Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [100]   レミゼラブル (2)
3月26日 マチネ
帝国劇場(東京)
ジャンバルジャン:山口祐一郎 ジャベール:岡幸二郎 
フォンティーヌ:井料瑠美  エポニーヌ:ANZA
コゼット:知念里奈  マリウス:岡田浩暉 アンジュルラス:小鈴まさ記
ティナルディエ夫婦:森公美子 徳井優
 
本日は、VISAの貸切公演です。山口祐一郎のチケットはすぐ売り切れてしまうので、カード会社をつかったわけですが、なぜか山口&岡の組み合わせというのがカード会社には多く、4月にもこの組み合わせをDCカードで買っているとあとで気づきました。
 
今日は、日本で経験するミュージカルにありがちな、うまい人もいれば歌がいまいちな人もいる、演技が大げさという一流とはいいがたい舞台でした。ロングランになるとこういう事態はさけられないものなのでしょうか。悪くはないけど、これが一回かぎりなら、どうかなと思うようなレベルでした。
 
井料さんとANZAは、レミコンで覚悟はしてたけど、その印象に大差はありません。井料さんの妙なビブラートと幽霊のようなささやきは、最初だめかもと思ったけど、だんだんなれてきました。フォンティーヌは工場で意地悪されるのですが、こういう違和感がある人っていじめられるよねと納得できる感じ。あと、娼婦になってから堕ちている様が、工場でのつんとすました印象とギャップがあってなかなかよかったです。できれば井料さんのフォンティーヌはもう見たくはないけど、レミコンのように歌だけより、演技したほうがよいみたいですね。ANZAは、まず歌がだめですね。声がでていない。演技が作りすぎてちょっと嫌味な感じ。もっと、さらっとストレートに演じたほうが、エポニーヌの切なさが出ると思う。彼女には、エポニーヌのような役はあってないのでしょう。ミスサイゴンのエレンのような、芯が強くて、女性の部分をうりにしないような役のほうがよいと思います。
 
これは、賛否両論分かれるだろうなと思ったのがティナルディエの徳井氏。歌がやっぱりこの人もだめなのです。ティナルディエって、ものすごく悪人で、人に憎まれる役なのに、宿屋でみんなで盛り上げたり、最後に舞踏会で歌ったりというところに華がある役です。駒田さんは、それが見事すぎて観客がやさしいまなざしを送りすぎていたのが気になったけど、徳井氏はこの盛り上がりをリードする力量がないんです。が、宿屋を追われてからパリで強盗をしたり、人をだましたりするティナルディエの部分は、いい味だしているんですね〜。この人は、ロンドンのティナルディエのように見るからに悪そうにはみえないで、逆にちょこまかちっちゃく愛嬌があるようにみえます。悪事をわるびれもせず最後まで重ねていく様子が自然なんです。森公美子のティナルディエ夫人は期待どおり。歌も演技もよいです。アドリブも多くつくりすぎたらいやだわと思っていたけど、ちゃんと抑えるところは抑えていて、徳井氏のちっちゃい悪人とのデコボコ夫婦が不思議なバランスを醸し出していました。これは、ロンドンにはない新しい解釈として日本発の新しい形としていいのではないかと思います。
 
アンジョルラスは、今回も期待してなかったので、こんなもんでしょう。ひとつよかったのは、髪結わえてたこと。これは○ですね。背はマリウスより高いのもよしです。が、歌がこの人もいけません。美しくないなら、せめて歌くらい上手に歌ってほしい。こういうアンジョルラスをみていると、日本はここまで手がまわらないんだなと層の薄さと認識の低さを感じずにはいられません。海外では、アンジョルラスはオペラ座の怪人のラウルとか、エリザベートのトートを演じるような役者さんがやるのです。赤いベスト着てなかったら、見逃しそうになるような存在感ではだめですね。逆さづりは今日も拍手あり。でも、小鈴氏は上半身だけみえていて、ぶらさがっている感じが薄かったです。ロンドンのオリバー君が片足だけでかろうじてひっかかっているような危機感がほしいですね。
 
マリウスの岡田君は、う〜ん、まあまあかな。わたしは、この人の声は好きなのです。だけど、年とりすぎなのと、力はいりすぎ。3分の2くらいのテンションでよいのではないでしょうか。その割には、’Epmpty Chaire,Empty table'は、わりとさらっとしていてよかったです。岡田君は、アンジョルラスの方がよいかも。
 
レミコンでは、どうみてもいいところのお坊ちゃんのエリート官僚にしかみえなかった岡氏のジャベール。これは、ちょっと冷静にはいえないかもしれません。岡氏は、舞台栄えする人なんですね〜。背が高くてすっとしており、何しろあの警察の長〜いフロックコートに結わえたロングヘアー。レミゼは暗くて顔の細部まではみえませんから、かなり外見よくみえるんです。ジャベールとしてどうのこうの言う前に彼がでるところは、誰よりも見栄えがよいのですよ。身分をいつわって学生たちにまぎれるところで、平民の服にトリコロールを腰にまきつける姿なんて、そういうところじゃないだろうというのにちょっとそそられます。まあ、外見に惑わされずに振り返ってみるとすると、この人も人間的なジャベールでした。ジャンバルジャンをパリで逃がした時のくやしさとかジャンバルジャンにバリケードで救われるところの戸惑いとか素直なジャベールですね。最後の自殺はちょっと自嘲気味に笑い声もあります。これは、今氏のオリジナルじゃなくて日本の演出なんだろうか。今氏のきれちゃった流れとは違って少し不自然でした。
 
山口バルジャン。これは、もう好き好きの世界でしょう。わたし的には、深みのないバルジャンでした。山口さんって、演技しない人という印象なんですが、今日は演技してたと思います。この人の演技も井料さんとか岡田君みたいな感じ。な〜んか大味なんです。こういう人間味のある役は、むいてないのでしょう。トートのように歌とルックスだけでいいやという役のほうがいいです。彼の場合固定客が多いのでしょうから、あえてこのような難役に挑戦しなくてもいいのではないでしょうか。うまいけど、心に響かない’彼を帰して’でした。
 
まあ、レベル的にはしかたないといえばしかたない舞台でしたが、結構要所要所では泣けました。この作品は、世界各国で演じられるし、日本でも続いていく作品です。だから、たくさんいろんなバージョンみて、フィードバックして、日本のレミゼのレベルがあがることを祈るのみです。
 
 
update:
2005/04/17



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