2007年5月18日
新宿コマ劇場(東京)
エリザベート : Maya Hakvoort トート : Martin Pasching
ルドルフ:Lukus Perman ルケーニ:Bruno Grassini
フランツヨーゼフ: Markus Pol ゾフィー :Chirista Wettstein
あれ?今日は平日、金曜日でしょう。普通なら、お勤めの日じゃありませんか?この前のソワレで大感激したものの、帰りは冷静で、お友達と別れたのでした。が、週があけて明け方ベッドの中で、このままでいいはずがないと思い始めると、耐え切れずコマ劇場に電話してチケット予約してしまったのでした。お友達にメールしたら、’わたしも木曜日に行きます’ですって。ふたりして、申し合わせたように会社さぼって、リピートすることになったのでした。
昨日、お友達から、’マテでない〜’と嘆きのメールがはいったので、わたしは、セカンドもみてみたいわとかいっていたら、なんと今日もマテではありませんでした。どうも、怪我とのことです。直面していみると、やっぱりちょっとショックでした。が、ウィーンでも、1日はスティーブンにあたって悪くなかったので、反面期待もしていたわけです。で、本日は、マーティン。う〜ん、だめでした。これは、だめだね。マテじゃないのがだめなのではなくて、もっと違うトートを見せてほしかったんです。マーティンって、はっきりいって、マテの亜流という感じ。見た目も歌い方も同じだけど、実力は伴ってないんですよ。彼なりのトート像というのはないのだろうか。まあ、同じ作品なので、同じ振りとか同じ解釈というのは当然だろうけど、役者がかわると雰囲気ってがらっとかわるじゃありませんか。マテのテイストをマテ以外の人がやったってどうしようもないじゃありません?って、いうか、マーティンはトートやる器じゃないんじゃないかな。本日のトートの見せ場、全部NGですわ。特に’私が踊る時’。この人、声量がないんだか、マヤさんが抑え気味に歌っているような感じがしました。あそこは、力技の比べあいが醍醐味なのに。たしかに、スティーブンはシシィお姉さんに負けてたけどさ、でも本気勝負で負けてましたからね、いいのですよ。だけど、今日のはね。。。。。あ、ひとつだけ、まあ、悪くはないなと思うのが、’闇が広がる’。これは、マテは、乱暴すぎて、あの振り付けがよくわかんない感じなんですが、マテ以外の人がやると、ああ、こういうことなのねとわかるのでした。
明日からは、マテが復活してくれることを祈ります。わたしは行かないけどね。
と、マーティンNGの件は別として、実は本日もとてもよかったのでした。感動いたしました。特にマテなき今日でさえ、衰えることのないマヤさんの力強さ。自由を求めていきていた少女が突然檻のような宮殿に閉じ込められて、自我にめざめ、追求するうちに、勝利を得たと思っていたのに気づけば孤独とむなしさの中にいたという一人の女性の生涯をしみじみ感じました。初夜の翌日、ゾフィーにたしなめられ、フランツに不信をいただきながら、負けないわと歌う’私だけに’は、先日の精神病院やコルフ島のことを思い起こすと、なんだか涙がじわっとにじんできました。この来日公演をみるまでは、エリザベートの物語は旅に出る前までくらいがハイライトかなと思っていたのですが、実は若さをうしないはじめた後くらいの孤独と闘い、わかりあえなかった夫婦生活をふるかえる後半のエリザベートの闇の部分を味わってこそ、この作品全体の深さを知ることができるのだと実感しました。日本版をみたときって、’わたしが踊る時’のあとは、ルドルフの部分をのぞいては、ず〜と単調でつまんなくて、’夜のボート’で禅さんが歌ったときだけがじ〜んと感動するというパターンだったのですけど、ウィーン版は、勝利をあじわいながら、挫折と孤独を深めていくエリザベートの苦悩と連続して、’夜のボート’につづくので、そのむなしさと哀しさが格別です。このミュージカルは、本当にエリザベートという女性の物語なのですね。日本は、どっちかというとトートですもんね。実は、エンターテイメントなだけでなく、奥深さも秘めた物語なのです。
本日の印象的なものとしては、チビルドです。前回、日本人顔のルドルフがでてきて、これは、現地調達に違いないとふんでいたのです。そしてパンフみたら、やっぱり全部東京横浜独逸学園の男の子たちが何人かいれかわり出演しているらしいです。ウィーンでは、顔は天使みたいにかわいい子ばっかりでしたけど、歌は下手だったので、現地調達はありえるなと思っておりました。で、前回の子は、日本人顔だしまあ、日本公演はこんなもんだろうとここは目をつむろうと思っていたのです。今日のダニエル君は、ちゃんとばりばりの外人。金髪じゃなかったけどね。この子、すごく舞台を楽しんでいるようでした。子供なのに、自分なりに考えているみたいで、だけど、とってつけたみたいじゃなく、一生懸命演じているのです。すごく健気で、’ママ、どこなの?’のところは、ここもちょっと涙じわっときそうになりました。そして、カーテンコールでも、思いっきり丁寧にお辞儀して、客先に手をふったり、舞台にいることが嬉しくてしょうがない様子。ルーカスと同じ分け目でちゃんと横わけにしてなでつけて、これはルドルフのちび版ですよというアピールも忘れないのもよかったです。東宝版にも出してあげたいです。
今回の来日公演、ウィーンの皆様の真摯な仕事ぶりももちろんなのですが、ひとえに字幕のよさも成功要因だと思われます。今まで、長きにエリザベートファンであった方々をはじめ、わたしのように日の浅い者でも、字幕のありがたさを感じたのではないでしょうか。来日公演というのは、そうはいえども、字幕がよくないというのはしばしばあることなのです。誤訳もあるし、とびすぎてニュアンスがつたわないとか。ドイツ語はまったく門外漢ではございますが、英語からの類推と字幕をつきあわせると、う〜ん見事だねと思うところが多々ありました。ミュージカルは繰り返しとか呼応とか、暗示とか同じメロディーで、違う人が違う場面で似たような歌詞で歌うというようなことがある場合のつながりが、今回の字幕はきっちりとつながっていました。作品をきちんとみて、研究した方がたずさわっているという印象を受けました。
今、余韻にひたりながら、マルチリージョンのDVDデッキをとりだし、PAL版で買った’エリザベート’のDVDをつけています。これがNTSC版で発売されるとも思わなかったし、まして日本で公演がみれるなんて思いもしなかった頃に買ったものです。こうして日本でウィーン版をみることができて、本当に幸せです。だから、是非、是非、またきてください、ウィーンの皆様。どこか、あのヤスリと稼動する舞台を再現できる劇場をさがして。そしたら、また、わたしたち、みんなで白いティッシュやハンカチをふって、’エーヤン、エーヤン’とおむかえします。本日は、前のほうの客先で、みんなで白いものをふっていたら、舞台の皆様、嬉しいようなおかしさをこらえているような表情をしていらっしゃいました。きっと、びっくりしたのでしょうね。楽しかったです。
|