木村拓哉。 クラスメートその1。 特に仲良くも無い。 好きか嫌いかも分からない。 そんな存在のはずだった。 できればそのままでいて欲しかった。 こんなに近くに来ないで欲しかった。 ・ ・ ・ なのに。 |
夏服に変わる前の学校。時折涼しい風がカーテンを揺らして入ってきていた。 「中居〜」 「うん?」 「悪い!今日掃除当番抜けていい?」 「マジで?」 「明日お前の分変わるからさ。頼む!」 「しょうがねえなぁ。どうせ、この後部活だし、いいよ。」 「サンキュー!また明日!」 こんな会話の後、音楽室に残されたのは俺と木村の2人きりだった。 「ったく、しょうがねえよなぁ。あいつの分、俺がやるからさ、木村適当で帰っていいよ。」 「うん、じゃあ。」 そういいつつ、木村はなかなか帰ろうとしなかった。 「帰らないのか?」 「ん?うん。・・・あのさ、お前さ、疲れない?」 これが、初めて交わした会話だった。 唐突に言ってきた「疲れない?」という言葉。 始めて聞いたかのように新鮮だったのを覚えている。そして、何か違和感を感じた事を。 「そうだよ。この後部活なのにさ。掃除まで押し付けられてさー。」 適当にごまかした。ちょっと不機嫌そうな顔を作って。 「だよな。」 まるで納得していない顔のまま木村は答え、しかし、それ以上はなにも言わなかった。 |
他の奴とは違う。
近くで見る木村の笑顔。 |
2004.5.24UP