Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [118]   白鳥の湖 レニングラード国立バレエ来日公演
2005年1月10日 マチネ
東京国際フォーラム Aホール(東京)
オデット/オディール:スヴェトラーナ ザハロワ 王子:イーゴリ ゼレンスキー
王妃:ズヴェズダナ マルチナ 家庭教師:アンドレイ ブレグバーゼ
ロットバルト:マラト シュミウノフ
 
バレエと呼べるものを劇場でみるのは、3度目です。最初は、随分前、たぶん92年くらいにまだ、パトリックデュポンがいたころのパリオペラ座バレエのニジンスキーのガラみたいなので、去年ロイヤルオペラハウスでみた’マイヤリング’が2度目。TVやビデオでバレエ観るのは好きだけど、なかなか劇場へ足を運ぶには敷居もチケットも高かったのです。今回、ずーと気になっていたレニングラード国立バレエの公演が、なんと特チケで出た!迷いました。’海賊’にしようか、ゼレンスキーの’白鳥の湖’にしようか。おととしNHKでマリエンスキー劇場の300年公演で’海賊’踊るゼレンスキーがとてもよかったから。で、ゼレンスキーとりました。
 
東京国際フォーラムのAホールときたら、こんなところで舞台みせるの?というくらい大きい場所です。(これは、劇場ではないですね。)そりゃ、B席でしたけど、42列ですよ。そのあと、まだ数列あるんです。本日は、オペラグラス当然持参です。
 
本日のは、プティパ版だそうで、道化とかお友達は登場しない、悪魔には勝つんだけど、最後は二人が死んじゃうバージョンです。3幕です。マシュー版の1幕と2幕が1幕としてまとめられて、インターバルは2回。当然ですが、始まる前の白鳥の影絵はありません。演奏がはじまり、ちょっと緊張感がはしるんですが、なかなか幕があきません。マシュー版からはいった者としては、幕が開かないかぎり、あ、もう王子の着替えの場面になっちゃうよと音楽の進みぐあいがあっちに重なってしまいます。やっと、幕があきました。カラフルです。赤を貴重とした衣装で、群舞の方やパドトロワの方々(この言い方、おかしいかも)が踊ります。何しろ、他をあまりにみてないので、レベルの比較はできませんが、とてもきれいです。鍛えられているというか、一糸乱れぬとはこのことですね。王子登場。さあ、ゼレンスキー、踊ってちょうだい!と、わくわく構えているのに、王子様、なかなか踊りません。歩き方とか、手の動きは確かに美しい、でも、わたしの言う踊る王子様じゃないんですよ。わたしは、そもそもバレエが好きなったきっかけは、映画’ニジンスキー’で薔薇の精の窓越えをみたこと。男性ダンサーは、跳んでほしいのです。が、ゼレンスキーおとなしく、まわりの方々が踊るのみでSwank Barの場面(ほんとうは、何ていうのだろう)もすぎ、森の場面であの白鳥のメロディーが流れはじめます。そしてマシュー版なら、Swanが美しく流れていく場面で、悪魔のロットバルト登場。なんと、ロットバルトって、このあともSwanが登場という音楽の場面で、けっこうでてきて、マシューはオデットより、ロットバルトの登場シーンに影響うけてんのかしらと、またまたはずれたことを思ったりしました。
 
オデット登場。遠くて、遠くてお顔まではわかりませんが、この遠めにみても一言でいうと、美しい。同じ白い衣装を着た群舞の中にいても、きらりと光る、いや光つづけているオーラを発しています。
またまたすみませんが、アダムみたい。ザハロワさんて、知らなかったんですが、バレエ知っている方なら、ゼレンスキーでなく、彼女を観にいらした方も多いと聞きます。アダムのSwanを観たとき、白鳥は男のもんよねと思っていましたが、白鳥の持つ、優雅さとか気品を女性が表現するとこうなるのだと納得できるような違った美しさです。細くて長い腕は、力強い翼ではないけれど、白い羽の一枚一枚からなりたっているんだと錯覚させられるようなしなやかさ。ザハロワさん、白鳥そのもの。オデットは、お姫様が魔法で白鳥にされたはず。白鳥でありながら、どこか高貴な影。美しさとどこか悲しげな儚さを秘めたその姿は、王子でなくても恋におちてしまうでしょう。
 
