2006年5月4日、5日ソワレ、6日マチネ&ソワレ
ピカデリー劇場(ロンドン)
Sky : Adam Cooper Nathan : Neil Morrissey
Adelaide:Sally Ann Triplett Sarah : Kelly Price
アダムがこの作品に出演するという噂が流れたとき、絶対ガセネタだと思っていました。だって、こ れは、去年ユアンマクレガーが出演したウエストエンドの超メジャーなミュージカル作品なのです。 ダンス中心でなく、歌も思いっきり歌うし、いくら我らがアダムクーパーでも、ウエストエンドの真 ん中で主演なんて。。。。と、思っていたら、What's on Stageに正式発表がでて、その夜はもう興奮 して眠れませんでしたよ。早速、航空券検索して、早くもその日に、日程だけは決めてしまいました 。思えば、長い沈黙でした。長い沈黙のあとの、Big Big Surpriseでした。
と、これほどまでに万全の心の準備をしてこの日をむかえたというのに、わたしの体調は最悪でした 。右肩が急に数日前から痛みだし、いっこうによくならず、出発当日は、スーツケースどころか、手 荷物すら持てず、入国カードのサインがやっと。到着の夜のソワレのチケットを思いつつ、お部屋の ベッドに横たわっていたのでした。
そして、到着3日目のソワレ、やっと、アダムの姿を目にすることができたのです!
まずは、街の女性とギャンブラーのダンスから始まります。舞台はニューヨーク。後ろの背景は、黄 色の電飾です。ニューヨークというと、カラフルな赤とかピンクとか緑でピカピカですけど、こちら は一色のみ。全体的に舞台セットはシンプルです。女性は、50年代だか60年代の少し長めのタイトス カートにやわらかめのブラウス、男性は、わりと渋めのグレーのスーツに帽子です。ギャンブラーと いうより、ビジネスマンみたいです。
ダンスが終わると、太っちょのNicely Nicely Johnsonと蝶ネクタイのBenny Southstreetの歌です。 この二人は、この後もたびたび登場して、この作品の代表的な歌を歌います。アメリカンコメディの 中心をなす典型的なお二人です。
そして、再びギャンブラーと、ここからはGuysと呼びましょう、女性達、ここからは、Dollsと呼びま しょう、が登場します。別にわたしが決めたわけでなく、Skyはそのように表現していたのです。そこ へ、赤い制服を着たキリスト教の布教集団、救世軍が。その一人、サラ軍曹がスピーチを始めますが 、誰一人聞いてません。
サラを演じたKelly Priceさんは、本当にお人形のような金髪のくるっくるっの髪で、純粋な世間知ら ずの宣教師ぶりがかわいかったです。特にSkyとしりあって、ハバナではじけちゃうあたりは、映画の サラよりもはつらつとしていました。
サラたちがむなしく去ると地元の警部補がやってきてネイサンをさがしています。この警部補は、唯 一の黒人の方で、そうかニューヨークっぽいという雰囲気です。そこへネイサンが登場。
ネイサン演じるNeil Morrisseyのことを先にみた人に聞くと、かっこよくもなく、歌も別にだし、踊 りは当然うまくないとのこと。映画とかでは、ネイサンはわりと渋い素敵な人のはずなんだけどとか 思っていたのです。あんまり期待しなかったんですけど、この方は魅力的な方でしたよ。14年間も婚 約して、結婚にふみきってくれないけど、やっぱり離れられないタイプのGuysの雰囲気がよくでてい ました。この方は、TV俳優さんらしく、演技でのりきっているという感じでした。
Guysたちは、クラップゲームをする場所を求めて、ネイサンをたよります。ここの’ネイサン、ネイ サン、ネイサン、ネイサン’と呼びかける歌が好きです。ネイサンは、こんなときに頼れる男だった のです。Guysたちの一人が、ニューヨークにSkyがやってきていると伝えます。Skyは、とんでもなく 空に届きそうなくらいの大きな賭けをするのでそう呼ばれているらしいです。(これ、記憶違いかも 。なんかで読んだような)ネイサンは、必ず堵場をさがすと約束します。
