2003年5月31日 マチネ
LGアートセンター(ソウル)
ザ・スワン/ザ・ストレンジャー:ジーザスパスター
王子:アンドリューコルベット
やったー、いきなりの組み合わせ。
東京公演でも書いたように、わたしはアンドリュー好きなのです。
アンドリューは、今回、後半のみで、おまけに怪我しただの、病気だのという噂がとびかい、ジーザスも小指怪我しているとか、おなかこわして出なかったとか、もう、もろもろ心配の種はつきない中、LGアートセンターロビーの配役表の前で、喜んでいるのはわたし一人ではなかった。
この日は、2階最前列。ここは、このホールのVIP席、日本でいうところのS席です。よいです、遮蔽物なしで、舞台全体みえるし、遠くない。オペラグラスもほとんど必要ないかも。
おなじみの白鳥の影絵の緞帳をみると、’あー、帰ってきたんだわ’と思い、SWANのメロディーが流れはじめて、斜めになったベッドの王子がみえて、’あー、始まるんだ’とあの感覚が体中をかけめぐりはじめます。
そして、王子の後ろで羽ばたくSWAN登場。
2度目のジーザス。
一幕。
ベッドの後ろで羽ばたいた後は、しばらく登場しません。
一幕は、王子中心ですので、アンドリュー。
相変わらず、スマートで踊りがきれい。
彼は一番、王子様らしくて、ノーブルで、ただそれだけに、物語的には、どうして宮殿でみんなに虐げられるのかわかんないという、外見で損してます。
そして、これって、SWANの一幕の終わりっていうか、二幕の最初っていうかわかんないんだけど、あの有名な白鳥の湖のメロディーにのって、SWANが池をすべっていくシーン。
月の光をあびて、すごーく静かに上半身を揺らしながらすべっていきます。
アダムの場合、いきなりの美しい横顔で、やっぱりきてよかったと最初に思うこのシーン。
ジーザスのSWANもまた全然ちがってSweet。
そして、王子との出会い。
東京で最初にジーザスの印象、クラシックのテクニックに裏打ちされたしなやかで美しいバレエなダンス。
東京ではアダムと同じ振りをしているのに、全然違うわととっても新鮮だった。
そして、今回、それはもう完全にジーザスのための振りといえるくらいしっくりきていた。
二幕は、クラシックで踊りこんだダンサーでないときっと演じきれないと思う。
王子がみるみる恋に落ちて行くように観ているこちらもジーザスのSWANに魅了されていきます。
そして、王子とのパドドゥ。
わたしが、4公演中一番この回をおしたのは、このためです。
アンドリューもロイヤルで鍛えたクラシックの人だから、そのふたりがパラレルに舞う様はひたすら美しい。
やわらくて、優雅で、強烈な群舞の中にいても、ひときわ線が美しい。
この二人のこのマチネは、たとえてゆうなら、細くてでも強い絹糸、音楽でいうなら、ハープで奏でるメロディー、繊細だけど力強くて、月光の中の水面のようなほのかだけど、確かな輝き、そんなイメージでした。
二幕の最後、生きる喜びをみつけた王子が踊るシーン、アンドリューは羽ばたく真似するのです。
これは、アンドリューだけしかやらないみたいで、トム王子はやってませんでした。
なんだか、かわいい好きな振り。
三幕。
うーん、またまたラテンなストレンジャー全開。
お姫様たちや女王にからむひとつひとつの仕草が、エロティック。
これは、お国柄なのか、一朝一夕に身についたものではないでしょう。
長い歴史、ラテンの男たちはそうやって大人になっていったのね。
ま、自分的には、こういうあからさまな男にはひかれませんが。
そして、この三幕こそ、アダムのために振りつけられ、アダムのためにデザインされた衣装。
首藤さんの時、はじめて気づいた。
この三幕って、ダンス的のもかなり大変。
手足ながくて、テクニックないと踊りきれません。
ジーザス、やってくれました。
アダムのためのストレンジャー、まったく別のラテンなノリで、何の違和感もなく。
ただ、アダムストレンジャーの持つ、毒をふくんだ悪さはちょっと希薄。
このため、悲劇につづく流れが王子の妄想の中で起きた感が強くうちだされたように思えます。
四幕。
やられた。
東京公演の時、この若きSWANがもっと年齢を重ねて、アダムのように深みをましたSWANをまたみたい
と思ったけど、こんなに早くその姿をみることになろうとは正直全然思っていなかった。
あれから、たった一ヶ月半しかたってないのに、どうしちゃったのジーザス。
韓国きて調子悪いとかいわれながら、何、この悲しくて、甘くて、切ないSWANは。
たくさんたくさんいろんな人がアダムを含めてSWANを演じ、いろんな人が王子を演じてきたけど、こんなにも
王子を愛してくれたSWANがいただろうか?
SWANが命をかけて王子を守ろうとして力尽きて行く姿の哀しさは、今まで、一番かもしれない。
アダムはもう神話の領域なので、アダムSWANと比べてどうこういうことはできないのだけれど、この日のマチネは、新たな伝説の誕生の瞬間だったと思います。
四幕の最後にSWANが王子を抱きながら幕が降りる瞬間、涙がほほを伝わっているのを感じました。
アダムの時のように、もう感きわまったというのでなく、すごーく自然にゆっくりと涙が流れました。
誰が何をいおうと、もう、いきなりのスタンディングですよ。
二階席で一番にたつわという心意気の感動です。
韓国きてよかった、またSWANを追ってきてよかった、ジーザス&アンドリューありがとう!!!という気持ちで
拍手を送りました。
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