Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [1]   タンビエットの唄
2008年2月10日 ソワレ
東京芸術劇場(東京)
フェイ:安寿ミラ ティエン:土居祐子
トアン:畠中洋 ハイン:吉野圭吾
ミン:宮川浩 ビン:駒田一
ゴク:戸井勝海
 
本日は、上記の出演者プラスアンサンブルも8人で、少数精鋭の舞台でした。アンサンブルの人々は今回はじめてみる人々でしたので結構若手なのかな?それにしても、その他の人々、豪華でしょう。実力派ばっかりです。宮川さんと戸井さんでるし、土居祐子さん好きだしとか、よく考えずにとったチケットでしたが、無駄なキャスト、下手なキャストが一人もいないというかなり稀有な舞台であったと思います。お友達は、戦争で暗い話だから嫌だわといっしょにいってくれませんでした。う〜ん、たしかに。よき舞台でしたが、これを2度観ようとは思いません。今回は、商業演劇としてのミュージカルということも考えさせられました。このミュージカル、難しい作品だと思います。観るほうでなくて、作るほうが。なんで、今回の主演者豪華なんだろうと思うと、このくらい力と華のある人々でないと、この舞台は成り立たないのです。多分、ひとりでも、歌えない演じられない人がまじってたら、すごくしらけてしまうし、伝わらないだろうなと思いました。
 
この舞台の演出は、よくできているなと思うところと、何だこれはというところが入り混じっていまた。この作品、佳作だと思うのですけど、佳作とは思えないほど変なところもあるのです。製作側の感性の問題かな。変なところは、ダンス。これ、こんな重いテーマながら、ダンスが妙に多いのです。なんと、戸井さんも踊ります。はじめてみた。何も戸井さんが踊ることなかったのにと思います。戸井さんのダンスがだめだったのでなく、その他も無駄にダンスが多く、さらにいうとアンサンブルの方々健闘していたものの、ダンスのうまい人がいなかった。ダンスはなくてもよかったし、ないほうがよかったと思いました。あと、これは、ねたばれになりますが、最後のつじつまがあってないが、すごい感動の途中で、あれっと気づいてちょっとひいてしまいました。これ、書いていいのかな?ティエンの娘がフェイと出会うところで、’母が歌っていた歌です’というんだけど、娘が助けられたときは、もうティエンは死んでいて、娘は赤ちゃんだったので、この歌を意識して聞いてはないはずなんだけど。。。と、これは、最後の最後に水を差してくれたのでした。
 
が、最初にだめなとこだけまとめて書きました。あとはとてもよかったです。何よりも、この舞台を支えているのは、土居祐子さんのディーバの歌声です。もう天使の声どころじゃありません、女神、ディーバです。この方の歌を聞いただけで、素直な気持ちで涙がこぼれてきました。’マノン’で壊れてしまったのではないかと思われた感性が生きていたことを今日帰国してから、初めて実感できました。土居さん、どうしてもっとメジャーなところに出てこないんでしょう。この方の、フォンティーヌ、クリスティーン、キム、エマが聞いてみたいです。こんなに歌える人が日本にもいるんですね〜。前にも舞台は拝見しましたが、今回ほどこの方の声質と役があっていたことはなかったかも。悲しみの中に、光輝くような希望を抱いた声なのです。これは、再演だそうですが、再々演しても、この方以外には考えられないでしょうね、この役は。こんなに若い年齢の役は最後でしょうとおっしゃっていましたが、とんでもないという感じです。好きです、土居祐子さん。
 
今回のお席は、8列目のど真ん中。とてもよいお席でした。これは、畠中さんの事務所が用意してくれました。この直前に’蜘蛛女のキス’のチケ取りでえらく苦労したので、とにかく先行、先行と思ってインターネットでさがしたら、畠中さんの事務所が最初にヒットして、ファンでもないのにというか、この方観たこともないのに、申し込んだのでした。ありがとう、畠中さん。この方は、濃いですね。演技が。が、いやな濃さではありません。最初、大げさだな〜とか思っていたのですけど、この大げさな仕草ひとつで、場の雰囲気を変えちゃうのでした。歌も上手。今度は、’ルドルフ’でお目にかかれるようで楽しみです。
 
駒田さんをティナルディエ以外で観たのは初めてです。上手い人は何やっても上手いです。笑いとってくるかなと思ったらそんなことはなく、夢におしつぶされた息子と夢の中にだけ生きた父親の二役を演じていました。駒田さんとは関係ないけど、弟役をやったアンサンブルの人もよかったです。アンサンブルなのにソロあったし。
 
宮川さんの役は、一番人間的で、いやな人の役なんですけど、この方がやると嫌なやつじゃなく、人間の弱さの部分を感じるのですね。ベトナム戦争の地獄の中で、それが終わったあとに何も好転しなかった現実の中で、こうして生きていかなければ、立っていられないんだろうなという切なさがあります。今回も聴かせてくれましたよ。詩人の役ですしね。
 
戸井さんは、ちょっとまとまりすぎて、あ〜ありがちでした。素敵なんですけどね。プログラムの写真みたら、かっこよかったのでもっとワイルドな役かと思っていたのですけど。お坊様になってさとっちゃうんですよ。これは、戸井さんでなくてもよい役なのにね〜と思ったけど、ここが戸井さんなのがぜいたくかなとも思ったりして。
 
今日のこの日まで、すっかり出演することを忘れていたけど、吉野圭吾君も出ていたのでした。今回、一番、いい役は吉野君でしょう。衛生兵で、お医者さんを目指していたけれど、ティエンの娘を救うために逃亡したために、逃亡生活の果て逮捕されてしまい、今はチンピラに落ちている役。後半で、畠中さんと対峙して歌う場面は圧巻でした。これをマチネ、ソワレでやっているのだろうかというほどの力の入れようで、火花が散るような迫力でした。
 
忘れてました。安寿ミラさんは、美しいけど平凡でした。歌を歌うと土居さんがすごすぎて、平凡に聞こえてしまったのはかわいそうでした。
 
どの場面がどうといえないほどに、どの場面もグレードが高く、ひとえに出演者の方々の力量のたまものだと思います。あと、現在と過去が生の舞台ながら、少しも不自然さを感じさせず展開していくところは見事でした。しかしながら、これは、リピートしたい舞台ではなく、誰にでもうける舞台ではなく、商業演劇というのは難しいのだなと思いました。日本のミュージカルは、レベルは低くはないのだけれどね。。。。
 
追記
このレビューをお読みいただいた方から、ティエンの娘が唄を知っていたところのくだりについて、ご指摘がありました。
 
http://blogs.yahoo.co.jp/pourpasseletemps/52668565.html
 
ありがとうございました。
update:
2008/02/11



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