Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [135]   マイヤリング
2004年6月16日
ロイヤルオペラハウス(ロンドン)
Rudolf:Irek Mukhamedov、Mary Vetsera: Mara Galeazzi
Stephanie:Iohna Loots, Marie Larisch:Jaimie Tapper
Elisabeth : Genesia Rosato
 
本当の本当は、どんなにこの役をアダムにやってもらいたいことか。悲劇の皇太子ルドルフがマイヤリングで自殺をしたのは31歳だったそうだ。浦井君はほんの23歳、イレクはもう40超えてるはず。どっちもいいんだけど、実年齢からは遠いのよねー。
 
そんなことを心に秘めつつ、この日は、ロイヤルオペラハウスデビューしたのであった。海外の劇場に行くのは初めてではないけれど、このように大人がおしゃれして大人の時間をすごす劇場は始めてだ。そんなにかしこまる必要はないと思ったが、一応、イタリアで買った黒いドレスと、ちゃんとおばあちゃんにお祝いに買ってもらった真珠の首飾りと耳飾りをつけてでかけた。年齢層は、本当に高い。40代以上のおしゃれをした男女が主流だ。これは、演目のせいなのか、会場のせいかはわからない。この日は、今シーズンのマイヤリング最終日であったのだ。一番いいお席はお高いので、3番目に高いところ。1階より少し高いところにあるサイドの席だ。よくみえるけど、首もちょっと痛い。ちなみに今回兵士5回分のチケット15x4+5=65ポンドよりも高い66ポンドのお席です。
 
さて、ビデオで予習していたので、ちょっと聞きなれた音楽で幕があき、墓場のシーン。そこが終わると一転して、ルドルフの結婚式シーン。うーん、華やかです。TVの狭い画面におさまりきれなかった招待客たちが、ペアになって入場します。こういうシーンを見せるには、ロイヤルオペラハウスの赤と金を貴重とした劇場のデザインが映えます。
 
イレク、あのビデオから10年くらいたってるし、おじさんっぽくみえたらいやだわとか、おデブになってたりしたらいやだわと心配したけど、大丈夫、あのビデオのままのきりっとりりしい青年皇太子です。去年のOYTのバックステージでみせたおどけたおじさんが、この高貴なお方?と思えるほどの変貌ぶり。
 
ルドルフは、自分の結婚式なのに、わざとお嫁さん(ベルギー王女)の妹と踊って、父フランツヨーセフにたしなめられます。これ、ビデオでは、アダムの奥さんのサラが演じていて、めっちゃかわいかったけど、今回の人はま、平凡ですね。
 
そして、お式のあと、お友達で独立運動をしているハンガリアンオフィサーとのシーン。ここは、ビデオではアダムがでていたのだ。だからって、期待してはだめよと14日にみた人にいわれてた。ほんとだ。たいしたことないわ。全然かっこいい人いません。ひとり、日本人の子がまじってた。東洋人は、踊りがどうのじゃなくて、やっぱり違和感ありますね。今回みて思ったことは、こんなにハンガリアンオフィサーが出るシーンて大かったっけ?アダムが出るところって、え?これだけ?みたいなきがしていたけど、この後も数回登場するのであった。
 
そして、新婚初夜を前に母エリザベートの部屋をたずねるルドルフ。冷たいです、お母さん。エリザベートはいつも旅にばかりでて子供を自分で育てなかったことは、ミュージカルでお勉強ずみですが、ここは、それだけでなく、冷たいです。イレク、浦井君がママ、僕を助けてと手をとったときみたいに、エリザベートの手をとりますが、エリザベートは振り切ります。母に冷たくされる息子というのは、誰が演じても同じような悲しさをかもし出すのでしょうか?
ちなみに、エリザベートはやはりビデオの方が大変美しかったせいか、今回主要女性の中では美しいほうといえども、なんか負けてましたね。
 
部屋では、新婚の妻、ステファニーが待っています。待ちくたびれて、ちょっと不機嫌。そこへ傷ついたルドルフがやってきます。凶暴になってます。ここから、このバレエの最初の見所、マクミランならではの男女のからみ満載のアクロバティックなパドドゥです。これは、とても言葉では表せません。振り回したり、ステファニーが後ろからとびついてきたのをくるっとまわしてリストしたり、激しいリフトのあと、無理な姿勢でキスしたり。さすが、間近にみる迫力は違います。はっきいって、ここでイレクがぐらぐらしたらいやだわと始まる前は思っていた。ごめん、イレク。あなたのことを軽くみすぎていました。一流のダンサーというのは、どんなときも一流なんだ。10年前とかわりなく、いや、それ以上の情念をこめた印象的なシーンだった。
 
2幕。酒場のシーン。ここは、ビデオだと、ダッシーバセルの個性と、マシューハートのソロの踊りが印象的だったところだ。が、今回演じるお二人は、うすーいのよね。特にブラッドフィッシュの踊りねー。マシューってほんと、うまいダンサーだったんだと思うわ。背が低いからきっとプリンシパルになれなかったんでしょう。ハンガリアンオフィサーたちと、ふざけながらも独立運動のことなども話したりしていると、警察の手入れがはいる。ルドルフは酒場の愛人ミッツィーに導かれて姿を隠すが、どうもミッツィーはお城の人とつながって情報を流しているらしい。
 
