2008年1月26日
オペレッタ劇場(ブダペスト)
マチネ
Romeo : Balint Adam Juliet : Vago Zsuzsi
Tybalt : Magocs Otto Escalus, Prince of Veron: Nemeth Attila
Capulet: Csuha Lajos Lady Capulet: Simenfalvy Agota
Lady Montague : Baranyai Annamaria Nurse : Nadasi Veronika
Friar Lawrence : Foldes Tamas Mrcutio : Szabo David
Benvolio : Meszaros Arpad Zsolt Paris : Szerenyi Laszlo
ソワレ
Romeo : Dolhai Attila Juliet : Vago Bernadett
Tybalt : Szabo P.Szilveszter Escalus, Prince of Veron : Imre Sebastian
Capulet : Csuha Lajos Lady Capulet : Furedi Nikollet
Lady Montague : Csengeri Ottilia Nurse : Naray Erika
Friar Lawrence : Palfalvy Attila Mercutio : Bereczki Zoltan
Benvolio : Kerenyi Miklos Mate Paris : Szerenyi Laszlo
もしかして、オペレッタ劇場は世界一親切な劇場かもしれません。今回、急遽1ヶ月をきって旅行を決めたので、ロミジュリのチケットはほ ぼ完売状態でした。それでも、マチネはとれたのですけど、ソワレは売り切れのところをキャンセルでたら知らせてねとメールしておいた ら、出発の2,3日前に、前から3列目のキャンセル出たよと連絡が!7月に’エリザベート’を観たとき、ついでにみた方のキャストの人々が ’ロミジュリ’に出ていることを帰国してから知って、某動画サイトでみてみると、なんだかとっても面白そう。’ロミジュリ’は、エリ ザのルーカス君がウィーンでやっていて、うちの本社のオーストリア人が見てよかったよとかいってたけどそんなにも興味はなかったので す。それに、オリジナルフランスバージョンの動画みても、なんだか’十戒’みたいな感じだね〜とか思っていたのに。いったい何がどう なっているんでしょうね?マジャルバージョン。
マチネはバルコニー席の3列目。前に人がいますので、ちょっと邪魔ですが、字幕がみやすいし、舞台には近いです。このお席は正解でした 。エリザの時もそうでしたが、バルコニー席は字幕と舞台をみるにはバランスがよい配置なのです。最初に作品を把握する上では下のお席 よりはお勧めです。こういうところももしかして配慮してくれているのかもと思います。この舞台は、オーケストラピットを挟んでメイン の舞台の前に花道みたいな細い舞台もあります。ここは決して広い劇場ではないのですけど、エリザ同様、セットが細かく稼動して臨場感 いっぱいです。
マチネとソワレのキャストは、ファーストとセカンドくらいの違いがあるのではと思えるほど迫力の差がありました。微妙にオリジナルキ ャストと最近の人々を混ぜてはいるのですが、オリジナルの人々が多かったソワレは、同じものをみたのにすこしも繰り返し感を感じない 魅力がありました。実際は、トリプルキャストの役もあり、もう一組分くらいキャストはいるらしいですが、とりあえず今回は一番観たか った人々と、その次に観たかった人々なので嬉しかったです。唯一残念なのは、エリザでも観れなかったJanza Kataが観れなかったことく らいです。
細かく書いてしまうとネタバレになり、これからご覧の方に申し訳ないので、内容の詳細は避けます。ブダペストは遠いですけど、エリザ ベート観るために遠征するなら、次は是非ロミジュリを生で観ていただきたい。フランス版もウィーン版も観たことないので、どこがどう とはいえないのですけど、何かが違うマジャルバージョン、是非感じていただきたい。自信を持ってお勧めできる作品です。と、いうわけ で、印象のみを語りたいと思います。
まず、なんといっても、ダンサブルです。エリザもそうでしたけど、マジャルの人々は踊ります。エリザは、アンサンブルの場面がとにか く面白かったのですが、ロミジュリでは、メインキャストも踊ります。がんがん踊ります。すごいうまいダンサー達ではないのですけど、 踊れないミュージカルスターはオペレッタ劇場にはいないようです。他のバージョンも結構アンサンブルの人々は踊っていたようですが、 メインがこれだけ踊るのはマジャルだけじゃないでしょうか。これは、アドリブかしらとか演技かしらと思っていたところも、マチネとソ ワレがきっちり同じだったので、ちゃんと振り付けだったのだわと知りました。
ロミオ(マジャルではロメオ)役は、エリザのFJだったアダムとルドルフだったドルハイ君です。こういうキャスティングもマジャルなら ではですよね。日本でいうなら、禅さんと浦井君が同じ役をやっているようなものです。(マリウスならありえるか。。。)アダムは、こ んなに若い子だったのだね。髪型が変だけど、背が高く、ドルハイ君より初々しい。ドルハイ君は、多分ハンガリーミュージカル界のスタ ーなのでしょう。’モールァルト’と’ルドルフ’のタイトルロールににエリザのルドルフ等、若手の主役はほとんど演じている人です。 今回は、ソワレの出演者、DVDの映像版と違って、一律髪を短くしておりすっきりしてました。ソワレの迫力の一端は、このドルハイ君の声 量にあるのではないかと思います。この人、とにかくうまいんですわ。マイクのボリュームがマチネとソワレでは違うのではないかと思え るほど。バルコニーのシーンで、ジュリエット(マジャルではジュリア)に別れのくちづけをするところ、アダムは登るのですが、ドルハ イ君は懸垂です。この辺も体力あるからだのつくりからして違うのかなと思いました。
