1月25日木曜日。曇り。
吾郎が出かける準備をしてる。
「ぴろた〜、おいで〜」
なんだよ、俺、今遊んでるんだけど。
「どこにいるの?」
邪魔するなよぉ。
「ぴろた?あ!蕾落としちゃダメでしょう。」
あ〜あ。邪魔されたよ。
「もう!せっかく綺麗に咲いてくれてるのに。いたずらしちゃダメでしょう」
赤いの集めてたのに。
「お出かけするからキャリーバッグの中、入ってね」
出かけるのか?ともだちの所か?それともママの所?
あ…
ここ…
びょーいん…
げっ…
しかも、俺、さっき変な紐つけられたんだ。逃げられないじゃん。
やだ!やだ!やだ!
騙したなぁ、吾郎!!
「ぴろたコロコロあげるから静かにしてて。」
やだ!やだ!!
あ!
え?
最悪!!
紐が体に絡まった!!
「ちょっとぉ!吾郎!!」
「はい、はい。」
「稲垣ぴろた君」
「はぁい」
「ちょっと!吾郎!待てってば!」
「こんにちは」
「こんにちは」
「今日は予防接種でしたね」
「はい。お願いします。でも、今、なんか一人でパニック起こしてて」
「あらら。とりあえずバッグから出して貰っていいですか?」
「はい。ほら、ぴろた静かにして。」
「こんにちは。ぴろた君。相変わらず綺麗な毛並みだね。」
「触るな〜!」
「ぴろた。」
「ちょっと押さえて貰っていいですか?」
「あ、はい。ほら、ぴろたすぐ終わるからねぇ」
「やだ〜!触るなって言ってんだろ?何すんだよ〜!やめろ〜!」
「はい、おしまい」
「終わったよ、ぴろた」
「……。痛い〜!!」
「はいはい。偉かったね」
「他に気になる所はありますか?」
「いえ。至って元気です。」
「みたいですね。じゃあ、また何かあったら来て下さい」
「はい。ありがとうございます」
「ぴろた、お疲れ様。にしても、あんなに騒がなくても…。痛くなかったでしょう?」
「あ〜もう、やだやだ!あんな箱に大人しく入ったのが間違いだった。人に触られるの、嫌いだって言ってんじゃん!」
「でさ…ぴろた。もう一カ所行きたい所があるんだけど、付き合ってくれる?」
「早く帰ろうぜ」
「ハーブティーも入浴剤も切れちゃったんだよね。あ…あそこでぴろたのカリカリとコロコロも買ってあげるよ」
「もう帰る!」
もう!何、寄り道してるんだよぉ!!
あ!!
この匂い!!
やばい!
なんなんだよ、今日。やな事ばっか??
「ぴろた、どうしたの?」
やだ!やだ!!
「ぴろた?いつものバスソルトの香りでしょう?」
あ…なんだ。これ、吾郎のお風呂の匂いじゃん。
俺のかと思った。焦った…。
もう!紛らわしい事するなよな。
「もうちょっと静かにしててね。」
あ…何か食べてる。何、一人で食べてんだよ!
「う〜ん。こっちも美味しいねぇ。」
「今の季節にお勧めですよ。あったまりますし、お肌にもいいので。」
「どうしても乾燥するもんね」
「潤いなら、こちらのハーブティーもいかがですか?」
なぁにお姉さんと話しこんでるんだよ!
「俺にもくれ」
「ぴろた?これは人間用だからダメだよ。」
「あ。猫ちゃんですか?」
「そうなんです。もう帰りたいらしくて。じゃあ、これとこれ、下さい。」
「ぴろた、お待たせ」
「もう帰るんだろうな?」
「ほら、出ていいよ」
「何?どこ?ここ」
「カリカリとコロコロどれがいいの?」
わ!
俺のカリカリがいっぱい!コロコロもある!
マジで?
どーしよう?
どれでもいいの?
「試されますか?」
「いいんですか?」
「どうぞ」
「ぴろた、よかったね。食べていいよ」
「マジで?」
「召し上がれ」
これ、いつものと違う!
あ、これ、美味しい!
こっちも!
って、俺、興奮しすぎだよ。
結局、食べ物につられてるし。
「どれがよかった?」
「これとこれがいい!」
「これとこれ?」
「そうそう」
「じゃあ、これお願いします」
びょーいん我慢した甲斐があった。
「これ、可愛いですね」
吾郎、またお姉さんと話してるよ。
「よかったら合わせてみて下さい。」
「はぁい。ぴろた、ちょっと来て」
呼んでんの?
「どう?可愛くない?」
なんだ、これ。
「これ着たらテディベアになれるよ。ちょっと前に来たらサンタクロースとかあったのかな?残念だな」
「そうですね…。でも、こちらとか、バレンタイン用のお洋服で可愛いですよ。」
「リボンがハートのモチーフになってるんですね」
ちょっとぉ!俺、こんなのいらないぞ!
「こっちはクマで、こっちはウサギだ♪」
そんなの、女に着せろよぉ!
「ぴろた、どっちがいい?着せてみていいですか?」
「どうぞ。サイズも出しますので言って下さい。」
ちょっとぉ!
もう…勝手にしてくれ。
「どっちがいいかな?」
もうなんでもいいし。
「ピンクよりも赤が映えるよね?これにしようっと」
マジで買うの?
俺、着るの?
「帰るからキャリーバッグに入ってね」
「やっと帰るのか」
「ただいまぁ。ぴろたもお疲れ様。」
なんか変なの着せられないように、どっか行っちゃおっと。
あ…
「ちょっと待って」
紐…ついたまま。
「写真撮ってあげるから、これ着てね。」
・・・・・・。
もうなんでもいいや。好きにしてくれ。
「ねぇねぇ、うちの猫、美人でしょう?」
「ん?うわっ!マジ美形じゃん!」
「やっぱり飼い主に似るのかな?」
「なんで今まで見せてくれなかったんだよ!」
「あれ?惚れちゃった?一応、男の子なんだけどね」
「マジで?!こんなに綺麗なのに?」
「うん。オスなの。」
「へぇ〜。でも、今度連れてこいよ。てゆーか、俺、お前んち行っていい?」
「ん?うん。いいよ。歓迎するよ。」
「ぴろた、今度また僕のお友達が来るけど、よろしくね」
2007.2.14UP
お待たせしました誰かさん登場です。