2月14日水曜日。晴れ。

最近、吾郎が家にいない。うるさくなくていい。
けど、つまらない。自分ばっかり出掛けてさ!
だから、帰って来ても遊んでなんかやらないんだ。



「ぴろた、ただいま」
「……」
「ただいまってば」
「……」
「ニャーくらい言ってよ。反抗期かな?」

今日の吾郎は甘ったるい。袋もいっぱい持ってる。何か気になる。けど、眠い。
てゆーか、俺、もう寝てたし。

しーらない。

「もう可愛くないなぁ」



朝になっても、うちの中はまだ甘ったるい。きっと吾郎が原因だ。文句言ってやる。でも、吾郎はまだ寝てる。
俺が起きてるのに、まだ寝てるってなんかむかつく。けど、ドア閉まってるし。
この間、無理矢理開けようとしたらパチンされたし、も〜う!!

お腹すいたの〜!!



「おはよう、ぴろた」
しーらない。
「もう、ぴろた。昨日から何怒ってるの?」
「……」
「あ、お腹すいた?ごめんね、遅くなって。」


なんか、ご飯少ないんだけど。
「後で一緒に食べようね」
触るなっつーの!


もう食べ終わっちゃったし。まだお腹いっぱいじゃないんだけど。
「なぁ!」
「ご飯?後であげるから朝は少なめにしとこう。ね?」

よくわかんねえけど、くれないつもりだな?なんだよ!!もう!
どっか行っちゃお。

む〜っ!!
ドア…閉まってる!!
あ…吾郎が出てく。

「あ!ぴろたはリビングにいて」

閉められたし。鼻、挟まりそうになっただろぉ!!
も〜う!!
おめかし吾郎になって戻ってきたって相手してやらないんだから!



吾郎がソファーでなんかごそごそしてる。

「今年もいっぱい貰っちゃった♪ぴろた、ほら。」
「……」
「リボン、好きでしょ?」

しーらない。

「何、怒ってるの?僕の膝の上でリボンと戯れる君、可愛いのに」



吾郎が何かしてる。いい匂いがしてきた。でも、しーらない。

「ぴろた、味見する?」
しーらない。

「もう。こんなに機嫌悪いんじゃ、僕が怒られちゃうよ。」


ピンポン


「あ、来た。ぴろたもお出迎えに行こう」
「抱っこするなっつーの!」
「はいはい。爪立てないでね。」
「もーう!」



「いらっしゃい」
「お邪魔しま〜す。あ♪」
「今日、ものすご〜く機嫌が悪いんだ。ごめんね。」
「なんでだよ。お前、何かやったんだろ」


なんか吾郎とともだちが騒いでる。コロコロのともだちとは、だいぶ違う。



「よっ!ぴろた」
やーだよ
「吾郎になんか怒ってんだろ。何があったのか教えてよ」
だから、触るなー!

「爪たてて引っ掻いてきたら、叩いていいからね」
「怖いご主人様だねぇ。可哀相に」
「ちょっと甘やかさないで」


てゆーか、ここ俺の場所だっつーの。
おまけに、じっと見すぎだし。なんなんだよ。

「綺麗だな。」
「でしょ」
「このムッとした顔がたまんないよな」
「……」
「なぁ?ぴろた」
「だから、触るな〜!」



「あ」
「どうしたの?」

「痛い〜!痛い〜!吾郎!」
「ソファーから落ちただけでしょ?猫なんだから大丈夫だよ」
「痛い〜!痛い〜!」
「はいはい。」

「大丈夫か?」
「大丈夫だよ。君までそんな心配そうな顔しないで。ほら、ご飯にしよう。抱っこされて泣き止むなんて、ぴろたも甘えん坊だね♪」
「「……」」
「……。そんな恨めしげな顔しないで。」


あ〜びっくりした。
いきなりひっくり返ったんだもん。
でも、俺、怒ってた筈なのに、抱っこされちゃった。失敗、失敗。


「すげー。ちゃんと準備されてる!」
「当たり前でしょ。お客様が来るなら、それくらいするよ。」
「ぴろたは?食わねえの?」
「朝ご飯控え目にしたし、お腹すいてる筈なんだけど…」
「お前、本当に嫌われてるんじゃねぇ?」

何こっち見てるんだよぉ。もう!

