Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


| Back | Index | Next |

 [24]   エトワール達の花束 Aプロ
2007年8月3日
東京文化会館(東京)
 
いよいよ、怒涛のバレエ月間のはじまりです。初っ端は、今年一番楽しみにしていたといっても過言ではない、フェリの引退公演のAプロです。そのわりには、B席なんですけど。まあ、諸事情いろいろありまして、わたしとしては、東京文化会館の3階1列目というのは、かなり出世したポジションなのです。
 
さて、いつものことながら、バレエの専門的なことはさっぱりわかりませんので、みたまま、感じたままのレビューです。本件とは関係ないですが、わたしが一番愛する人は、アダムクーパーであることをお断りしておきます。
 
’海賊’
パロマヘレーラ・ホセカレーショ プティパ振り付け
まあ、お祭りにふさわしい演目、ダンサーからはじまります。カレーニョの海賊は去年バレフェスでみて、水玉模様のパンツはどうもねと思っていましたら、3階からみると水玉でないとわかりました。そんなことはさておき、カレーニョのアリは文句のつけようもありません。ゼレンスキーもよかったけど、違った味わいのある野性味のあるアリです。それでいて品もあります。わたしにとって、メドーラのデフォルトがロパートキナでしたので、ヘレーラはちょっと印象弱いです。この作品は、どっちかというとカレーニョのために選んだ感じがしました。
 
’ロミオとジュリエット’
アレッサンドラフェリ・ロベルトボッレ マクミラン振り付け
あまりに有名な作品でありながら、マクミラン版を生でみるのは初めてです。映像では何度かあるのですけど。これをみると、ロミオって男性というより、男の子なんだね〜と思います。振り付けが。
ボッレは、それなりに素敵だし、テクニカルにもよくやっていますけど、振り付けで想定した若さよりちょっと年齢いってしまっているような気がしました。フェリは、たしかに違和感なくジュリエットなのですけど、同じく少女というようにはみえません。実際のロミジュリよりも、ちょっと大人で年上のジュリエットにみえました。フェリは、マクミランのミューズでジュリエットは当たり役なのですけど、ラヴロフスキー版のまったりしたロミジュリを踊ってみたりするのもよいかなと思いました。フェリの引退公演で何なんですけど、マクミラン版、思いっきり若いダンサーでみてみたいです。
 
’マーラー交響曲第三番’
シルビアアッツォーニ・アレクサンドルリアブコ ノイマイヤー振り付け
曲がとてもきれいです。これは、アブストラクトというカテゴリーにはいるそうで、ノイマイヤーお得意の劇的な物語バレエではありません。コンテンポラリーみたいなクラシックな動きもあるダンスです。なんかドラマを感じさせる雰囲気です。赤いレオタードのアッツォーニが可憐で、肌色のタイツのリアブコは遠めには裸にみえます。振り付けは、後半リフトというか、女性を男性が肩より上に抱えたままで踊り続ける振りが多く、これは結構大変と思いつつ、みごたえありました。物語バレエじゃないけど、ノイマイヤーのテイストを十分に感じられる作品でした。
 
’白鳥の湖’ 第二幕 白鳥のパドドゥ
ジュリーケント・マルセロゴメス イワノフ プティパ振り付け
今回の作品のなかで、一番退屈したものがこれでした。白鳥って好きな作品だし、この方たちもよかったのですけど、まあ、あまりに普通すぎって感じ。他が、ちょっとサプライズ的な作品が多かったので。ジュリーケントは美しいですね。白鳥にぴったり。ゴメスは、王子のイメージじゃないな。
ドンキホーテとかでみたいわという感じ。
 
’へルマン・シュメルマン’
アリシアアマトリアン・ロバートテューズリー フォーサイス振り付け
これ、フェリの作品以外では一番楽しみだったのですよ。テューズリーが踊るっていうのもあるけど、前にアダムがギエムやバッセルと踊った作品なのです。バッセルのビデオにはちょっとだけ収録されています。ちゃんとみてみたいと思っていたのです。コンテンポラリーというのは、あまり得意じゃないのですけど、これはよいですね。リズムもいいし、男女が挑発しあうようなやりとりが、スリリングです。衣装も斬新です。女性はすけてみえる黒い衣装で、男性は普通の黒いTシャツとパンツですけど、途中からふたりとも、色鮮やかな黄色いミニスカートになります。男性もですよ。でも、全然気持ち悪さとか違和感はありません。アマトリアンがよいですね。コンテンポラリーを踊る人のようには思えなかったのですけど、とてものびやかで機敏で、あっていると思いました。で、テューズリーですけど。。この人、ダンスは上手い人だと思いますし、この作品もよくこなしていたなとは思います。だけど、これ、この人のテイストじゃないんです。テューズリーのヘルマンシュメルマンって、クラシックダンスの香りがするような気がします。やっぱ、これはアダムでみたいわ、テューズリーはデグリューで観たかったわと切実に思ってしまったのでした。
 