2幕。王子のお嫁さん選びの舞踏会。王妃と、家庭教師と3人で並んで、お姫様たちの踊りをみています。王子、試しにお姫様たちと踊ってみるものの、どうもしっくりこないし、心の中には、あの夜に出会ったオデットのことが。心が晴れない様子の王子様ぶりが、なかなかよいですゼレンスキー。海賊でみた時は、はつらつした人で、王子とかやる人とは知りませんでしたが、この白鳥の湖では繊細で、ひかえめな気品もあって王子様らしい人なんだと今回しりました。でも、もっと跳んで。
 
順番がオディールの登場とどっちが先だったか忘れましたが、スペインの踊り、ナポリの踊り、あと知らない踊りと各国の踊りが続きます。スペインの踊りは、かっこよかったです。男女のペアが、小気味よくフラメンコ調の音楽にのってきれのよいダンスです。このままマシュー版に移植したいくらいです。ナポリの踊りは、マシュー版って、すっかり中味(ストーリー)はかえつつ、、原型はこうなんだと基本形を踏襲していることを感じました。
 
そして、オディール登場。オディールもザハロワさんです。重ね重ねですが、こっちもアダムのStrangerを思い出させるきれのよさです。あの優雅な気品の白鳥が、こんどは、きりっとナイフのようなきれのある女の舞なのです。王子は、オデットと思い込むわけですが、たしかにオデットとは違う鋭さを感じます。ひとまわり、大きくさえ感じます。もしかして、ザハロワさんて、ゼレンスキーと同じくらいの身長かしらと思って、ふたりで並ぶと、ゼレンスキーがちゃんと背が高いというのに。宴もたけなわ、やっとゼレンスキーが跳ねてくれました。王子がやっと機嫌よく踊ってくれて、わたしもご機嫌でもりあがってきたところへ、おお、黒鳥の32回転です。数えました。実際は34回転くらいでした。それだけでなく、さらに王子踊ります。んー、いいです、2幕。そうしているうちに、王子はついにオディールとの結婚を宣言します。そこからが転落のはじまりです。王子の裏切り(?)に傷つくオデットのシルエットとともに2幕が閉じます。
 
3幕。再び森の中。王子との悲しい恋の終わりを嘆き語るオデットという設定らしいですが、あまり状況よくわかりません。群舞の中で悲しく踊るオデットの舞つづきます。ロッドバルトや黒い衣装の鳥らしき女性たちも白鳥にまじっています。王子がオデットを追って森へやってきます。二人がどうにかしてこの愛をとりもどし、つらぬきたいというのは、音楽のもりあがりからはわかりますが、踊りそのものからは、わかりにくかったです。ロットバルトが、いまいち、存在感がうすいんですね。なんでだろう?クラシックって、やっぱり形重視で、乱暴なこととかしないから?やがて、愛する二人は湖に沈み、悪魔も倒れます。よみがったりするのかなと思ったらそれはありませんでした。最後の音楽で、オデットを腕にかかえた王子が頬づりしてほしいと思うのは、やっぱり俗人の考えることでした。
 
初めての古典鑑賞。やっぱりマシュー版との比較みたいな見方となってしまいましたが、その比較の面白さを別にしても、なかなか楽しいものでした。音楽と舞台美術とダンスとが整然と融合している規律正しい気持ちよさのような感じ。そして、ザハロワ&ゼレンスキーの気品あふれるカップリング。少し作品もお勉強して厳選して、このような舞台ならバレエはもっと観たいと思いました。
update:
2005/01/10



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