「ぴ・ろ・た♪」
「なんだよ」
絶対こいつ俺に惚れてるよ。

「一緒に食べよう」
「やーだよ」

「ぴろた、お腹すいてるんでしょ?後で欲しいって言ってもあげないよ」
「うるさいなぁ」

「いいよ。欲しくなったら来るだろうから、食べよう」
「俺が一緒に食べたいんだっつーの」
「…うん。わかってるけど…」


お腹すいたけど。
でも、俺、怒ってるんだもん。


コロコロくれたって無駄なんだから!
くれるなら貰うけど。
「食べた♪可愛いなぁ」

リボンだっていらないんだから。
どうしてもって言うなら遊んでやってもいいけど。

「ちょっと吾郎!俺もぴろたと遊ばせろよ」
「はいはい。」


ちょっ
あ〜ん
やぁ

「やだぁ」
「ぎゃー」
「わぁ〜」


「ぴろた大興奮だね」
「マジ可愛い」

もう!
もうもう!!


「リボン相手に戯れるぴろたって本当に可愛いと思うんだよね」
「さっきまでとは大違いだな」
「うん。でも、面白いのがね、彼、ふと我に返る時があるんだよ」
「我に返る?」
「うん。いきなり、『僕、こんなの好きじゃないからね』みたいな顔するの」
「見てぇ〜!」

ん?
何?
あ、俺…。
今、夢中になっちゃった。
僕、こんなの好きじゃないもんね。

「ほらね」
「おもしれぇ」

つい、子供っぽいことしちゃったよ。
ともだちと遊んでやったらお腹空いちゃった。

「吾郎、ごはん」
「なに?」
「お腹すいたから、ごはん」
「お腹すいたの?」
「ごーはーん」
「さっき、ちゃんと食べないからでしょ!」
「わぁ、吾郎怖ぇ。」
「人間と動物が快適に一緒に過ごす為にはルールが必要だからね」
「はぁ、そうですか。可哀相にな、ぴろた?」

ナデナデするなよな。ちょっと遊んでやったからって調子に乗るなっつーの。
あ〜もう!すぐ抱っこするし〜!気安いんだよ!この人。

それよりご飯だし。

「ご〜は〜ん!」
「だから、さっきちゃんと食べなさいって言ったでしょ!」
「うるさいなぁ、吾郎は」
「君もニヤニヤ見てないで、なんとか言ってよ!」
「え〜。俺、ぴろたの味方〜」
「ちょっと、それどういう事?!」

俺、お腹すいたんだけど。
なんか吾郎とともだち、けんか始めたし。

あ…キッチンになんかあるのみーつけた。
もーらい。

吾郎、怒りそうだから、見つかりませんように。ともだちが気を引いててくれて助かったよ。

うわぁ、これ、超美味しい!やっぱりいつも自分だけいいもの食べてた!!
吾郎のやつー。

「こら!ぴろた!!」

ひぃ!!
なんだよ。
大きい声出すなよ。
びくってしちゃったじゃんか。
あ〜もう、ドキドキするだろ。

「今、ぴろた、すっげぇびびった」

ともだちがなんか笑ってる。
むかつくぅ。
吾郎はがみがみ言ってるし。

もう!やだぁ!
も〜う!!

「面白過ぎる!ぴろた、超おもしれ〜」
「まだまだ赤ちゃんで可愛いでしょ?」
「でも将来有望な美人じゃん」
「…オスだけどね」
「……」

なんだよぉ。
何、話してるんだよぉ。
もう!!
いっぱい食べちゃうもん!
早く大きくなるんだもんね!!





2007.7.5UP
今週末は七夕・・・。
でも、この話はバレンタイン・・・。
気にしないで下さい。