’エクセルシオール’
モニカペレーゴ・ロベルトボッレ デッラーラ振り付け
これは、なんといってもボッレを見せるための一品と思えました。衣装もつける範囲は最低限という感じで、鍛え抜かれた男性ダンサーの身体をさあみてくれといわんばかりです。このためだけにやってきたペレーゴは、ちょっとかわいそうな感じ。最後のカーテンコールでもパートナーいないし。
ボッレは好きですけど、普通に衣装着た王子様系のほうが好きかな。
 
’オセロ’
アレッサンドラフェリ・マルセロゴメス ルボヴィッチ振り付け
これが結構よかったのです。ゴメスはこういう役のほうがよいし、フェリも大人の女性であるこちらの役のほうがしっくりきました。あまり話がわかってないのですけど、夫が愛の強さゆえに妻を殺してしまったかのようにみえました。男と女の情念と悲しさが全編にただよっていました。全幕でみてみたいです。
 
’ジゼル’第二幕よりパドドゥ
アレッサンドラフェリ・ロベルトボッレ
これは、びっくりするほど短かったです。さあ、これからかなと思ったところでもうおしまいでした。フェリのジゼルを深く観察する間もなかった気がします。わたしは、5月にTVで観た、ミラノスカラ座のザハロワ&ボッレが印象に残っていたせいで、はじまると、あ、衣装がミラノスカラ座とちがうわねとか、ボッレはやっぱ、ザハロワくらい大きい人とのほうがバランスがいいわとか枝葉末節なことを考えているうちに終わってしまったのです。二幕のジゼルはもう人間でないので、アルブレヒトへの愛を訴えつつ、どこか現実感のない役というですが、短い短いフェリの演技はそんな風に思えました。どこか現実感のない妖精というにはぴったりの小さく軽くボッレに身をまかせるジゼルでした。
 
’太陽が降り注ぐ雪のように’
アリシアアマトリアン・ロバートテューズリー ダレシオ振り付け
これは、とてもとても不思議なコンテンポラリーらしい作品。こういう作品は、上手い人というか表現力のある人でないとこなせないだろうなと思います。これが振り付けという決まった動きなのだろうかと思えるような振りが多々あり、それをまとまった一つの形にみだすことなく作り上げ、表現できるというのはちょっとすごいねと思いました。こういう作品をどうしてテューズリーは踊るのだろうと考えるとこのような表現、ダンスもできるというのを見せたのかしらと思ったりして。踊れる人がおどらないとものすごくつまんなくなる作品です。が、今回は、不思議なくらいじーとみちゃいました。いいとか悪いとかじゃなく、ひきこまれはしました。
 
’シンデレラ’ 舞踏会のパドドゥ
ジュリーケント・マルセロゴメス クデルカ振り付け
これは、素敵なシンデレラですね〜。王子様はタキシードなのです。が、ゴメスはやっぱり王子系じゃないんだな。できることならば、テューズリーにこっちを踊ってほしかったわと思ったりして。でも、ジュリーケントの美しさと、シャンデリアのセット、おしゃれなシンデレラでした。
 
’ハムレット’
シルヴィアアッツォーニ・アレクサンドルリアブコ ノイマイヤー振り付け
これは、物語バレエのほうですね。でも、どこが’ハムレット’なんでしょうね?若い恋人同士のような2人のたわむれが、少し乱れた部屋の中でくりひろげられます。ダンスというより、言葉のない劇のようです。劇のようだけど、しっかりバレエの振りもあるという作品でした。おもしろかったけど、揺さぶられるようなノイマイヤーの物語性のある作品とはちょっと違うかなという印象です。
 
’フーケアーズ’
パロマヘレーラ・ホセカレーニョ バランシン振り付け
前にTVでこの作品みたとき、この振り付けってとってもアダムっぽいわと思ったことがあります。今日みてみて、やっぱりそうだ、アダムっぽいと再確認です。そう思うと、アダムで観たい作品です。これが、アダムだとこうなのよね〜とカレーニョみながら、頭の中にはアダムが踊っていたような。カレーニョは悪くはないのですよ。基本がしかりした人のこういう作品というのはきれいにまとまりますからね。だけど、テューズリーのヘルマンシュメルマンと同じで、カレーニョもクラシックテイストなんですね。まあ、今回はフェリの引退公演のお祭りですから、こういうこともありでしょうが、カレーニョならクラシックで観たかったわという感じ。で、ヘレーラは、逆にメドーラより、こちらのほうがのびのび、いい感じでした。
 
