2005年2月6日 マチネ
ゆうぽうと(東京)
ヴァルモン:アダムクーパー トゥーヴェル夫人:サラ ウィルドー
メルトイユ夫人:サラバロン ロズモンド夫人:マリリン カッツ
ヴォランジュ夫人:ウェンディウッドブリッジ
セシル:ヘレンディクソン ダンスニー:デーミアン ジャクソン
ジェルクール伯爵:リシャール クルト プレヴァン:サイモンクーパー
本日は、ゆうぽうとの最終日です。外観は垢抜けないホールだなと思っていましたが、家から近いし、お花やさんも感じいいし、OYTの頃から楽しい思い出がたくさんできたし、ちょっと寂しい気持ちもします。
今日も前回に続き、作品がとても安定して細かい手直しも落ち着いたのか、内容的な深みが増したような印象を持ちました。今回初のウェンディお母さんがよかったです。ヴォランジュ夫人は、昔ヴァルモンとちょっと関係を持ったせいで、彼に対していい印象を持っていなくて、トゥヴェル夫人に告げ口したりする人です。ヨーランダさんは、この部分がちっとも感じられなかったので、アダムの演出はここをカットしたのかと思っていました。しかし、ウェンディお母さんは、娘のセシルをジェリクールとくっつけようと必死になりつつも、昔の男ヴァルモンに今でも、ちょっとくらっとなったり、そのくやしさにトゥヴェル夫人に警告しようと近づこうとしてヴァルモンにとめられたりと、なかなかメリハリがあります。ヴォランジュ夫人なんて、本当のところ、セシルのお母さんっていう以外は、どうでもいいのかなと思っていましたが、ヴォランジュ夫人が母としてだけでなく、女の部分を垣間みせたことで、ヴォランジュの人間としての深みがでただけでなく、ヴァルモンの過去やプレイボーイ的な部分が一層強調されてキャラクターに奥行きがでたと思います。脇役っていうのは、こういう効果もあるのだなと知らされました。デマチでウエンディさんに会ったので、ヨーランダさんよりいいと思いますといったら、すごーく嬉しそうに頬よせてありがとうといってくださいました。また、みたいです、ウエンディのヴォランジュ夫人。
だんだん、サラバロンのあからさまなメルトゥイユ夫人も慣れてきて、彼女の目線でヴァルモンを見てみると、彼女はヴァルモンを実はずっととっても愛していたのかもねと思いました。最初の頃は、ヴァルモンがトゥヴェル夫人に心を奪われた頃からあせりはじめ、死んではじめてその愛に気づいたのだと解釈していました。しかし、どうも彼女、ずーとヴァルモンを愛している自分に気づいていて、それを見せないように強気にでているんだわと今日気づきました。そういう意味では、グレンクローズが本心を隠して、無表情にいろんな悪巧みをすすめていたことと共通するものがあります。メルトゥユ夫人は本当のところは、誰にもみせない人なんですね。自分の本心をみせないために、人をあやつり、人の性をもてあそぶ、いつでも自信に満ち溢れていながら、彼女自身は本当の自分を解放することができない。そうか、本質的にはサラバロンのメルトイユ夫人はグレンクローズ演じたメルトイユ夫人と同じなんだと初めて納得しました。
アダム&サラについては、コメントするまでもなく、常に安定したパフォーマンスを見せてくれています。今日は、ヴァルモンがトゥヴェル夫人を誘惑して、はっと自分の心にも気づいてしまい、ロズモンド夫人を呼んだあと走り去る場面の、アダムの姿があまりに美しくて、はっと息を呑んでいたら、隣の人がなんなんだ、この人みたいにわたしを見てました。たしかに、もうその場面のアダムは暗いところにいて、見える人にしか見えない場面なんですが、普通に踊ってないところでさえ、こんなにたたずまいが美しい人なのね、と胸ときめいてしまったのでした。
ダンスニー&セシルは、もう定番のデーミアン&ヘレンです。ヘレンは、どんどんよくなってきていて、特に一幕のレイプシーンが激しいだけでなく、美しくみえてきました。ダーミアンは、今日、デマチでみたら、ステージよりかっこよかった。ちょっと、これから温かい目でみられるかもしれません。思えば、彼のダンスも演技も別に悪くはないんですけど、わたしがこの役に期待こめすぎていて、彼に冷たい視線をおくっていたのかもしれませんね。(←なんて、単純な)
舞台というのは、本当に生き物のようです。観るたびに違った発見があり、作品が成熟していくものなのですね。初日に予感した作品の成熟度を今こうしてステージのたびごとにリアルタイムで感じられることを幸せに思います。
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