Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [20]   ルグリと輝ける仲間たち Bプロ
2007年8月11日
ゆうぽうと(東京)
 
怒涛のバレエ月間もいよいよ終わりに近づいて参りました。当初は、ルグリガラは、Aプロだけのつもりだったのですけど、Bプロは土曜日だし、お友達はBプロへ行くほうが多かったので、eプラスのプレオーダーか何かで手配した公演です。ですので、お席も安いところと思ったら、本日は2階の1番後ろのほぼ端っこでした。が、ゆうぽうとというのは、かなり観やすい劇場のようで、あまり気になるようなことはありませんでした。ちょっと、いいこと覚えちゃった気分です。
 
ガラのプログラム違いというのは、演目のカテゴリーとか構成はほぼ同じで、演目やダンサー違いというものなのかと思っていましたが、今回のルグリガラは、AプロとBプロでは、構成がかなり違っていました。見所がAプロとBプロでは全然違っており、これは、観る人によって評価のわかれるところではないかと思います。
 
 
’タランテラ’
メラニーユレル・アクセルイボ
イボー君は、ルグリ先生のレッスン番組で、特にロミジュリだったかな、がんがん注意されて、なんだかぼろぼろになっていたことが日本中に広まっちゃった若手ダンサーです。Aプロの時も、マチューとかと並んで踊っていたので、ぱっとしないなと思っていたのですが、本日はよかったですよ。タンバリン持って、ちょっとラテンぽい明るさのある踊りです。この子は、王子様系より、こういうのびのびちょっとキャラがはいるような演目が向いているのかも。女性の方は、プルミエダンスールの方ですので、全然ベテランですね。明るくて、かわいくて、オープニングにふさわしい演目でした。
 
’アベルはかつて’
グレゴリードミニャック・ステファンビュヨン
これは、まあ、わたしとか、わたしの仲間達は絶対好きな演目です。パリオペの若い男の子ふたりが踊るドラマチックなコンテンポラリーです。白い幅広のパンツをつけただけの若々しい肉体で、ビジュアル的にも2重○な子たちが、暗いステージで踊るのですよ。カインとアベルの双子が、双子の絆がありながら、片方よりも強くあろうと、しのぎを削る精神的な葛藤みたいなお話かな?こういう演目を踊る旬ってあると思うのですね。テクニックとか経験って、舞台のお仕事では必要だと思うけど、この場合は、それよりも、若さゆえの美しさと未熟さと未完性さがあってこその味わいっていうのでしょうか。これをもっとベテランの上のクラスのダンサーでみたいとは思いません。かといって、そのへんの平凡な男の子でいいわけもありません。パリオペという選ばれた枠の中から、一握りの原石ならではのダンサーでないといけません。まだ、大きく羽ばたく前の、花開く以前の不安定さの中にあるエネルギーの予感を感じさせるダンサーです。こういう演目を観れるというのは嬉しいですね〜。踊り終わって、二人の上半身に光る汗の美しいこと。グレゴリー、かわいい〜んですよ。これからは、この子の成長を見守っていこうと楽しみ増えました。ルグリ先輩ありがとう。この子たちにチャンスをくれて。そして、この時期のダンサーの姿をふさわしい演目で、見せてくれて。
 
’ドニゼッティーパドドゥ’
ドロテジルベール・マチューガニオ
これは、ルグリが振付けたもので世界初演かな?パリオペ期待の若手の美男美女カップルの演目はややはり期待高まります。2人とも、黒をベースにあれは、花柄なのかな、遠くからですので、わかりませんが、現代っぽさのあるクラシックのお衣装です。振りつけは、あくまでもクラシック。ルグリらしく、ちょっとヌレエフの大変なステップだらけの振り付けに共通するようなパドドゥです。初演ながら、前回のチャイコフスキーパドドゥより息はあっているように思えました。本日、マチュウーはこの1演目のみ。ちょっと、物足りない気分でした。
 
’オネーギン’
モニクルディエール・マニュエルルグリ
これは、Aプロと全く同じ場面です。本日は、昼間だし、この前3演目が若さに満ち溢れたものでしたので、ちょっとここでいきなり’オネーギン’という気分にはなれませんでした。モニクのかわらぬドラマチックなタチアナのためらいと葛藤はぐっとくるのですけど、まだ、この大人のドラマにのめりこむ雰囲気に会場全体がなっていなかったように思えました。これは、やっぱり最後か、2部の終わりにしたほうがよかったように思います。
 
’ビフォアナイトフォール’
メラニーユレル・マチアスエイマン・エレオノーラアバニャート
ステファンビュヨン・ドロテジルベール・オドリックベザール
マチルドフルステー・ローラユッケ・シャリーヌジザンダネ
アクセルイボ・グレゴリードミニャック・マルクモロー
プログラム観たとき、こういういっぱい出てくるのは退屈かもね〜と心配したのは杞憂でした。これぞ、パリオペの醍醐味。粒ぞろいのコールドならではのお楽しみ演目だったのです。女の子は、黒というか濃い灰色の長いドレス、男の子は黒のスパッツに上半身は裸。いやあ、いきなり皆で出てくるんですよ。どこみたらいかわからないわ。どの子もちょっと見しますでしょう。若さが、こっちはちょっと凶器のような、アグレッシブな感じのダンスです。けっこうなテンポで、3組になったり、1組づつになったり、ちゃんと配役表把握してなかったので、あれ、これは誰と誰だっけ?と気になりながらみてました。だって、結構どの子も素敵なんですもん。が、やっぱりわたしとしては、先ほど心に決めたグレゴリー君が目だってかわいかったです。今回は、Aプロの4人並びのようにレベルがめちゃめちゃ離れているわけではないので、よくそろっており、実力差も少なくよかったです。本日は、こういう若さあふれる演目が大変よいですね。
 
