Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [106]   危険な関係 (10)
2005年2月26日 マチネ
大阪フェスティバルホール(大阪)
ヴァルモン:アダムクーパー  トゥーヴェル夫人:サラ ウィルドー
メルトイユ夫人:ヨーランダ ヨーク エドジェル ロズモンド夫人:マリリン カッツ
ヴィオランジュ夫人:ウェンディウッドブリッジ
セシル:ナターシャ ダトン ダンスニー:ダニエル デヴィットソン
ジェルクール伯爵:リシャール クルト プレヴァン:バーネビ イングラム
 
最初、大阪公演初日マチネは、移動もあるしチケットありませんでした。が、ごいっしょする方の中にマチネもごらんになる方がいらっしゃり飛行機を間にあう時間に予約していたのです。東京千秋楽が終わってみると、まだまだ観たりなくて、名古屋も長野も神戸も行きたいのに行けないと思うと、大阪のこの貴重な1公演を見逃すわけにはいかない気持ちになったのです。
 
大阪フェスティバルホールは大きいです。端っこのほうは絶対見えないでしょう。だから、途中まで黒い幕でおおって売り出していません。わたしの買った席は、かえるぎりぎりの端っこだったらしく、お隣を荷物席にさせていただきました。最前列センターは、舞台に近いわりに見切れることもなくよいらしいですが、5列目くらいでは、前の人の頭がじゃまです。大阪には、もっといい劇場なかったんでしょうか。Stage Doorの場所といい、バレエ、ミュージカルにはあまり向かない劇場のような気がします。
 
もうひとつ、この公演を買い足したのは、未見のヨーランダさんのメルトイユ夫人が観たかったし、鶏がらダニエル君が少しは成長したかどうかみたいというセカンド狙いもあったのです。26日マチネ、ばっちりセカンドキャスト揃いました。
 
ヨーランダさん、外見はばっちりメルトイユ夫人です。映画のグレンクローズの路線で、この方なら、貴族のご夫人に見えます。最初の仮面をつけたエピローグのあからさまな性表現を思わせるダンスさえ、この方の場合、裏の顔としてこのようなこともあるでしょうと思え、サラバロンさんのメルトイユは日常的にこんなんでしょうという感じとは違います。あくまで、表の顔は、貴族の優雅な夫人、華やかな社交界にいて、静かに影で権力をふるっている女性に見えます。オレンジというか金色のようなドレスを着ているときのヨーランダさんのメルトイユ夫人は、大変よろしいです。が、赤いドレスにかわる頃から、突然失速します。多分、キャストが決まってから振り付けは完成したのだと思いますが、アダムの危険な関係は、あきらかにサラバロンをメルトイユ夫人に設定して振りつけられているなと感じました。ヨーランダさんは、あの赤いドレスのしたの赤いコルセット姿のときは、全然イメージじゃないのです。わたしは、こんなことはしたくないのよとでも言いたげなくらい迫力ありません。まだオレンジのドレスのときの最後で、ヴァルモンにつばをぺっと吐きつけるところも、ヨーランダさんがファーストならなかった仕草じゃないでしょうか。プレヴァンとの情事も、あのようなドレスでないだろうし、ダンスニーとの情事のシーンもあれほど激しくはないんじゃないでしょうか。ヨーランダさん的には、ちょっと損な設定ですね。外見的に受け入れられやすいメルトイユ夫人なので、セカンドなのでしょうが、あまりにサラバロンさんとタイプが違うだけでなく、ヨーランダさんの得意としない振り付けが満載すぎました。最後の慟哭はよかったです。サラバロンさんの自分の半身をもぎとられたかのような人間としての叫びでなく、完全に女性が愛する人を失って哀しみのあまり号泣してしまう、潤いのある慟哭でした。ヨーランダさんのメルトイユ夫人こそ、ヴァルモンを愛していることを隠しているというより、トゥベルに心移りした頃はじめてヴァルモンへの愛に気づくというタイプにみえました。
 
そして、さあ、最後くらいはがんばらなくちゃね、鶏がらダニエル君。この公演のすばらしかったことのひとつに、若いダンサーの演技が回を重ねることに格段によくなってきて、その成長ぶりが手にとるようにわかるということがありました。筆頭は、ナターシャのトゥヴェル夫人でした。2日連続してみたときは、前日と当日の情感の違いに驚かされ、将来サラウイルドーとはまた違ったトウヴェル夫人としてこの作品に彩りをそえるであろう予感を感じました。セシルに関しても、大人と少女の間の無邪気さとなまめかしさを併せ持つセクシーな魅力にあふれており、特にデーミアンとの日のパドドゥは美男美女のカップルで輝いていました。その美少女セシルの本当の相手役、ダニエル君。わたしが観てない日のマチネに結構踊ったらしいし、いつもファーストのデーミアンといっしょにいるんだから、学んだことも多かったでしょう。が、だめしょう、ダニエル。もっと、気をいれて演技しなくちゃ。ダンスニーに愛されてないセシルというのはあまりにかわいそうよ。踊っているだけじゃだめなのよ。君には役作りという言葉はないのかな。まあ、ダンスニーのかつらとお髭が似合わないというのはかわいそうだけど、それを吹き飛ばすくらい愛おしいダンスニーにしてくれなくちゃ。ロンドンでは、アイザックマリンズ君とチェンジしてください。素顔がすご〜く女の子なみにかわいい系なだけに、手放すのはおしいが、作品のため、この子は修行が終わるまで出ないほうがよいです。場数を踏む以前の問題。
 
うす〜いセカンドキャストにかこまれながら、10日ぶりにみたヴァルモン&トゥベル夫人のPDDは、青山劇場最後の頃を思わせるさらにパワーアップしたものでした。大阪の方は、盛り上げるのが上手なのでしょう。愛のPDDを終えて、ソファーで幸せな眠りにつく場面で拍手がおきたのです。そうだ、この場面は、拍手したかったのよね。今回の危険な関係の音楽は、切れ目の時間が少ないので、なかなか感動しても拍手を送ることができませんでした。ここの拍手を聞いて、嬉しかったです。
 
この回の目的は、ほぼ達成。セカンドキャスト勢ぞろいというのが観れた上、大事なヴァルモン&トゥベルのシーンは変わらずすばらしかったので。が、夜になって気づいたのでした、マチネは濃度薄かったな〜と。
 
 
 
 
update:
2005/02/28



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