’マノン’ 沼地のパドドゥ
アレッサンドラフェリ・ロベルトボッレ
思えば、今日は、この作品を観に来たといっても過言ではない、今回のハイライトです。フェリといえば、マノン、マノンといえば沼地ですもんね。マノンはわたしは、一番好きなバレエ作品なのです。去年のバレフェスのテューズリーとフェリの沼地は本当に感動しました。できることならば、テューズリーととまだ発表になっていないときに願ったものの、ボッレが来るのにそれはなかろうと覚悟は決めていました。で、ボッレ、よかったです。フェリはいうまでもありません。ジュリエットもオセロの奥さんもジゼルもいいけど、やっぱりマノンは一段上という感じ。もう、フェリそのものがマノン。あの短い間の一瞬でルイジアナの沼地で消え入りそうな命が放つ強い情熱と光を会場にみせつけます。ぼろぼろで死にそうなのに、激しいアクロバティックなリフト。フェリとボッレは大きさのバランスがどうかなとか思ったけど、こういう時は頼りになるよねボッレ。マノンが命つきて、それを認めたくないデグリューがマノンをゆすり、その死を認めざるえなくなったとの号泣シーン、ぐっときました。涙でるかと思った。ボッレに泣かされるとは思わなかったけど。なんで、これで最後なんでしょうね。Bプロでもやってくれないもんでしょうか、急遽。ひとつだけ、苦情をいうと、髪を結わえないデグリューはだめですよ。手をぬかないでね。
 
ガラだから、しょうがないのかもしれませんけど、ひとつひとつがやっぱり短くて、なんだかちょっと物足りないくらいの気分です。まあ、それだけ作品も仕上がりも飽きさせないだけのできで粒ぞろいだったということだと思いますが。このようなお祭りというか、ガラの場合、どういう作品を選ぶかというのは結構重要だなと思います。うまいなと思ったのは、ハンブルグペア、アッツォーニとリアブコ。フェリの引退公演だろうが何だろうが、自分たちのお得意の部門、売りである部分をしっかり押さえた趣が異なりつつどちらもしっかりノイマイヤーを感じさせる作品を2作品とも選らんでいるのは正解です。ABTの人々は、かたっぽはよいけど、かたっぽはガラならではお祭りだから冒険しましたとか、違う味わいを見せます的な作品で、いいようなよくないような、ガラならではの選択かなと思います。で、一番考えさせられたのがテューズリーのコンテンポラリーばっかりです。どうして、この人がコンテンポラリーなんだろう?まあ、何でもこなしますよ、こういうのも踊れますよというのはわかりましたし、フェリとの作品、ことごとくボッレにもっていかれちゃったからしょうがないといえばしょうがないけど。計4作品踊るなら、一番得意なところのクラシックも一つはいれてほしかったんですけど。当初、Bプロでは、クラシックじゃないけど、モダンにはいるのかな?’カルメン’踊ることになっていたのに、これもボッレの’インザミドル,,,’と交換しちゃったし。’インザミドル’楽しみなんだけど、ちょっと心配。またクラシックテイストかも。
 
今回、もう一つ考えされられたのが招聘元、興行主プレサリオの実力。やっぱりテレビ局系はだめだね。デマチの手際の悪さはTBSのアダムの公演を思い出させてくれました。あと、プロモーションのまずさ。それと、アーティストに対する認識。バレダンサーのパフォーマンスやキャラクターとTVタレントの仕事の違いがわかってないように思えます。バレエという芸術の世界とTV番組のエンターテイメントの違いをわかってないように思えます。商業的興行のひとつくらいにしか認識されてないようです。今後、本格的にこの世界にはいりこもうとするならば、もっと他の公演をしっかりはじめから、おわりまでしっかりみて勉強してほしいです。と、いうか手を引いたほうがいいかもね。
 
フェリを知るのが遅すぎたことは非常に残念です。もっと、もっと観てみたかったのになとつくづく感じます。’マノン’、全幕フェリでみたかったです。。。。。
update:
2007/08/04



| Pour passer le tempsホーム | 観劇記録 | Review | これからの予定 | What? | リンク集 |


メールはこちらまで。