2007年8月17日
ゆうぽうと(東京)
オデット・オディール:上野水香 王子:マチュウガニオ
ロットバルト:ステファンビュヨン 道化:大嶋正樹
ルグリガラは、AプロとBプロだけでおしまいのつもりでしたが、お友達がチケットを譲りたいとのことで、マチュウだし白鳥も観ることにしました。新国立バレエの群舞はOKだったけど、NBAバレエのトラウマがあるし、どんなもんだろうとかなりチャレンジな気持ちでのぞみました。これから、牧阿佐美とか小林紀子バレエ団もみなくちゃいけないので、そろそろ日本のバレエにもなれとかないと。
このバージョンは、おそらくマリンスキーとかでやっているオーソドックスなプティパ・イワノフ版なんだろうなと勝手に思い込んでいましたところ、ところどころが大きく違っており、一体何版なんだか不思議なバージョンでした。プログラムには、振り付けプティパ、イワノフ、ゴールスキー、スミルノフと書いてありました。しかしながら、これは絶対ヌレエフ版だわと思う場面もあり、なんだかかなりいろんなバージョンをミックスさせたものであったようです。構成は、1幕2幕が続けてあって、休憩、三幕、休憩4幕でした。お話は、道化がでてきて、ロットバルトには戦いに勝って、ハッピーエンドの方のお話です。家庭教師はちょこっとでて、お友達はでないバージョンです。
昨日の幕ごとに王子とオデットがパリオペの人々が交代でやったバージョンでは、道化のマチアスエイマン君が大変よかったそうです。本日は、東バの大嶋さんという方だそうです。よく動いていて、演技もなかなかといえると思いますが、わたし的には道化は出てこないほうが好きなんです。出てくるなら、もっと技巧満載でバレエの技を見せまくってほしいところです。まあ、そこまでは東京バレエにはのぞんでないのでいいです。真っ赤な衣装で、なぜか俳優の佐藤隆太をイメージしてしまいなんだか佐藤隆太がずっと踊っているような錯覚におそわれました。それが作品の印象にたいして影響はしませんでしたが。当然ながら、パドトロワもお誕生日会のまわりの人々もみなみな東京バレエの方々です。白鳥の1幕は、わりとどのバージョンも好きなのですけど、東京バレエバージョンは、ちょっと辛かったです。見ごたえが薄いのですね。NBAバレエのようなどうしようもない見たくないような辛さはないし、基本的に動きはきれいと思うのですけど、華がないんですね。う〜ん、見せ場のない一幕だわと気持ちがのりません。
その中で、ひとりだけ異星人のように輝いていたのがマチュウです。日本人に囲まれると、ほんと、この子って、王子様みたい。お誕生日会の女性達、みんなみんなマチュウと踊りたいし、踊れると嬉しいっていう感じがするのです。王子様と踊りたい女の子たちみたい。ガラの時より、演技するマチュウのほうがいい感じ。王妃であるお母さんが、とってもご年配すぎて、おばあさまみたいでした。
一幕、みごたえないけど、まあマチュウみにきたからよしとしようとちょっと覚悟です。
二幕は、マシューボーン版をのぞいて、わたしは苦手なんですよ。白鳥の湖で二幕苦手というのは、バレエファンにはあるまじき不謹慎さだとは思いますけど。特に王子とオデットのパドドゥは眠くなるのです。上野水香さんは、今回初です。大きい人ですね。お顔はちっちゃいけど、背が高くて手足ながくて、体型や踊りは外人ダンサーのよう。残念なのは、顔のつくりでしょう。日本人顔で、メークすると老けちゃうようですね。あと、演技が冷たいんです。踊りはダントツに他のコールドとはとびぬけてうまいのですけど、オデットもオディールもぐっとくるものがなかったです。白鳥の湖はあわないのかも。もっと、コンテンポラリーみたいなほうがあっているような気がします。そういうこともあり、もりあがらない二幕です。
で、コールドの白鳥さんたち。なんだか、ひとつひとつの動きが少ないような気がします。音楽は別に普通のテンポなのに、ゆっくり感じるのは、実は2つのふりがあるところを1つにしているのではないかと思われるような密度のうすさなのです。動きそのものは、別に気になるようなばらばら感とか、ぐらぐらな不安定さなどはないのですけどね。一番びっくりは、足音。これは、白鳥じゃないでしょうというくらい、ものすごい群舞の足音なのです。密度がうすく、足音が大きく、見ごたえがないなんて、今日ははずれかなと思っていたのでした。