ジュリエット役は、エリザのタイトルロールを演じたヴァーゴバーナデットと、今回初のヴァーゴ Zsuzsi(なんて読むのかしら?)。ソワ レがバーナデットとドルハイ君だったので、かつての母と息子じゃないのとか思ったけど、バーナデットは若い時のシシイのほうがしっく りくる人なので、とてもかわいいジュリエットでした。個人的にはZsuzuiのほうが好きでしたが。バーナデットのほうが、ちょっとわがま まで雑な感じがしたので。Zsuzsiは、DVDでジュリエットをやったDoraさんに近いような気がします。
マチネとソワレで、全く違うキャラの人が同一人物を演じたのが、ティボルトでした。マチネは、アダムをのぞいて、全体的に平均身長が 低く、ちびっこ感があったのですが、このティボルトを演じたOttoさんという人も背が低いのでした。歌はうまいのですけど、おでこが妙 に広く金髪の前髪の後ろのひろがりを客席からも感じます。ティボルトって、キャプレット夫人と妖しい関係のはずなんですけど、この Ottoさんとそういう関係にはなりそうにないな〜と。ちなみにこの方は、前に’モーツァルト!’のタイトルロールや’エリザ’のルドル フを演じていたそうですが、ドルハイ君とも違う系統です。また、そういう役をやっていたところも想像つきにくいです。マジャルは歌重 視なのかな。そして、ソワレは、あのハラール様、マジャルの死神、サボーPです!サボーPも髪を短くしてはいましたが、やっぱり普通じ ゃありません。この人は、Ottoと違って背が高くて、ティボルトの黒い衣装がよく似合います。ティボルトは、両家の対立の中で、一番そ の憎悪に苦しめられ、孤独な役柄にみえました。その屈折した姿がサボーPのあやしさにマッチして、ティボルトを魅力的にしていました。
こればっかりはマチネの方が迫力だったのがベンヴォリオ。何回みても名前が読めないMeszaros Arpad Zsolt。この人もドルハイ君と同じ 系統の役をやる人らしいです。姿はずんぐりむっくりで、マジャルはこういう人が人気があるんだろうかと常々疑問に思っていた人でもあ ります。が、この人も歌は激うまです。ドルハイ君級の声量です。おとなしめのマチネの’Les rois du monde'をひとり盛り上げていたの でした。ソワレの人は、名前もはじめて聞いた小さい人でした。Kerenyi Miklos Mate さんという人だそうです。マチネのベンヴォリオが 声量はあるが動きが重いのに比べ、小回りのきく身軽な人でした。これも、どっちがどっちというのは好みの問題でしょう。
今回、マチネとソワレで大違いだわと思った一番はマキューシオ。マチネは、この夏、マテ組エリザのルドルフだったDavid君。ソワレは、 サボーP組の素敵なフランツ、我らがゾルタンでした。ゾルタンのマキューシオは某動画サイトで繰り返しみて、もうかなりインプットされ ていましたので、マキューシオのイメージはゾルタンで固まっています。これをあのガラスの皇太子Davidがどう演じるのでしょう?と思っ ていたら、なるほど同じ振り付けながら、かなりおとなし目のマキューシオでした。まだ、彼の中で消化しきれてない感じ。このミュージ カルの中で、マキューシオの存在は結構重要なので、マチネは、う〜ん、うすい、うす味だと思えてしまったのでした。で、生ゾルタンの マキューシオ、素敵でした。フランツもよかったけど、この人若いんですもの、こういう役のほうがよいわ。特によかったのは、ティボル トと争いの最中にロミオをかばって命を落とすところ。荒削りな若者らしさと、憎悪でなく未来を祈る純粋さにぐっときたのでした。もち ろん、某動画サイトに数々ある'Les rois du monde'のマジャル版、生ゾルタンでみれて何より幸せでした。これが観たかったのよね〜と。
その他、キャプレット夫人、モンタギュー夫人、司教様、乳母、支配者の人々もダブルキャストでした。これは、マチネ、ソワレの違いな く皆さん実力派でした。マジャルの人々、歌が上手い人多すぎ。このミュージカルは、名前のある主要人物は全員ソロがあるのです。キャ プレット夫人とモンタギュー夫人の’La Haine' の憎悪うずまくデュエットのあとの、一幕最後のロミオとジュリエットの’Aimer'の希望 にみちた若い愛の対比が印象的でした。
’ロミオとジュリエット’は悲劇の物語といわれますが、今回はじめて、本当にこれは悲劇だわと思いました。因習の中の憎悪を誰も望ん でいるわけではないのに無駄に流れる血と重なる死。結ばれることをのぞんでいるだけの若い2人の愛が純粋であればあるほど、まわりは悲 劇にまきこまれていく。何も複雑なことはなく、単純な物語ゆえに、どうしようもない人間同士の弱さがくっきりみえました。音楽の美し さとマジャル特有の妙に明るい演出いっぱいの悲劇は、ウィーンで壊れかけた心を少し修復してくれたようでした。このまま日本に帰った ら、さぞハッピーな気分だろうなと思いました。でもでも、このまま帰るわけにはいかなかったわけではありますが。。。。
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