ひそかに帰るルドルフを年上の元愛人マリーラリッシュがみつめており、何かたくらんでいるらしい。マリーラリッシュって、ビデオでは、レスリーコリアさんという顔も行動も岡本麗そっくりなおばさんだった。が、今回の人、なんか若いです。岡本麗さんは、年下の愛人をもてあそび教育し、あやつろうとする野心にみちたおばさんだったけど、今回の人はおばさん感うすいです。悪くはないんですが、この若さがあとでわざわいします。
 
岡本麗じゃなかった、ラリッシュ夫人のたくらみは、若い伯爵令嬢17歳のマリーベッツェラとルドルフを引きあわせることです。ラリッシュ夫人は、ベッツェラ伯爵の家をたずねてマリーの母に会います。ビデオでも映画でも、お母さんおデブでおばさんだったはず。が、なぜか今回ばかりは、エリザベートとかわったほうがいいなじゃないでしょうかというような美しいお母さんでした。マリーベッツェラとラリッシュ夫人とお母さんのシーン、退屈です。Kさん、この辺から寝てました。何がどうって、このマリーベッツェラ、かわいくないです。ふけているんです。で、ラリッシュ、若いでしょ。ふたりでいても、狡猾な元愛人と無垢な少女の図にならないのです。
 
舞台はかわって、ゾフィーおばあさまのお祝いの会になります。ゾフィーって、ルドルフが死ぬ年まで生きてたんだっけ?とミュージカルと食い違うところを感じつつ、とりあえず会はすすみます。エリザベート、どうやら愛人がいるらしい。ルドルフは敏感にもそれに気づき、がっくりして落ち込みます。それをラリッシュ夫人がみています。そして、オペラのシーン。これは、余計。ほんとにオペラ歌手が歌って、なんか人生のむなしさに一同、自分の胸に手をあててじーんというシーンですが、なんかこっっちは退屈。落ち込むルドルフにラリッシュ夫人はマリーベッツェラの手紙をわたし、後日二人は会うことになります。ルドルフといえば、悲劇の皇太子。落ち込むときのシーンは、イレク、最高です。
 
3幕。狩のシーン、あやまって銃を発砲し、家来の一人を殺してしまう。ルドルフの屈折した一面がかいまみえる。
 
ルドルフは落ち込んでいる。薬でもうろうとしているところへ、ラリッシュ夫人がマリーベッツェラをつれてやってくる。元の年下の愛人は薬でふらふらになり、心もぼろぼろだ。ここは、Kさんのツボだったようです。ラリッシュ夫人は、突然はいってきたエリザベートに追い払われてしまいます。が、マリーベッツェラには気づいてない様子。再会。マリー、たしか17歳だったよね。が、コートをぬいただらいきなり黒い下着姿だ。なんかで、マリーは純粋無垢な少女と書いてあったが、そんな夢みる少女が男に会いにくるとき、黒い下着だけでやってくるだろうか?ここから、またもうひとつの見せ場、初夜につづく、激しい男女のからみ、情熱のパドドゥが始まる。一幕での初夜の激しさは、ルドルフの行き場のない悲しみやいらだちをステファニーにぶつけており、夫の愛を求めるステファニーがかわいそうな感じがした。が、3幕のこのシーンは、マリーとルドルフは愛しあっており、その情熱があふれているものの、なぜか刹那的な、死のにおいさえただよう、それだけに生の一瞬の強さのようなものを感じた。マリー役は、あんまり魅力的とはいえないけど、イレクの最後の怪演とも思える激しさにうたれた気がした。
 
マリーを殺し、自らも命をたったルドルフ。最後は、墓場でブラッドフィッシュがマリーベッツェラの死体を片付けながら、悲しむシーンで幕を閉じる。
 
全体的には、10年前のキャストは最高だったのだと認識させられたようにおしなべて個性うすく、配役は適切とはいえなかった。今回は、イレク最後のマイヤリングといわれており、イレクだけはすばらしかった。わたし的には、イレクのタイプの体型はだめなんです。ぷくぷくって感じ?あーゆーダンサーには感動できないと思っていた。が、ごめんね、イレク。あなたを軽く考えすぎていた。才能と経験と感性にうらうちされたものは、好みすらこえてしまうのでしょうか。おじさんすぎて、ルドルフには似合わないと思ってたけど、とんでもない。マイヤリングのルドルフといえば、ずっとイレクの名があがるんだろうなとつくづく思った。
 
最後の日といのは、カーテンコールのとき、お花がじゅうたんのようにロイヤルボックスの上のほうから投げ入れられる。降ってくるお花をあびながら、感慨深げなイレクが印象的だった。ノーブルだった。胸に手をあてて、感謝のポーズをとるところは、じーんときた。
 
思えば、ちゃんとしたフルレングスのバレエを見るのは初めてだった。知識もないし、どうかなと思っていたけど、ミュージカルと同じように、いや静かに深く感動した。マクミランの情熱とイレクの才能に乾杯!
 
用語解説
ルドルフ皇太子オーストリアハンガリー帝国のフランツヨーセフとエリザベートの息子。父母の愛に飢え、皇族としての窮屈さと孤独から、いくつかの恋愛遍歴の後、少女マリーベッツェラと別荘マイヤリングで心中する。ミュージカルエリザベートでは、ルドルフの恋愛や結婚は描かれていない。
マクミラン:この作品の振り付けをした人。
update:
2004/09/19



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