Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [119]   オペラ座の怪人 ロイドウエーバー版 ロンドン公演
12月29日ソワレ30日ソワレ
Her majesty theater(ロンドン)
Phantom : John Owen-Jones
Christine : Katie Knight-Adams(29日)  Rachel Barrell(30日)
Raul : Oliver Thornton
Carlotta : Sally Harrison Piangi : Rohan Tickell
Madame Giry : Heather Jackson Meg Giry : Claire Tilling
Monsieur Firmin : Richard Hazell Monsieur Andre : Sam Hiller
 
このミュージカルもあまりに有名でありながら、今回初観劇です。きっかけは、何を隠そう、オリバー君がでてるから。6月に観たアンジョルラスの美しい逆さづりが忘れられず、9月に最後のアンジョルラスを観てこれが最後かなと思いつつ、またきちゃいましたよ。大まかななあらすじを知ろうとロンドン版CDや劇団四季版のCDを聞くと、曲がすごくきれいで、渡英が近づくにつれ、胸は高まるばかりです。
 
おなじみ、オークションの場面から始まります。老人になったラウルが車椅子にのって、おサルさんのミュージックボックスをなつかしく眺めます。老人のがらがらかすれ声だけど、ああ、オリバー君の声だ。そして、ロット666、シャンデリアの落札場面です。派手です。さすが、ウエストエンド生まれのオリジナルミュージカルだ。エンターテイメントとして、見せます。でっかいシャンデリアが、舞台から高い高いハーマジェスティシアターの天井にむかって吊り上げられます。おなじみの音楽が鳴り響きます。舞台には、稲妻が走り、オークションのセットからハンニバルのセットへとかわっていきます。
 
舞台はオペラハンニバルのリハーサル。カルロッタとピアンジって、こんなおデブな人たちが演じてたんだ。ま、オペラ歌手らしい。劇中劇のハンニバルで、妙にダンスがうまくて目立つ背の高い人がおりました。この方は、単なるアンサンブルですが、Luke Jacksonという人だって。ちょっと将来楽しみな感じ。アンサンブルといえば、結局2回ともみつけられなかったんですが、オランダ版エリザベートでルドルフを演じたJoroen Aartsという人もいたらしい。ラウルのアンダーもやっているらしいので、ちょっと観たかったりしたけど、オリバー君をとるかルドルフをとるかといわれたら、やっぱりオリバー君よね。
 
クリスティーンは、ファントムが愛してやまず、ラウルととりあう美しい歌姫という設定なので、どんなきれいな女優さんがやるんでしょうと思っていた。ケンヒル版の人は金髪でブルーの瞳、典型的なお人形みたいな人だったし。が、ファーストのラケルさん(?)は、パンフでみてもたいしたことないし、お化粧しても、とびっきりの美人とはいいがたかった。セカンドのケイティさんは、映画のクリスティーンタイプ。かわいさでいうと、メグ役の人のほうがうんとかわいかったです。が、クリスティーンでもっとも大事なのは、歌。これは、両方すごかったです。ものすごい声量と体力ないとクリスティーンの役って、乗り切れないんじゃないかな。Phantom of the Operaの最後のほうで、’Sing, Sing!'と、ファントムに指示されて、’Ah〜Ah、AhAhAhAh〜’の場面は、見ているこっちが窒息しそうになるくらいでした。
 
ファントム役の方は、ちょっと予想とはずれました。CDで聞いたマイケルクロフォードのファントムって、とっても高音で、音楽の天使ということばにふさわしい感じ。ジョンオーエンジョーンズさんは、普通にうまい人。ケンヒル版のピーターさんみたいなしみる感じじゃないです。悪くはないんだけど、ファントムの歌にぐっとくる場面がなかったのはなんだか残念でした。
 
そして、待ってたよ、このときを。アンダーで歌うクリスティーンをオペラ座のボックス席からみつめる美しいお方。オリバー君です。ラウルは、子爵なので、常に正装。黒い燕尾服、白い手袋、外出のときは黒いロングコートに皮の手袋、帽子。いいところのお金持ちのお坊ちゃんらしい自信と気品にみちあふれ、そりゃ、クリスティーンでなくても、好きになっちゃうよ。ラウルは、ファントムと対象の位置付けなので、くやしいくらいかっこいい男でないとだめなのだ。ラウルは、生まれながらに、その美貌と財産を併せ持ち、何なくクリスティーンの心もとらえてしまう。ファントムのくやしさが手にとおるようにわかるような男だ。神様って、残酷すぎる。あんなに愛して、歌姫として育てて、そのチャンスを与えたファントムの気持ちをあっさり裏切り、どうしようも勝てそうにない男に走るあんな女を愛させてしまうなんて。ラウルがクリスティーンと愛をたしかめあうために、屋上にのぼってキスをする場面を目撃するファントムが切ない。だって、ラウルのキスって絵のように美しいんだもの。クリスティーンの裏切りは悲しいし、ラウルにはかなわないし、どうすればいいんだようと、オペラ座のシャンデリアの紐を切るファントム。こわいです。あの高い高いハーマジェスティシアターの天井から、冒頭で吊り上げられたでっかいシャンデリアが客席めがけて落ちてくるのです。事故で、ほんとに客席に落ちたらどうなるんだと思っていたら、大丈夫、ちゃんと舞台に着地して、一幕おしまいです。
 
