3月19日 ソワレ
帝国劇場(東京)
ジャンバルジャン:今井清隆 ジャベール:今拓哉 フォンティーヌ:マルシア
マリウス:泉見洋平 コゼット:知念里奈 アンジョルラス:坂元健児
ティナルディエ夫妻:駒田一 瀬戸内美八 エポニーヌ:坂本真綾
ロンドンで5回もみておきながら、日本で観劇するのははじめてです。今回は、3ヶ月もあるし、ジャンバルジャン4人、ジャベール3人、マリウス3人、アンジョルラス4人とキャストが多彩なので、回数稼ごうとB席からのスタートです。B席は、失敗でしたね。遠すぎます。はじめての舞台にB席はいけません。何度もみて、見所をおさえてからでないとオペラグラスの視界では狭すぎるのです。また、レミゼは舞台が暗くてみえにくいのでした。帝劇は、舞台が大きいのでしょう。クイーンズできつきつ、客席の横の壁までセットになっていたのとは大違いで、バリケードの横なんてがらがらです。なんだか臨場感に欠けた観劇となりました。
とはいえ、やはり母国語というのは心に響くものです。いきなり、司教様のところはちょっと泣けちゃいました。海外の司教様は、’あなたの魂わたしが買〜った〜’のところを低〜い声で重々しく歌うのですが、日本の司教様は、一オクターブ高く’買〜った〜〜’と歌いあげるのです。ここは、海外の司教様は、神様に対してジャンバルジャンの行く末に責任をかみしているようですが、日本の司教様はただ、ただ慈悲にあふれているように思えるのです。日本的解釈は日本人の琴線にふれるようです。
マルシアのフォンティーヌは好きですね。ロンドンのジョアンヌアンプリさんの系統で、力強いフォンティーヌです。泣いてばかりいるのでなくて、自分の足でしっかり立とうとして生きているような若き母親です。強さの中にひめたやさしさが、最後にジャンバルジャンが召される時の場面であらわれていました。
今回、意外によかったのがエポニーヌ。レミコンでは、本田美奈子以外は全部はずれだったので期待はさっぱりしてなかったけど、マリウスに愛されない切なさがあふれており、恵みの雨では泣けました。こんなにマリウスに恋しているエポニーヌは初めてです。ロンドンでは、みているこっちがマリウスにいれこんでいたので、エポニーヌの気分でみてたけど、今回の坂本真綾ちゃんのエポは、女の子としてエポニーヌ自身のいじらしさに泣けました。エポニーヌが最後の最後にキスするのは、いろいろなパターンがあるようですが(死んでからマリウスがおでこにするとか、死ぬ直前に彼女がチュって一瞬するとか)今回は、わりと長めにお互いにしてたみたいでした。
で、マリウス。泉見洋平君のことを言う前に、これはだめだわ、東宝と思ったこと。マリウスのお洋服。レミコンのとき、うすうす気づいてたけど、あの地味な黒いスーツに首をあけたシャツはいけません。マリウスは、首をぐるぐるまきにした赤いネクタイと金色のベスト、それに黒いスーツでしょう。髪も結わえてほしかったなあ。ジョンリー君以来、ダニエル君に会う前は、数々のマリウスに失望させられていたので、今回過剰の期待もなかったせいで、無事普通にみれました。まあ、こんなもんでしょう。泉見君がどうのこうのいう前に、だいたいこの訳詞自体がなんかマリウスとはかけはなれているし。ここをわたしに納得させるには、日本のレミゼを根本的に変えなければだめでしょう。浦井君がマリウスやる前にどうにかしてほしいものです。
坂本氏のアンジョルラス。う〜ん、だめです。美しくないのは目をつぶろう。でも、背が低すぎます。どうも遠くからみているせいか、カリスマリーダーの美青年にはみえないんです。ここも日本のレミゼの解釈に大きなまちがいがあるところのひとつだと思います。いや、一番まちがっているところです。今日、びっくりしたのは、アンジョルラスの逆さづりの死体のところで、拍手がおきたのです。え〜、拍手するところじゃないでしょう。坂元アンジョときたら、目はあけているし、両足ひっかけているし、全然きれいなじゃないのに。何で拍手するの?変に常連さんがいるみたい。ロンドンで初めて観たとき、オリバー君があまりに美しく逆さづりにスポットライトをあびていて、まあと言葉を失ったときとは大違いでした。
常連さんといえば、最後にティナルディエがマリウスの結婚式で悪びれもせず歌ってさっていくところも、手拍子を無理やり誘導するような拍手がちらほら。これもちょっと興ざめ。駒田一さんのティナルディエは、人気があると聞いてはおりますが、こんなに観客に好意的に受け入れられていては、ティナルディエとして成立してないと思う。実際、駒田さん、悪党に見えなかったです。レミコンでは、盛り上げるのが上手で華もあるし、歌うまいし、いいなと思っていたけど、どこまでもお金に汚くて、悪の道を一生つらぬいたティナルディエのあくの強さがなくて、ちょっと失望しました。
今回、みていて、なんか日本のレミゼはうす〜いなと感じるのです。なんでなんだろうね?と思うと、そうだ、ジャベールなんですよ。ジャベールがうすいんです。ひたすら法に忠実で冷徹な存在感を持つ男が、執拗に追い続けた男によって自分の信念をゆるがされるまでがうす〜いんです。そこまでがうす〜いと、’自殺’の歌が心に響かないんですよ。今氏の最後は、きれちゃうジャベールです。橋の手すりを越えたあと、自分の人生あざ笑うかのように、妙な笑い声をあげるんですが、唐突にみえちゃいます。きれるほど、徹底した人生でもないのに、自殺するほどゆるがされちゃったんでしょうかね?とつっこみたくなります。ん〜、もともとあってないのかもしれませんね。
今井バルジャンは、レミコンで目をつけたとおり、わたし的には好きなバルジャンでした。基本的に、心が広くて温かみのあるバルジャンです。バルジャンって、大きくて強くて、つらい人生を生きてきたから、役者さんによっては、その強さが前面にでて、やさしさはあまり出さない人もいます。が、今井バルジャンは、コゼットに対してだけでなく、マリウスや時にはジャベールに対してもやさしいまなざしなのです。特に’彼を帰して’は、ロンドンで聞いたときと同じような感動でした。この方は、声がきれいなのかもしれません。関係ないけど、’オペラ座の怪人’のファントムやってたらしいので、今度CD借りてみようと、レミゼ見ながら思ったりしたのでした。
全体的には、やはりレミゼは好きです。音楽が何より好きだし。あれこれ、こうしてほしいところはありますが、日本でみれるってことは嬉しいことです。でも、もうB席はやめよう。あと、とってるのはA席2つとS席2つか。多分、増えることはないでしょうが、ちゃんとした席で見たいものです。
これが正しいマリウスの服装

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