Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [15]   蜘蛛女のキス
2007年11月2日 ソワレ
東京芸術劇場(東京)
モリーナ: 石井一孝 ヴァレンティン: 浦井健治
オーロラ:朝海ひかる モリーナの母:初風淳 所長:藤本隆宏
 
暗黒の2ヶ月ともいうべき、劇場通いのない日々がすぎ、楽しい楽しいシアターライフの再開です。第一弾は、10ヶ月ぶりくらいかな、浦井君のミュージカルです。
 
この作品は、アカデミー賞とかとりませんでしたっけ?ウイリアムハートが主演のをみたことありますけど、話けっこう忘れてました。あと、村井国夫と岡本健一君がず〜と前に演じたのも聞いたことありますね。ミュージカルでは、市村さんと宮川さんもやっているらしいのですけど、今回は、初めて日本人の演出だそうです。ブロードウエイミュージカルといえども、ブロードウエイ版とは結構異なるようです。
 
舞台は、南米の刑務所です。わなにはまってわいせつ罪で服役するモリーナと政治犯として投獄されたヴァレンティンのお話です。モリーナは、映画女優のオーロラにあこがれており、展開の端々にオーロラが実際に登場します。さっさと結論をいっちゃうようですけど、これ、ミュージカルじゃないほうがよかったな〜と思いました。これ、スペインで戯曲化されたときや、村井&岡本コンビの時は、2人芝居のストレートプレーだったそうです。そっちで、観たかったわ。物語としては、とてもよかったし、主演のふたりもよかったし、かなりぐっときたのですけど、端々に登場するオーロラがはっきりいって、じゃまでした。二幕は、オーロラの登場がおさえられていたので、あまり気にならなかったけど、一幕は、なんかいまいちなダンスをみせられて、なんだかなでした。朝海ひかるさんというのは、元宝塚の人とかで、今日はその筋のお客様が多かったです。だけどね〜、存在感もないし、小さいし、これがモリーナのあこがれの人というにはあまりに印象弱い人でした。まあ、あえてオーロラをビジュアルでみせるならば、もっと魅力的でオーラのある人を選んでほしいものです。
 
石井さんは大変よかったです。今回は、歌できかせる部分はなかったので、演技がよかったということです。浦井君もよかったな。大人になったよね。ヴァレンティノというのは、こういう若い役者さんにはおいしい役だと思います。実力がある程度ついてきたら、こういう役をやると絶対よくみえますもん。まあ、浦井君がそれをちゃんとやれるようになったってことなんですけどね。特に二幕後半部分で、モリーナが出所する前夜と当日のやりとりは、胸がうずくほど切なかったです。ヴァレンティンの抱擁が駆け引きなのか、心からモリーナを尊重してなのかは、はっきりとはわからないというのが、またまた切ないのです。モリーナもまた、ある取引をして手にいれた出所を後ろめたく思う思いと、ヴァレンティンへの愛とまじりあって、複雑です。この2人のやりとり、心の動きが絶妙で、今回の舞台のもっともよきところでした。この歌のない場面、オーロラの出てこない場面で、息もつまりそうな緊張感のある感動を思うと、ミュージカルでなく二人だけのストレートプレイなら、作品全体がひきしまるのになと思わずにはいられなかったのでした。
 
基本的に、ストレートプレイよりもミュージカルのほうが好きだし、石井さんや浦井君の歌が聞けなかったら寂しかったとは思うものですけど、このように作品によってはストレートプレイのほうがよい場合もあるのだなと知りました。レベルもお話もよかったので、別の形で石井さんと浦井君が演じなおしてくれると嬉しいんですけど。それにしても、こんなふうに大人になった浦井君が、今度はどんなルドルフをみせてくれるのだろうかと楽しみに思っています。
 
 
 
 
update:
2007/11/02



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