?この箱、洋服だ。すげー!」
中:「うわっ、掃除機まで来た。どうしよう?俺、本当にここで木村と暮らすんだ」

わざとらしく口に手を添える。 

木:「食器もあるし、下着まであるもんな。こっちの方が近かったら、こっちに
   帰って来ちゃいそう」

木村はまんざらでもなさそうだ。

中:「泊まりで撮影あったらどうする?」

小刻みに足踏みするのは、無理矢理テンションを上げている証拠。中居は素を見
せるのを嫌がる。

中:「これ、収納とか始めちゃうの?それで番組になるの?」

テレビっぽくしようとスタッフに語り掛けたりもするが、それはNGだ。返事はス
タッフの代わりに木村にして貰う。 

木:「いいんじゃねぇ?片付いてないの嫌だしな。でも、まず家具の配置終わら
   せちゃおうよ」
中:「ベットの場所と木村のパソコン、俺の本棚。これはそれぞれの部屋で。コ
   ンポはリビングだよな。」

そう言って取り掛かった二人。動かすのは、まだ残って貰っていた業者さんにお
願いする。

木:「これじゃ北枕だよ」
中:「ドア開けてすぐにベットは嫌だ。寝顔見られそう」
木:「本棚置く場所も考えてから決めろよ」


木:「モジュラー口どこにあるんだろう?」
中:「……」
木:「あ、あった。でも、これってリビングに置いた方が中居も使い易くない?」
中:「いい。俺、一人じゃ使わないから。」


木:「コンポは」
木・中:「「ここだな」」


中:「はぁ〜。やっと終了。この後、洋服とか本、片付けるかと思うとやんなる。」
木:「一旦休憩!」
中:「賛成!ピザか蕎麦取ろうぜ」
木:「だな。さすがに作る気ないわ」
中:「どっち?」
木・中:「「蕎麦」」

満場一致で決まると、スタッフが差し出した「お品書き」を眺める。注文する物
が決まると木村が電話を取る。

木:「ねぇ、ここの住所は?電話番号も聞かれるっけ?っていうか、この家、表
   札どうなってるの?」

それまで、床に寝転んでいた中居が無言で玄関に走る。 

中:「なんも入ってなかった。よかったぁ。NAKAI&KIMURAとか書いてあるかと思った」
木:「え、じゃあどうすんの?とりあえず部屋番号でいっか。頼むぞ」
中:「ん」


―表札を考えて下さい― 


中:「そういうのって決めていいの?なんか住民票とかないの?」


―大丈夫です―
 

木:「中村?木居?」
中:「やだぁ」
木:「じゃあ二人の連名だな」
中:「えぇ〜」
木:「じゃあ、どうすんだよ。」
中:「……。」
木:「N&Kとかでいいじゃん。」
中:「えぇ〜」
木:「そんな事言ってると、hiro&takuとかにされちゃうぞ!」
中:「じゃあ、連名でいい。」

中居がぶすっと呟いたところで決まった。

木:「じゃあ、連絡します。」


無事に注文が終り、品物が届き、二人は無言で蕎麦をすすり始めた。
そんな物凄く普通で、物凄く豪華な映像が提供バックが流れる。


―第一回『二人の生活〜お引越しの巻〜』楽しんでいただけたでしょうか。
 この番組では、感想、リクエストのお便りをお待ちしております。
 それでは、第二回目放送日まで、さようなら―