2006年5月14日 マチネ
日生劇場(東京)
エリザベート:一路真希 トート:武田真治
フランツ:鈴木綜馬 ルドルフ :浦井健治
今回のチケット争奪戦はすごかったです。はずれまくりで、やっと一枚A席の後ろから2番目をGetできました。日生劇場は、こんな場所でもよくみえました。キャパが少ないのをのぞいたら、帝劇より好きかも。でも、このお席、ベガーズオペラの時は3000円だったのですよ。ちょっと納得できませんけど、ま、ヤフオクの割高チケじゃないだけよしとしよう。
本当は、石川禅さんの時にしたかったけど、上記のような事情で、浦井君と武田君重視で選んだら、禅さんの日はとれませんでした。残念です。禅さんの’夜のボート’聞きたかったです。
前回から感じていたのですけど、わたし、このミュージカル、ちょっと飽きました。このミュージカルの作品というより、このメンバーに。よき言葉でいうと、安定、はっきりいうとマンネリです。特にエリザベートの一路まきさん、ルキニの高島兄、フランツの鈴木綜馬さん。この3人に関しては、年月を重ねた上での発展とか変化が今回の舞台では全然感じられませんでした。と、いうより、退屈なくらい。同じ作品を毎年繰り返すということは、変わらない品質ということも大事なのだろうけれど、何だか同じレベルでとまっていいってものでもないと思います。そろそろ、キャストチェンジの時期なのではないかと思います。エリザベートは、高島兄のお嫁さんシルビアとあと誰かダブルキャストで。ルキニは、是非、橋本さとしさんにお願いしたいです。フランツは、禅さんは残って、戸井さんとダブルとか、宮川さんとトリプルとか。
このマンネリに新しい血をふきこんでくれたのが、武田真治君です。これは、観る前から、期待いっぱい不安いっぱいのサプライズキャストでした。賛否両論分かれるところでしょう。好き嫌いというのも大きく影響すると思います。で、わたくし的にはOKです。ミュージカル俳優としてのレベルという面では、課題は山積みですが、舞台に立つ人というのは、そういうテクニックを超えた天性の才能の輝きこそいのちですから。わたしは、ウィーンでMateのトートを観ていますので、こんな解釈のトートだって全然OKです。今までの日本のトートはおちつきすぎて年寄りくさいと思っていたくらいなので。武田君、思ったとおり、悪魔みたいなトートでした。小ちゃくて、やんちゃで奔放で兄ちゃんなトート。山口さんや内野さんとは全然違います。彼らのトートは、いつも余裕で、エリザベートを手にいれられないまでも、彼女の行動を手のひらでころがすように、冷ややかに見つめていたように思います。大人の男性が、一人の女性に振り回されている感じでした。武田君は、当然、年下の男の子系です。どうみても、エリザベートが年上の女性で、なんで俺の方みてくれないんだようと駄々こねるみたいな。’最後のダンス’も’愛と死のロンド’も背のびした年下の男の子でした。’わたしが踊る時’は、完全にシシイお姉さんに負けているし。でも、いいんです。こういうトート、新鮮じゃないですか。トートは、実体がない役だけに、新しい解釈がどんどんでてきていいと思います。今後もいろんな役者さんがいろんなトートを演じてくれるといいと思います。武田君は、これからどんどんよくなくっていくでしょう。今年は、まだ実験の年。試行錯誤して、武田君のトートを確率してほしいです。今後の改善としては、髪型とダンスですね。髪型は、通常の武田君の長さで、普通に金髪にナチュラルにしあげたほうがよいでしょう。髪が長いと背が低くみえるし、彼の場合は、金髪が似合う人だと思うので。お洋服も無理に高いヒールのくつをはかないほうがよいです。あと、肌がすけてみえるあみあみの黒いシャツもやめましょう。赤いジャケットはかわいくてよかったです。カフェのところで、何故かここは女装してきたほうがよいかもと思いました。どうせ、トートというのは隠してエルマーたちには会っているわけなので、女性活動家に化けたトートというのでどうでしょう?ダンスに関しては、無駄な動きが多すぎ。これは、コレオグラファーの人が考え直してあげてください。武田君、オリジナルの時々、あげる雄たけびもかわいくてよかったです。ちょっとびっくりなのが、ルドルフに死のキスをしたあと、つばをぺって吐くのですよ。これも新しい解釈ですよね〜。トートは結構ルドルフにはいつも近しい存在で、いい関係かと思っていたけど、トートにとってルドルフを死に導くことがそれほど重要でなかったような印象を受けました。
いよいよ3年目のルドルフ、浦井君です。アルジャーノンの時に、ルドルフやるときは、もうちょっとやせてねと思っていたけど、ちょっと間にあわなかったみたいです。さすがに3年目の貫禄、おちつきがでて、こんなに安心してみたのは初めてかも。身長差があって、年齢差のない’闇が広がる’は、どうなるんだろう思ったら、これは前回2回になかったフォーメーションでした。トートとルドルフができるだけ近づかないで歌うのです。’闇が広がる’って、ウィーンでも日本でも、トートとルドルフが腕をひっぱりあいながら、背中からトートがルドルフをぐらぐら揺らしたりする定番のダンスがあるじゃないですか。あれが、なかったんですよ。ちょっとだけ、トートが後ろからまわってルドルフの腕をとるところがあったけど、概ね、前後になったり左右になったりは離れてました。近づいたときは、浦井君はたて膝で、長身を隠しているみたいでしたし。歌の迫力はよかったです。青年二人の若い声ですけど、こういうフレッシュな’闇が広がる’もよいですね〜。武田&浦井コンビ、わたしとしては今までのベストカップルです。浦井君、成長したね〜としみじみしたのが、’僕がママの鏡だったら’です。最初の年のルドルフは、泣き虫でおかあさ〜んというのが強すぎて最後はちょっとひいちゃって、去年のルドルフはその辺が大人になって成長したなと思っていました。今回のルドルフの苦悩は、孤立したり母に見放された個人の悲しみでなく、国を憂う青年皇太子として、ひとりの大人の男性の苦悩になっていました。浦井君、えらいわ、やっと大人になったね。ガラスのような少年が、きちんと他人を国を憂える青年に成長する過程をこの3年間の舞台でみせてくれたことを本当に嬉しく思います。浦井君は、もうルドルフを卒業してもいいと思います。ルドルフとしてたどりつくところまできてように思えるから。この若く美しい姿で、今年を最後にルドルフを卒業してもわたしは許すよ。もちろん、まだまだ、武田君とのデュエット’闇が広がる’はみていたけど、彼の役者としての成長を思う時、タイミングというものも考えねばと思うのでした。
諸事情で、今回は、本日1回かぎりの観劇です。来年以降は、どうしようかな。武田君がまた出るならみてもよいけど。あ、浦井君がまだ続けるなら、浦井君のこともあるけど、ちょっと転機にさしかかっているかなと感じた’エリザベート’でした。
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