2006年12月9日 マチネ
帝国劇場(東京)
マリーアントワネット:涼風真世 マルグリットアルノー:笹本玲奈
フェルゼン:井上芳雄 ルイ16世:石川禅 アニエス:土居裕子
カリオストロ:山口祐一郎 オレルアン公:高島政宏 ボーマルシェ:山路和弘
これは、特チケでると思っていたので、まってたわけです。そのわりに2階のど真ん中3列目となかなかよいお席でした。これ、クンツェ、リーヴァイコンビなので、もうだまされないわと覚悟をしていったせいか、あんまりがっくり感もなく、こんなもんでしょ的な部分が多かったです。日本初演なので、外人がやるともうちょっとよくなるかもしれないし。
まずは、美術がだめですね。フランス革命前夜のベルサイユの過度なまでの華やかさが全然ないし、それと対比する民衆が、貧弱。ぐるぐるまわるお盆はレミゼのコピーだし。マリーアントワネットのドレスがだめですわ。エリザベートのお衣装は大変上品で、それでいて豪華でしたけど、同じオーストリア出身なのに、これじゃあ、マリーアントワネット趣味悪すぎ。一度くらいは、マリーアントワネットの輝くような美しさを象徴した場面があってもよかったのではないでしょうか。前半の衣装が安っぽいので、後半のみじめさとの対比が弱かったです。
クンツェ、リーヴァイコンビのミュージカルって、登場人物が多いのです。このミュージカルもあまりに多いので、少しリストラするとよいかと思います。まずは、カリオストロ。これはいりません。山口さんは、かわりにオレルアン公をやってもらうとよいと思います。カリオストロの存在は、意味がありそうにみえて、ようく考えると意味なかったかなと思います。高島兄の嫌味なオレルアンより、何を考えているのかわからないつかみどころのない山口さんがやると、かえって策略家らしくてよいかと思うのです。
マルグリットの笹本玲奈ちゃんは、う〜ん、力不足だね。この役をものすごくうまい若い子がやると、この作品はうんとグレードアップすることでしょう。日本で、この年齢ではいないんですよ。韓国からレンタルしてきたいですね。ロンドンでやるなら、ジャンナアンプリさんにお願いしたい役です。脚本のせいもあるのかもしれないけど、マルグリットのまっすぐな心が今ひとつ伝わりにくかったです。
久しぶりの禅さん、歌が少なくて残念。でもやっぱり禅さんはよいですね。この役は、禅さんならではで、彼のキャラに救われていたと思います。他の人では、こういう味はだせなかったことでしょう。
土居さん、2度目です。好きです、この方。救いのある存在です。ちょっと人が多すぎて、アニエスの存在もうすまちゃった感は否めませんが、登場するときは、そこだけ人としての良心を思い出させてくれるような脇をしめる役どころであったと思います。
意外とツボだったのが、フェルゼンとマリーアントワネットの恋です。井上君、念願かなって本日始めて生の歌声聞けました。フェルゼンやるには若すぎるかなと思ったけど、この役にはこのくらいの若さがあったほうがよいと思いました。この人、演技はうすめなのですけど、歌はうまいですね。乱れませんね。低くても高くても、デュエットでもソロでも、演技しても。歌の人なんですね。この安定感は、若手の中では圧倒的にNo.1です。おしいのは、演技と容姿かな。若いのだから、もう少し、ひたすらな思いが出てもよいと思う。こういう引き裂かれるかなわぬ恋は、思いのほとばしりがほしいですね。あとは、いってもしょうがないけど、ばっちり和風なお顔ね。これがわたし好みの彫りの深いくっきり容姿ならよかったのに。フェルゼンの髪型とお洋服は、似合ってよかったです。再演は、井上君じゃないんですって。じゃあ、誰ならいいとっても、いないんですよ。浦井君のイメージとはちょっと違うし。ロンドンでやるなら、それは、オリバーでしょうけどね。
涼風真世さんは、今回の役にはぴったりでした。マリーアントワネットのわがままさとか、愚かさを前面にだした前半と、民衆に追い詰められていきながらも王妃としての威厳を保とうとする姿、フェルゼンへの思い、どれもきちんとこなしており、歌も安定です。ただ、先に書いたように美術のせいもあってか、光輝く頃の王妃のイメージがなかったです。これがあったなら、このミュージカルにこの人ありとなったのでしょうけど。
一番よかったのは、ボーマルシェ、山路さんでした。この方も初?かな?こういう狂言まわしのような役は、皮肉いっぱいでうまくたちまわるような役が多いので、嫌味にならずに邪魔にならずに演じなければいけません。ボーマルシェは、そういう意味では大変自分の役どころをおさえて、出るべきところと、ひくべきところを心得ていました。この人がいるので、カリオストロは必要ないなと思ったのです。
作品としては、エリザベートとレミゼをたして、2で割って思いっきりうすめたようなお話でした。評判ほどに悪くはなく、期待ほどによくもなかったという感じです。
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