Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [115]   危険な関係 (3)
2005年1月30日 マチネ
ゆうぽうと(東京)
ヴァルモン:アダムクーパー  トゥーヴェル夫人:サラ ウィルドー
メルトイユ夫人:サラバロン ロズモンド夫人:マリリン カッツ
ヴィオランジュ夫人:ヨランダ ヨーク エドジェル
セシル:ナターシャ ダトン ダンスニー:ダニエル デヴィットソン
ジェルクール伯爵:リシャール クルト プレヴァン:バーネビ イングラム
 
本日は、3度目です。この舞台というのは、後でくるみたいで、この前2回のレビュー書いた夜はまだ興奮状態だったせいで、なんだか大はしゃぎでした。が、月曜日、日常生活にもどろうとすると、胸の中になんだか不安な塊みたいなものがうずまいていて、ヴァルモンに後ろからひっぱられているみたいでした。その状況は、一週間続いて、やっと今日をむかえ、明日もまた、あの毒が身体にまわってしまうのかしらと心配です。今日は、上演のあとトークショーがあり、毒をまきちらしたヴァルモンは、さわやかな笑顔いっぱいのアダムクーパーに戻っており、ああ、一体この人って、どれだけわたしを翻弄すれば気がすむのかしら。
 
ヴァルモンとメルトイユ夫人は、2幕の半ばまでは、二人で悪いことばっかり考えて、人を性的にもてあそぶことは、まるで自分たちの権利みたいに振舞っています。メルトイユ夫人のイメージが、映画と随分違って、品のないおばさんに見えるのは変わりないんですが、それは、わたしの中でグレンクローズによって固定さたメルトイユ夫人のイメージに左右されていたせいではないかと、ふと思いました。本当は、メルトイユ夫人の本質を強調するとこのサラバロンようになるのかもしれません。爬虫類の生き物を連想させる粘着性、人を思いのままあやつりたがる本能、しかし誰によっても満たされることのない欲望。何も怖れていなかったはずなのに、ヴァルモンを失ったときに襲いくるむなしさと孤独な恐怖。サラバロンのメルトイユ夫人は、これらを隠すことなく前面に押し出して踊っています。サラバロンの外見やダンスは、そういう意味ではストレートで、これがアダムやレズのイメージするところのメルトイユ夫人ならぴったりだったのかもしれません。サラバロンと正反対の外観、もう一人のサラ、トゥヴェル夫人を演じているサラウィルドーがメルトイユ夫人を演じたなら、もっと微妙でおもしろかったりしてと思います。
 
ヴァルモンは、悪い男なのかもしれない。でも、わたしとしては、セシルやトゥヴェル夫人のように、その魅力にあらがうことができません。憎さをちっとも感じることができないのです。むしろ、あんな風にゲームの獲物にされてみたいと思ってしまいます。最後は、破滅の道が待っているとわかていても、一瞬燃え上がる情熱のためにならだまされてもいい。と、思いながら観てしまうのは、やはりそれがアダムだからなのでしょうか。マルコビッチのヴァルモンにはそれはなかったですもんね。たしかにマルコビッチのヴァルモンも魅力的な男性ではあったけれど、いっしょに堕ちていきたいタイプじゃなかったです。
 
今日は、ダンスニー、セシル、プレヴァンが前回と違う人々でした。ダンスニー、これはだめですね。最初、腕をふりあげたときは、いいかもと思ったんだけど。15歳の少年みたいなぎこちなさで、舞台なれしたないせいか、踊りもも堅いし、アダムの隠し玉かしらと期待していたけど、まだ舞台にでるのは早すぎましたね。もっと、練習しましょう。セシルは、前回の少女みたいなセシルより、お姉さんでこっちはわたしが元もっていたイメージの年齢に近いです。かわいさでいうと、ヘレンのほうがかわいいです。ヘレン&ダニエル、ナターシャ&ダーミアンのほうが年齢のつりあいとれるんじゃないですかね。でもそうすると、ヘレン&ダニエルは、子供のカップルになっちゃいますか。プレヴァンは、前回、お兄ちゃんがセクシーでないとか思ったりしたけど、やっぱりお兄ちゃんうまかったんだわと気づかされました。バーネビさんは、平凡な人にしかみえず、メルトイユ夫人のお遊びの相手にしては役不足。お兄ちゃんくらいスマートに振舞ってくれないとメルトイユ夫人は相手にしてくれないと思うよ。今日のトークショーでアダムが資金の次に大変だったのがキャスティングといっていましたが、セカンドまでそれなりのレベルでそろえることは容易ではないなというのが実感です。
 
また、長〜い一週間が始まります。舞台はもう11回目を終え、日々進化しているようです。細かい演出や設定はかわっているようですが、最初からかわらないもの、それは、アダム演じるヴァルモンの撒き散らす毒です。何度みても、また劇場が恋しくなって、苦しくて、日々の暮らしを破綻さえないよう持ちこたえるだけの体力と気力しか残さないで身体も心も侵していく、強い毒です。わたしのLiberteは、いつ得られるのでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
update:
2005/01/30



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