’牧神の午後’
バンジャマンペッシュ
これは、ニジンスキー版じゃありません。この演目は、とっても不思議。どうして、このダンサーがソロで、このバージョンのこの演目を踊ったのだろうかとプログラムにいれたこと自体が理解に苦しみます。バンジャマンペッシュって、ソロで見たいダンサーじゃないと思うのですね。また、すごい感銘を与えるテクニックや雰囲気をもったダンサーでもないと思うのですよ。それに’牧神の午後’といえば、とても官能的な作品。このバージョンは、ニジンスキー版より、もっとあからさま。男性が下着のような短パン一つで、ティッシュケースをかたどったベッドに寝ており、巨大なティッシュのかたまりが2つ舞台にはあります。う〜ん、ビジュアルにメリットのないダンサーが、エロティックな演目をソロで踊ってもありがたくないわ。と、いうか見る気もうせちゃいます。今回のように若手が多い中、この人のポジションでは、ある程度レベルの高いガラにふさわしいものをみせる責任があると思うのですけど、これは大ハズレ。ないほうがよかったかもしれません。
 
’ジュエルズ’より’ダイヤモンド’
ローラユッケ・オドリックベザール
この2人は、次の世代に期待できる楽しみ系の実力派ではないかと思われます。’ジュエルズ’は、物語はありません。淡々とクラシックのパが続きます。この作品をこういう若手でみれるというのもこのガラならではなのですけど、3部のこの位置で、若手がうめるには荷が重いような気がします。と、いうか、お客のわたしとしては、ちょっと物足りないというか、ガラのレベルがもうひとつだね〜と思えてしまったのです。だいたい、これ、わたしのデフォルトは、アニエスとジョゼ、次にみたのがマラホフとヴィシニョーワだったので、実力派といえども、その深みや華やかさに欠けるように思えてしまったのでした。むしろ、’エメラルド’か’ルビー’のほうが、若さをいかせたのではないかと思いました。
 
’ドリーブ組曲’
ミリアムウルドブラーム・マチアスエイマン
これも、デフォルトがアニエス&ジョゼですし、これ、だいたい自分達基準で振付けたのではないかと思える作品ですからね。ミリアムもマチアスもよくやっていましたよ。だけど、’ジュエルズ’といっしょで、華やかさに欠けました。この2組が、1部でこの2演目を踊ったならよかったのかもしれないけど、Aプロの3部をBプロではこれらに置き換えたとなると、なんともレベルが違うように思えてしかたありません。
 
’さすらう若者の歌’
ローランイレール・マニュエルルグリ
去年のパリオペお引越し公演の時、イレールはもう引退しており、こうして彼のダンスを生でみれることになろうとは思っておらず嬉しかったです。が、これは熱中症による疲労のためなのか、ベジャール作品というのがいけなかったのか、わたしは、眠気に襲われてしまい、集中してみることができませんでした。若者の歌といえども、この前の演目に出た本当の若い子たちより、かなり大人の男性2人が踊るのですから、若さゆえのエネルギーではなく、どちらかというと、円熟味さえ感じさせる内面的な静かなダンスです。見るときに見れば感動したのか、それともやっぱり作品的にだめなのか判断しかねますが、いづれにしても大きな感動なき最終演目でした。
 
上記のとおり、本日は、若手ダンサーの活躍という点ではおもしろいガラでしたが、ベテランの作品で大きな感動のあるものがなく、充実感という面では不満の残る構成であったような気がします。Aプロの、若手とベテランのバランスのよい構成にくらべ偏りがあったように思えますが、これは最後の’さすらう若者の歌’をどうとらえるかによると思います。これがよかった人には、これが大きくベテランの果たすべき位置をしっかり占めてガラを盛り上げたといえるのでしょうが、わたしのようなものにとっては、この作品が他の作品と同列に感じられメリハリの少ないものに思えたのです。マニュエルルグリというダンサーを中心としているので、ある程度こういう偏りは出てくるのかもしれませんが、パリオペという看板を背負っているかぎりは、やはりパリオペだね〜と誰もが納得できる構成を考えてほしかったかな。’さすらう若者の歌’が悪かったのでなく、順番とかAプロとの作品のシャッフルをすればバランスがとれたのにと思います。まあ、今回は故障者続出で演目も二転三転しましたからね、難しいことはあったと思います。
バレエ作品のラインナップとしては、ちょっと不満も残りますが、パリオペ若い子たちいっぱいの作品集という点では楽しいものでした。
 
 
update:
2007/08/12



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