2005年1月23日 マチネ
ゆうぽうと(東京)
ヴァルモン:アダムクーパー トゥーヴェル夫人:サラ ウィルドー
メルトイユ夫人:サラバロン ロズモンド夫人:マリリン カッツ
セシル:ヘレンディクソン ダンスニー:デーミアン ジャクソン
ジェルクール伯爵:リシャール クルト プレヴァン:サイモンクーパー
本日、2度目の観劇です。昨日、帰ってから、パンフレットを読んだので、映画とは違うなと思ったところもそうなんだと納得しました。初めてみる友人に紹介するなら、マルコビッチ版をビデオで事前に見るよりも、このパンフレットのSynopsisのコピーを渡したほうがよいかもね。
普通なら、始まる前は、重い舞台の幕がおりているところをこの作品では、白くてうすいカーテンが風になびいているかのように舞い上がっていて、舞台の下のほうが見えています。昨日は、3列目、今日は最前列です。ろうそくの香りがただよい始めると物語が始まります。黒い衣装をきて仮面をつけた人たちが、燭台をもって登場します。ろうそくの炎が鏡の壁に揺れています。この作品は、ほとんどが、壁と天井が鏡になった部屋で展開します。背後が、ガラス張りになっており、何か怪しいことがあるときは、メルトイユ夫人か、ヴァルモンが必ずそこでその光景をみています。ガラスごしにあいまいにみえる人物の衣装がその時、その時の怪しさを映し出しています。舞台美術というのは、その舞台を美しくしたり、リアルにみせるためにあるものかと思っていましたが、レズさんの手がけたものをみるかぎり、美術の効果が実に雄弁にその場面場面の雰囲気を語るということを知り、舞台は総合芸術という言葉の意味を実感したのでした。
アダムの衣装は、最初が白、次が黒、そしてあれって、ステテコですか?下着とガウンのみ、紫、そして最後が白いシャツ。外観的にいうと、2場の黒いジャケットに黒いブーツで長い髪を紺のリボンで束ねた姿にそそられます。が、以外にも、わたしとして今、これは好きだわといえる場面は、あのかつらをはずした下着姿の一幕の最後の場面です。ヴァルモンがセシルをおとそうと、ベッドの上からおりてくるは、床に押し倒すは、いやがるのを無理やり抱き寄せるは、ヴァルモンが野獣になる瞬間です。あんな服装で、若い女の子を襲ったら、普通ならとってもいやらしいおやじになっちゃうと思うんだけど、アダムのヴァルモンには、窒息させられそうになります。マクミランのマイヤリングでのルドルフの初夜を思い起こさせます。あれより、もっと乱暴で、激しくて、なんたって、イレクよりずっとセクシー。こんなことを書いてしまうと恥ずかしいけれど、この人になら、破滅させられてもいいわと思ってしまう。息つけなくて、圧倒されて、釘付けにされたまま一幕が終わるので、観客は拍手するのを忘れているんだか、我を忘れているんだか、不思議と拍手のないまま幕間の休憩へと突入するのでした。
2幕最初のアダムは、また、髪をたばねて長いジャケットを着た貴族の紳士です。落とした獲物のセシル、これから落とそうとしているトゥーヴェル夫人、ゲームに勝ち続けている自信満々のヴァルモンの虚構のときは、いつも長い髪のかつらに長いジャケットです。それが、トゥーヴェル夫人への本当の恋に気づいたとき、ヴァルモンはもう着飾ってはいません。短い髪のまま、白いシャツに黒いブーツ。とてもシンプルです。黒いジャケットにたばねた髪でトゥーヴェルを落とそうとするときのヴァルモンにも実は、心ゆさぶられて、実際みているこちらはもう恋に落ちてしまっているわけですが、この虚構の姿をぬぎすて、苦悩しながら破滅に向かう姿は、もっと心に突き刺さってくるのです。今回のアダムは、あの髪型を一言でいうと坊主頭だし、野性味を出すためかお髭もあります。わがままでごめんなさい、でもいわせてね。あの下着姿も破滅のときの白いシャツ姿も、アダム本来の美しさ(普通の前髪がある褐色の金髪で、おひげのない顔)のままなら、もっともっと、もっともっともっと、この二つの場面、衝撃だと思うんですよ。もう、立ち直れないかもしれないくらい。アダムは美しさと野獣の男性本能と、この二つを誰よりもあらわせる人なんだから、わざと美しさを隠すことないと思うのですけど。今回、美術は大絶賛したいとは思いますし、あのレズさんにおこがましいとは思うのですが、一言、聞いていただきたいことなのでした。普通の髪型のアダムで、ヴァルモンが見たい。
本日のキャストは、昨日と同じ。特に印象もかわりませんでした。やっぱり、ダンスニーがいまいち、かわいさに欠けるし、サイモンは個性がうすい。サイモンがメルトイユ夫人のわなにかかる前に、メルトイユ夫人とたわむれるところが、素敵ならヴァルモンの日行こうかと思ったけど、やっぱりパスです。これ、書くと正直すぎて顰蹙かっちゃうかもしれないけど、今のサイモンの役、イヴァンなら、くらくらしちゃったかも。すみません。わがままいいすぎでした。
次は、来週の日曜日です。今度は、違うダンスニーの子みたいです。
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