オリバー君、美しいです。声は、高くて、ちょっと細め。声量がないのか、他の人と重なるとちょっと聞こえづらい。線の細いラウル子爵らしい感じ?それにしても、彼の美しさ、説得力あります。ラウルが美しければ、美しいほど、ファントムの悲しさは増していくのです。
 
2幕は、マスカレードです。華やかさが舞台いっぱいにひろがり、みんな仮面で扮装して日常でない自分を演じています。見せ所満載ですね〜と、いいつつ、オリバー君を追っていたので、正直、舞台全体はちゃんとみておりませんでした。隣の人って、どこみてんだろう?と自分と違う向きを不審に思ったら、なんのことはない、わたしがオリバー君をおっていたので、通常とは違う方向をみていただけでした。マスカレードが終わると、ファントムが自ら書いたオペラのリハーサルが始まります。この辺の記憶は、あいまいなのですが、リハーサルのときにもめたりとかしているうちに、そうだ、ファントムをつかまえようということになり、クリスティーンを歌わせればでてくるんじゃないかということになる。クリスティーンは嫌がり、無理強いはだめだよとラウルに甘やかされているうちに幕があく。そして、舞台中にまた殺人がおきて、クリスティーンはファントムに連れ去られてしまう。この辺の演出も派手派手です。花火がシューと舞台上にあがって、こっちは思わず目を覆ってしまったり、ファントムの館に向かう湖にはろうそくがほのかに、光っていたり。霧がたちこめる舞台は、前のほうでみていると、咳き込みそうになるくらいです。ドライアイスかな?
 
ファントムを追いかけて、クリスティーンを救いに行こうとするラウル。上着を脱ぎ捨て、ネクタイをはずし、白いシャツの胸をはだけ、湖に飛び込みます。まあ、オリバー君たら。ファントムの館で、鉄格子ごしにぬれた髪でたつ、オリバー君、いやいやラウルの美しいこと。こんなときまで、くやしいじゃないですか。ファントムの憎しみとくやしさは頂点に達します。そして、ラウルを鉄格子の中にいれ、首に縄をかけます。あれほど、マダムジリーに目の高さに手をあてて用心してねといわれていたのに。そして、クリスティーンに、ラウルの命を助けたければ自分の花嫁になるのだと選択を迫ります。クリスティーンは、苦悩しつつも、その悲しい愛の前に、ファントムの唇に自分の唇を重ね、長い長いくちづけをします。ラウルは、もう息絶えそうに気を失っています。このときのクリスティーンは、ラウルの命を助けて、自分の愛をつらぬきたかったというより、この哀れな醜い男がかわいそうでその深い愛の切なさにうたれていたのではないかと思います。くちづけする前に歌う’pitiful crature of the darkness, what kind of life you have known? God give me the courage to show you , you are not alone'が、悲しいんです。こんなふうに言われてキスされたら、こんな強引な方法で愛を勝ち得ようとした自分が惨めで、哀れになるのは当然です。ファントムは、ラウルの首にくいこむ縄を焼ききり、二人を解放します。
 
一人残されたファントムは、おサルさんのミュージックボックスをかけます。'Masquerade, Paper faces on parade... Masquerade.. hide your face, so the world will never find you.'
仮面に隠れていれば、誰もあなたをみつけられないという言葉が悲しい。マスカレードのあの華やかさの影に、こんな悲しい人生があったのだとそのミュージックボックスが語るようです。クリスティーン、クリスティーンと泣いているファントムの後ろに、クリスティーンをのせて、ラウルが漕ぐボートが静かにすすんでいきます。ボートの上で、二人はいっしょに生きていこうねと誓いあう歌を歌います。ああ、悲しすぎる。ファントムは一人叫びます。’it's over now, the music of the night'
 
オペラ座の怪人って、こんなに悲しいお話だったのね。ファントムは、クリスティーンを愛するあまり、人を殺したりとか悪いこともいろいろするけど、クリスティーンを思う心は誰にも負けないのに。一番、かないそうにない男にとられてしまうなんて。ラウル、罪な男だ。無邪気に天があたえられてくれたものだけで、クリスティーンの心を奪ってしまう男。オリバー君、実にぴったりの役でした。アンジョルラスのカリスマ美青年もよいけれど、まあ、あっちはいろんな事情で必ずしも美しい人がやらない場合もあります。が、こちら、ラウル子爵は、絶対かなわない、ファントムの嫉妬の炎を燃やす美しい男でないといけないのだ。いい役に出会ったね。おいしい役です。誰でもできるというわけではないと思うよ。ラウルのように天から与えられた美しさと選ばれた者にだけ許される役。今回の渡英目的、120%達成、オリバー君との嬉しい再会の作品でした。
 
 
 
 
update:
2005/01/04



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