Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [17]   アビアント 牧阿佐美バレエ
2007年8月25日
新国立劇場(東京)
 
カナヤ:田中祐子 リアム:ロバートテューズリー 
冥界の女王:吉岡まな美 
 
怒涛のバレエ月間も来週のロシア2大バレエの合同ガラまで、ひと休みの方々が多い中、わたしは一人、この公演に行きました。8月は、バレエチケットにどれだけ使ったことか。アダムが来日しているわけでもなく、海外で公演みているわけでもないのに、この公演数。日本の夏は大変です。
 
この公演、初演の時は、見てないので、初です。思えば、牧阿佐美バレエ団も初です。日本のオリジナルバレエだし、退屈だったらどうしようかしらと思いつつ、一人でも行こうと思ったのは、テューズリーが見たかったから。フリーのダンサーは、見れるときに見とかないと、いつ急に見れなくなるかわかりません。(誰のこと??)日本のバレエ団の相場も様子もわかりませんけど、発売日に予約したら、最前列のど真ん中、思う存分彼のダンス、堪能させていただきました。
 
どういうお話かさっぱりわかりませんので、開演前にプログラム買って、ざっと読んだところによると、死んでも、死んでも、まためぐり合うお話らしいです。これ、故高円宮殿下を悼んで、作れられた作品らしいので、殿下の死を悲しくしないためにこういうお話作ったのかなとか思いました。バレエは、わりとお話がわかってないと理解しにくいですが、この作品は、読んでないと絶対わからない話です。また、いい加減に後半読んでいたせいで、ちょっとわかりにくいところもありました。いろいろと考えると、お話はつまんないです。あと、音楽もあんまり好きじゃないかな。お話と音楽がだめってことは、作品としては、いまいちといえばいまいちですね。
 
が、みていて、つまんなくはなかったです。最初は、牧のダンサーさんは初めてなので、細々観察していたのです。日本のバレエの人は知らないとはいえ、牧の男性ダンサーは、なんでかみたことある人がいっぱい。小嶋さんは、こうもりでみたし、菊池研君は、アダムと対談してたし、森田さんは、この前コッペリアの時ロビーでみたし、逸見さんはなんだか知っていた。あと、新国立でうまい日本人だと思っていた外人のマイレントレウバエフさんは、名前は初めてしったけど、こうもりでみました。女の人は、お化粧するから覚えられませんね。ま、そんなことはよしとして、牧の人々、踊りはきれいでした。今回は、お衣装がクラシックじゃないので、日本人の顔大きい、手足短いをカバーしたデザインになっていたせいで、見た目も見苦しくなかったせいもあると思います。今回、女性ダンサーのドレスが、とてもラインがきれいで、踊りを美しくみせており、よいデザインだなと思います。男性は、一部の場面をのぞいては、普通のスーツとか、革ジャンでした。ただ、なぜかテューズリーのお衣装だけが、変でした。青いシャツは、まあ目立たせるためだろうけど、白いパンツがあんまりきれいなラインじゃないのです。この人の場合は、やっぱりタイツがよいわと思いながらみていたのでした。
 
カナヤ役の田中祐子さんと、女王役の吉岡さんのメークがそっくりで、なんかこういう系統にしてあるのかと思いましたが、女王はいいけど、カナヤは、おばあさんぽくみえて、あまり共感できませんでした。お2人とも、踊りはきれいなのです。女王は、冷たさが出ていて、そのメークともあっているしよいなと思ったのですが、カナヤは、あんまりリアムに対する悲しさとか、愛おしさがにじみでるような表現でなく残念でした。この役は、もっと情感豊かに演じてもらいたいです。カナヤが、死を超えても愛する人を思い続けることが骨格にあるというのに、非常に残念です。お話がちょっと複雑に展開しすぎるのもいけないんですけど、コンセプトが壮大なわりには、深みにかけていたように思います。基本的には、コールドの女性達もよく踊れていたし、全然違和感はなかったので、あとは表現力がありスター性のある女性ダンサーがいればいいのにと思いました。
 
男性ダンサーについては、まあコールドは日本はしかたないねという覚悟はできていたので、あんなもんでしょう。とはいえ、東バの白鳥の時よりは違和感なかったです。お話が現代っぽいので、ミュージカルとかマシューボーンのところの作品をみている感覚でみていたように思います。あまり、バレエぽい振りもなかったのかな?と、いうのは、テューズリーが出るとそっちに気をとられ、それ以外に目がいきにくいのであまりわかってないのでした。あいかわらずトレウバエフ君はうまかったです。京富君という子もうまかったです。ただし、彼はクラシックっぽいところではなかったですが。
途中で、上半身裸で、下がタイツという4人組があったのですが、まだバレエダンサーの身体になってないなと思えました。男性は、バレエダンサーの身体が一番美しいと思うのですけど、若い彼らは、まだ上半身の鍛え方がたりない感じ。リフトが足りないのだろうか?これは、ちょっとした発見でした。バレエダンサーなら、あーゆー身体が普通だと思っていたものが、実は、年月とテクニックとともに作れたものなのだと認識させられたのでした。
 
で、本日の大目的、テューズリーは、よかったです。最初、1幕の前半、あまりに踊りが少なく、踊って、踊ってと思うけど、なかなか踊らないのです。歩いている姿は、クラシックバレエの歩き方なんだけど。やっと、ちょこちょこ踊りはじめて、そうそう、こういう姿が見たかったのよと久しぶりにクラシックな動きをする彼をみることができました。で、1幕後半、突然にサッカーをする場面があります。(不思議でしょう。こういう展開の物語なのですよ)。青いシャツを腕まくりしはじめると同時に、ちょっとびっくり、姿勢がクラシックじゃなくなったのです。そこもダンスの振り付けではあるのですけど、なんといえばいいのかしら?立ち姿、腰とか足がクラシックじゃないんです。普通のミュージカルとかのダンスモードになっている感じ?まあ、ダンサーっていうのは、場面場面で、身体の中の芯までかえちゃうんだわと、別の作品をみているような感覚でした。それがまた、いいんですわ。クラシックの基礎のあるダンサーって、何をやってもはえるじゃないですか。これは、1つで2回分楽しい、嬉しい発見でした。二幕にはいると、ソロもあるし、カナヤとのパドドゥもいっぱいです。二幕前半は、’マノン’以来、いつもいつもクラシックっぽいダンスが少ないと欲求不満になっていたことをいっきに解消できたくらいいっぱい踊ってくれました。で、後半、3回目死んだあとに、白い短パンだけになって登場したときは、コンテンポラリーかしら♪と期待してしまったのですけど、ここもクラシックでした。上記に述べたとおり、彼は、完成した男性ダンサーの身体なのですよ。ダンサーは、身体さえもパフォーマンスの一部なのだね〜と再認識です。鍛えぬぬかれ、みがきぬかれた身体から、くり出されるダンスは、感動にもにた喜びを与えてくれたのでした。
 
作品そのものとしては、それほど魅力的とはいえませんが、もっと表現力に富んだダンサーをかかえる外国のバレエ団が演じれば、それなりに継続できる作品ではないかと思います。わたしとしては、テューズリーがいっぱいでて、見たいタイプのダンスを見れたので満足でございます。じっくり真ん前でみて、彼のことも飽きちゃったらどうしよう、眠くなっちゃったらどうしようとか心配したのは何だったのでしょうね。やっぱり好きよ、彼のダンス。11月までおあずけですけど。A bientot.
 
 
update:
2007/08/25



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