2005年3月6日 ソワレ
代々木競技場第一体育館(東京)
モーゼ:セルジオモスケット ラムセス:アメッドムイシ
ネフェルタリ:ジニーリース ビティア:リディアマルシェ ヨケベッド:アンヌヴァラン
ミリアム:アニサスティリ ヨシュア:パブロヴィラフランカ
アロン:ファビアンリシャール セフォラ:クラリスラヴァナン
重なるときは重なるもので、アダムが帰国後も忙しい日々です。これは、特チケが絶対でると思っていたのに、でなかったので本日は当日券で。こういうところは、どの場所がいいかわかりませんが、Tブロック5列目というのは観やすかったです。チケット高めですが、規模と出演者数を考えるとまあ、これが抑えたぎりぎりの線でしょう。
代々木体育館というからには、劇場ではありません。音響悪いです。オケはなく、伴奏はテープだけど、全編セリフなしで歌のみ。舞台の広さは通常の3倍はあるでしょうか。英国クイーンズシアターや渋谷のパルコ劇場では絶対できません。真ん中がメイン舞台で左右に少し高いサブの舞台があり、背景はでっかいスクリーン。字幕は両端なので、字幕みてたら真ん中の様子わかりません。また、モーゼとラムセスが同時に結婚式を行うところなど、真ん中と左上の舞台という感じで、いっぺんに見るのは大変です。たぶん、字幕の必要ない本国人でも忙しかったことでしょう。
物語は、紀元前のエジプト。ヘブライ人はエジプト人の奴隷として日々を暮らしています。あるときにヘブライ人から預言者が現れるという予言を聞いたエジプト王はヘブライ人の子を全部抹殺するようおふれをだします。ある母親が一縷の望みをかけてわが子をナイル川へ流します。偶然にも王の妹にひろわれたその子は、モーゼと名づけられ、王の息子ラムセスとともに兄弟として育てられます。始まりは、この母ヨケベッドが子供の生を願って手放す歌からです。よいです。ぐっときました。その子をひろってビティアも歌います。ヨケベットは、’Tu vivras'(おまえは、生きるのよ)とビティアは'Il vivra'(この子は生きていくわ)と歌います。やっててよかったフランス語。ちょっと聞き取れました。
やがて成長した二人は、よき兄弟、ライバルとして一人の女性ネフェルタリを同時に愛する青春時代をむかえます。ヘブライ人は相変わらず過酷な奴隷の日々です。モーゼは自分がヘブライ人とはきづいていませんが、奴隷につらく当たるエジプト人の役人の様子に怒りを感じあやまって殺してしまいます。その裁判で、検事がモーゼがヘブライ人であることを暴露し、モーゼはエジプトを追われることとなります。砂漠をさまよった末、放浪するヘブライ人のところへたどりついたモーゼは羊飼いとなりセフォラと結婚します。そこでモーゼはヘブライ人を解放するようにとの神の啓示を受けます。奴隷を解放しようとしないエジプトに天から十の災いがふりかかります。ここからが、ラムセスとモーゼの対立のはじまりです。
モーゼもラムセスも歌うまいです。声もちょっとセクシー系の高めの声。モーゼのセルジオさんはイタリアンですね。二人の声似てます。だから、どっちが歌っているかわからないときがあります。できれば、声質の違う人を選んでほしかったです。ラムセスは、絶対奴隷解放したくないと権力を誇示する王様です。十の災いは、ナイルの水が血になったり、かえるや害虫がいっぱい発生したり、炎と暑さにとりかこまれたり、後ろのでっかいスクリーンに不気味に映し出されます。ラムセスは、こんなことにも屈しないのですが、10番目の災い男の子がみんな死んじゃうということで自分の息子に災いがふりかかろうとして、初めて屈服します。ベビーベッドに伏せて落ちこんでいます。ちょっと同情ひきます。奴隷を解放したものの、ラムセスはヘブライ人を攻撃します。ふたりが対立します。対立しながらも、二人は元兄弟です。’兄弟よ’とお互いに呼びかけあいながらお互いの思いを歌い抱き合いたいのに後ろに控えるそれぞれの民に引き離されます。ここは、エリザベートでいうなら、’闇が広がる’系の切なさを感じます。そして、これが永遠の別れとなるのです。
紅海まで追い詰められたヘブライ人を率いたモーゼの前の海がわれて、ヘブライ人だけが海をわたるシーン。結構期待してたけど、体育館中に振動が響いて、ドライアイスもくもく、後ろのスクリーンに波が映し出されるという、まあ、考えつきそうな演出でした。これは、見所にするには弱いですね。アメリカのユニバーサルスタジオで目の前の湖がわれて、自分たちののっている電車が通れたときの驚きの方が大きかったです。
安住の地をみつけたヘブライ人たちは、安易に堕落した生活を送るようになり、偶像崇拝すら始めます。またまた神から啓示を受けたモーゼはヘブライ人たちに十戒を告げます。そこでおしまいです。
あ、これで終わりね、とみんなちょっと暗くなるまでわかりませんでした。そういうわけで、最初カーテンコールも人数はいっているわりには、拍手ぱらぱら。盛り上がんないね〜と思っていると、さすがラテン系。セルジオさんが’Come on!'と観客を舞台に招くのです。観客も最初なんのことだかと思いつつ、舞台のすぐしたまで近づくと握手してくれたり、そばで歌ってくれたり。何しろ群舞がいっぱいで、あの広い舞台の端から端まで出演者がいるので、あっちでもこっちでも盛り上がりはじめます。最後は、群舞がそれぞれブレークダンスみたいなことをしたり、みんなで楽しいカーテンコールになっていました。
まあ、確かにおもしろかったけど、垢抜けない舞台でした。あのレミゼももとは、フランスで生まれ、全然ヒットしないのをマッキントッシュが買い取ってねりなおしました。この舞台もマッキントッシュに買い取ってほしいです。音楽はいいのです。お話もいいのです。が、観客が望むものに欠けています。まずは、出演者。モーゼは今みたいな系統でもよいです。が、ラムセスはかっこいい俳優を配置すべきです。こういう権力を持ちながらヒーローになれない悲劇系の人は、美形がやるべきなのです。アメッドさん、歌はいいんだけど、あの半分はげた髪型となんだかエジプトっぽいメーク、いただけませんね。ラムセスがそうね、トロイにでてきたオーランドブルームのお兄ちゃんみたいな人だとよかったです。それと、群舞。ものすごい人数います。あちこちで、結構アクロバティックな踊りもします。そのわりには、まとまりがありません。これだけの人数でソニアリキエルの衣装。マシューボーンに振り付けしなおしてほしいです。せっかくこんな大人数でフランスからやってきたわりには、半分の人数でもよかったんじゃないかと思えるダンスでした。災いとか、海が割れるシーンとかスペクタクルの見せ場が、スクリーンにたよりがちなのもどうかなです。このミュージカルは、スペクタクルにする必要はないんじゃないでしょうか。舞台も左右けずって真ん中だけにする。過剰なスクリーンの演出は、もっとシンプルな照明等の効果を使う。レズブラザーストーンさんならそうすると思いますよ。歌の美しさと、兄弟愛、解放される民の自由をテーマに本格ミュージカルに練り直してもらいたいです。
ま、そういうわけでがんばれ、フランス人。Vive la France!(と、関係ないことをいう)フランスミュージカルは、レベルいまひとつですね。
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