2004年12月29日 マチネ
Sadlers Wells Theater(ロンドン)
Swan&Stranger:Jason Piper The Prince : Christopher Marney
The Queen : Oxano Pachenko Girlfriend ; Leigh Daniels
Private Secretary : Alan Mosley Young Prince : Simon Karaiskos
サドラーズウエルズでSwanを観ることは、何か自分の中では特別な思いがあった。再演が決まってアダムであることを疑いもなく信じてとった公演が延期になり、十周年といのにその先がみえないでいた。やっと再演が確定したとき、アダムの名前はなかった。それでも、マシューボーンが自ら手がけたSwanを是非、その発祥の地で観ない事には、アダムが出ないでいることを乗り越えられないような気がしていた。
白鳥の影絵のうつるカーテンをみつめて、あの出だしの曲の演奏が始まると、涙がにじんできた。いつでも、この瞬間は胸をしめつけられるような切なさが迫ってくる。その日のSwanが誰であろうとも、この瞬間は、あの2度目の日アダムを待って待ってやっと再会できる時の緊張感を身体が思い出すのだ。そこがサドラーズウエルズでもソウルのLGセンターでもすべてがBunkamuraの一瞬に逆戻りする瞬間だ。
ひとときの感傷にひたっていると幕があいて幼年王子が登場する。本日は、サイモン君。もうそろそろ、少年役には限界かな。そして、ベッドの後ろに現れるSwan。ん?翼に見えないよ。と、ささっといやな予感が走る。が、気をとりなおして、おちついて、、、。見慣れた王子の日常が始まる。ああ、なつかしい。聞きなれた音楽にのって、マシューのユーモアいっぱいのダンスの始まりだ。女王は、オクサナパーチェンコさん。この方は、リヨン以来ですね。我々日本人には初です。オリジナルのフィオナチャドウィックさんに近いような感じ。女王の落ち着きと冷たさがあり、お母さんぽさも見えます。韓国のサランの女王は、どうみても若奥さんだったから、本来女王はこうあるべきというのを久しぶりにみました。
そして、マーニー王子登場。東京公演で、サイモンからトムにかわったとき、一瞬であまりにふけてしまい違和感があったけど、こちらは、マーニー王子若すぎて、え、大人になったの?と見過ごしそうです。マーニー王子、今までみた中で、一番少年みたいな人でした。ベンライトが傷つきやすくガラスのような王子とよくいわれていましたが、(わたしは未見)、マーニーも幼さすら残る大人になりきれない青年の苦悩がよくでており、わたしとしては、マーニーは合格です。アンドリューのような優雅な王子の舞はみられず、ダンスはまあまあですが。母の愛に飢えた私生活、はじめてのGFとの出会い、裏切り、Swanとの夜に知った生きるよろこび、Strangerへのゆがんだ愛、最後にSwanと共にむかえる死。マーニー王子は、とても素直にこれらを受けとめ、21歳の青年らしく、はじめてこのSwan Lakeのイメージするところの王子に出会ったように思います。トムはふけてたし、スコットもすてがたい名王子ですが、21歳にはみえなかったし、アンドリューはきれいすぎで、それぞれよいといえばよいのだけれど、、王子としてより、そのダンサーとしての魅力のほうが勝っていたような気がします。少年と青年の間の暴走と感傷をもっとも素直にあらわしていたのが、このマーニー王子ではないかと思います。別にマーニー愛おしいってことはないんですが、こんな素直な王子ならアダムに恋させてあげたかったな。本当のSwanは、もっともっと美しく、Strangerは、もっとこわくてセクシーな人なのよ、マーニー。
GF役は、リーダニエルさん。かわいいです。今回は、前から3列目だったので、くるくるかわるガールフレンドの表情がよくみえました。無邪気で、奔放で、マーニーを誘惑して踊るところは、本当のカップルみたいにほほえましい。
そして、何を避けているんだ。避けて通ることはできないでしょう。Swanですね、Swan。写真でみた猛禽みたいなホセより、首藤の番組でみた素顔のジェイソンのほうがまだかわいかろうとまあ、ちょっとくらいは期待してたのです。はあ、だめです、ジェイソン、わたしは。第二幕のSwanの舞を観ながら、何度うつむいてしまったことでしょう。Swanのソロの場面に迫力が全然ない。群舞にまじると見失いそうになってしまう。これは、初めてのパターン。アランは、踊りはカーマンばりの雑なSwanだったけど、大きいだけに見失うことはなかった。ジーザスは、小さいけれど、一羽だけラテン系の違和感といい、やわらかい優雅な舞といい、とりあえず、今までのSwanは、Swanなりの存在感ってものがどこかにはあったと思う。なんで、ジェイソンがSwanなんだろう?どうして、この人がわざわざ、Swanなわけ?群舞の踊りがますます迫力で、ホームグランドにいるせいか、のびのび野生の雰囲気を醸し出して生き生きしているのに、リーダーのSwanがこれはないんじゃない?なんで、ジェイソンなんだ?なんで?と、今でもわかりません。