そんなわけなので、後半に期待はしてなかったのです。が、後半は、おもしろかったです。マチュウのオデットに恋して舞踏会であ〜あ、つまんない、オデットに会いたいという気持ちがありありとあらわれるお妃えらびの演技など大変よかったです。また、各国お姫様たちは、マチュウ王子と踊るのが、やっぱりすごい嬉しそうで、ここも東バレエの人々素で喜んでいるように見えました。後半で気持ちをおおいに盛り上げてくれたのは、ロットバルトの存在でした。このロットバルトは、どう考えてもヌレエフ版なんです。1幕2幕ではヌレエフ版はないのですけど、なぜか3幕だけは、お衣装もパリオペから持参したに違いない、パケット君が着ていたのと同じデザインのものでした。3幕のロットバルトは、長いマントをばさっばさっと音をたてて、その存在をアピールします。王子とオディールの間にわりこんでは、王子をじらします。そして、なぜか、王子とオディールの前にソロもはいります。こんなの、ヌレエフ版だけですよね。このロットバルトのソロの部分なんて、パケット君のDVDでさんざんみてますから踊りまでしっかり頭に刻みこまれています。ステファン、がんばっていたとは思うのですけどね、なんかちょっとたよりなかったです。こうしてみると、パケット君は実はうまかったんだとみなおしました。ステファン、ピルエットの時、よれっとなって、わたしの隣のご婦人、’あらあら’と声にだしていました。このご婦人、ご主人といっしょにいらしており、大変に楽しまれていた様子で、王子とオディールの32回転のところ、手拍子するんですよ。ちょっと、勘弁してほしかったけど、あまりにお楽しみの様子に黙殺するしかありませんでした。水香さんのオディール、ここでもテクニカルにはよいのですけど、お顔のメークがおばさんぽくて、王子を誘惑する悪女の魅力がうすく、またステファンとの息がいまひとつあってないように思えました。それでも、物語的にはヌレエフ版の妖しいロットバルトなども登場し、単調だった白鳥がもりあがってきましたよ。
4幕は、大変短かったです。どうも、音楽だいぶんカットしているようで、群舞も王子とオデットのパドドゥも短くなっているように思えました。特に、通常王子とオデットが再会して、すごい哀しいパドドゥの曲を群舞に使って、その後に何かの曲を追加したりもしていなかったので、再会、パドドゥ、ロットバルトと闘い、勝利が次々展開され、ここにきて急にテンポアップでした。その上、ここもヌレエフ版をちょこっととりいれているので、ロットバルトとオデット、王子のパドドロワになっているところもあったり、王子とロットバルトの戦いの振りがやっぱりヌレエフ版と同じところがあったりと、なかなか楽しませてくれます。音楽も4幕はおおいに盛り上がりますので、最後はおもしろかったわ〜という気持ちにさせてもらいました。
今回は、生オケでしたが、あまりのバランスの悪さに、途中でくじけそうになりました。ダンサーの方はよくペースを乱されないものだと感心です。テープ続きで味気ないと思っており、今日は生オケ嬉しかったのですが、こんなことで気が散るくらいならテープのほうがよかったとも思いました。
このバージョンと東京バレエ団単独公演を好んでみようとは思いませんが、まあ悪くはなかったと思います。パリオペの人がやったせいか、後半は面白かったし。これをみると、パリオペがやるヌレエフ版また見たくなりました。今度は、マチュウ王子にパケット君ロットバルトだったりすると、ものすごく目にも見ごたえあると思うのですけど。あと、グレゴリーなんかがパドドロワに出てくれると嬉しいわ。バレエにビジュアルはやっぱり大きな要素であり、日本人のバレエ団はまだまだ困難な道が続くと思われます。
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