じゃあ、Strangerに期待しよう。3幕、ここは、AMPがお金持ちになったね〜と実感したシーンです。お姫様の衣装一新。よりセクシーに、よりきらきらに、そしてお姫様たち、皆さん、とても美人で背の高い方ばかり。ファッションショーのようです。ハンガリーのお姫様は、あいかわらず眼帯つけていますが、髪の毛は金髪のショートです。スペインのお姫様は、今回、スペイン風の衣装からパンツにかわり、踊りもかわってます。イタリアのお姫様は、前も十分セクシーでしたが、今回はスカートもっと短め。女王もGFも衣装一新で、スヴァロスキー協賛なのでクリスタルきらきらです。
Stranger。うーん、背が低い。どうせなら、Strangerの衣装ももう、アダムのためにデザインしたのを一新して、新しいダンサーに合わせてあげればよかったのに。誰が演じようとも、必ずこの衣装は、アダムに合わせてデザインしたものだと思い知らせる衣装なのに。なんで、ここだけ踏襲してんのよね。そうだ、ダンスの振り付けも変えたほうがよかったかもよ。何もかも、どうしたって、どんなにがんばったって、だめです、わたし、ジェイソン。ヒスパニックのちんぴらが迷い込んできたみたい。演技は細かいんだけど、気品がないのよ。お姫様たちがより背が高くて美人ぞろいだから、Starangerがもてあそんでいるというより、お姫様にもてあそばれているみたい。なんかとってつけたみたいな3幕でした。ごめんよ、ジェイソン。あなたが嫌いなわけじゃないけど、あなたには似合いません。わたしが一番、ときめいたテーブルに足かけて女王様が超えていくあのダンス、はずしてたしね、君は。
4幕。群舞のSwanたちが、それはそれはよくなっていたことを実感。ベッドに群がるシーンのバランスのよさ、王子を集団でいじめる迫力、裏切ったSwanを殺しに行く憎しみ、集団でいながら、一羽一羽の思いがつたわるようでした。Swan Lakeはこれだよねと思う、群舞です。前にみた時は、2幕の群舞がよかったけど、今回はこの4幕のほうがよりよかったです。特にニック、きれいなダンスでした。で、ジェイソンね。4幕のジェイソン、悪くはなかったです。2,3と比べると4幕はいいかも。傷ついたぼろぼろ感がベッドからはいあがってきたときから現れており、同情ひきます。群舞の白鳥たちがより、獰猛により強くなっているので、ジェイソンをいじめる、いじめる。ジェイソン、ぼろぼろだけど、戦います。アダムは、傷つきつつ、実は誰よりももともと強かったリーダーSwanだから、なんだか強さを秘めていて、最後まで哀しくも崇高なSwanでした。(ああ、アダムのことは言うまいと決心していたのに)ジーザスは、王子を思ってわなわな泣くスイートなSwanだったし、まあ、それぞれ印象は違いますが、心にうったえるものがありました。ジェイソンは、何がうったえるって、そのぼろぼろ感。3幕のストレンジャーが貧民街からのしあがってきた不良成金なら、その過去を一身に背負って、やっとつかんだ王子との愛を守るぞというちんぴらの純情みたいな感じ。そうだ、このバージョンは、世間しらずのおぼっちゃま王子とちんぴらの純愛物語だったのだと、ちょっとじ〜んとしながら思い、幕が下りるのをみつめていたのでした。
ジェイソンが半端によかったりしなかったせいで、少しSwanもふっきれそうです。Swan Lakeとアダムを切り離さないとつらくて生きてはいけないとわかっていながら、Swanの公演を思う時、アダムの出演を願わずにはいられない。そんな長年の思いを今度こそ、どうにかできるかも。サドラーズウエルズは、大きすぎず、小さすぎず、Swanの公演にはとてもしっくりきて、ここでみれてよかったなと思う。Swan Lakeはやぱっり好きな作品だ。アダムの奇跡のようなあの日は、もうもどってこないとしても、また観てみたいと思わせる作品だ。できることなら、もう少し、ダンサー厳選してください、マシュー。Swan&Strangerを踊りたいダンサーは、たくさんいるはず。群舞の中にいても、きらりと光って目を釘付けにするようなダンサーで、Swan Lakeを見せてほしいものだと願ってやみません。
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