そこへ、ネイサンの長年の婚約者、クラブのショーに出るちょっとオールドミスなアデレイドが現れ ます。アデレイドは、ネイサンと結婚したくてたまらなく、彼を大好きで14年目の婚約記念プレゼ ントを嬉しそうに渡します。
アデレイドは、わたしは観れなかったのですけど、この前の回2回くらいはアンダーの人だったそう です。わたしの時は、ファーストのAnn Triplett Sarahさん。かわいい人でした。ちょっとぽっち ゃり目なのが、長いことクラブでがんばっている感じがでており、かわいいながら、ちょっと哀れも 感じ、一人の男性をふりきれないで愛し続けずにはいられない女性感しみじみでした。
アデレイドが去ると、いよいよでございます。アダムですよ〜。白っぽいクリーム色のスーツに白い 靴、白い帽子。この辺は、他のGuysに比べて、遊び人ぽい。通常は、もっと帽子を目深にかぶるので しょうが、我々へのファンサービスなのか、顔がくっきりみえるような浅い被り方です。ネイサンが 世慣れたちょっと疲れた中年のギャンブラーなら、Skyは洗練されたお坊ちゃんぽい遊び人みたいです 。なんだか、すご腕のギャンブラーには見えません。カモにされちゃいそうなくらいです。
ネイサンは、Skyからお金をまきあげて、堵場を借りる資金にしたいと思い誘いかけます。それで、ハ バナに女性を誘っていくように、それもあのキリスト教の布教団のかたそうなサラをと持ちかけます 。
誘えなかったら、1000ドルネイサンに払うという賭けです。Skyは、その話にのって、サラのいる 救世軍の事務所を訪ねます。救世軍の事務所には閑古鳥。Skyの来訪に一同は大歓迎です。事務所のプ レートの文句の引用箇所のまちがいを指摘したり、大げさに泣きませしたり、Skyはすっかり自分のペ ースでプレイボーイぶり全開です。勢いにまかせて、自分とハバナにいってくれたら、罪人をたくさ んつれてくると約束をしてサラをくどきます。サラは、ちょっとくらっとしつつ、わたしにはわたし の考えがあるわというような歌を歌います。運命の人がきたらわかるのとういうような。そして、そ れに答えるアダムの最初の歌です。ふ〜ん、アダムの歌はよくなったといいますが、この辺は、On Your Toesの最初の澄んだ声の頃のさわやかさ系で、驚くほどじゃありません。もともと、こういうプ レイボーイパートはお得意ですしね。わたしとしては、想定の範囲内のかっこよさでした。
舞台はかわって、アデレイドのショーです。これは、わたし的にはどうでもよいところです。二幕で ももう一回あるのですけど、男性向けの内容なんでしょうね。去年見た方によると、最初のキャスト の方のショーはもっとよかったとのこと。アリーマイラブに出ている歌のうまい金髪のお姉さんがや っていて、たしか賞もとったはず。今回のアデレイドさんは好きなんですけど、ショーはどうも。
ショーがはけると、ネイサンが待っています。アデレイドは、実家のお母さんには、とっくに結婚し て、子供もいると手紙を書いていることを告げます。いろいろと悩み多く、風邪もなおらず、お医者 さんに心理学的な本をもらったと紹介します。そんなアデレイドの心を知ってかしらずかネイサンは また、堵場を求めて出ていってしまいます。この二人の、なんとも長い春の関係がよいのです。きっ と最初から変わってないんだろうなと思われるアデレイドの甘ったるい声で甘える仕草と、それがか わいくてしょうがないけど、身をかためるのが嫌なネイサン。
外では、また救世軍が布教をしており、その後をSkyが追っています。ハバナへの確約をとるためです 。サラは無視しますが、そこへ上司のカーライル将軍があらわれ、ぱっとしないなら、事務所を閉鎖 すといいます。そこへすかさずSkyが現れ、木曜日には、たくさん罪人が事務所に現れますよと将軍に つげ、サラはハバナへの誘いを断れなくなります。
ネイサンは、ついに堵場をみつけたらしく、次々とギャンブラーたちが集まってきます。中には、シ カゴの大物ビッグジェリーもいます。そこへ運悪く警視があらわれ、とっさにGuysたちは、ネイサン の結婚前のバチェラーパーティだと言い訳します。それを聞いたアデレイドは、遂にネイサンが身を かためてくれることになったと喜びます。そのあと、救世軍の行進の中にサラがいないことに気づい たネイサンは賭けに負けたとショックで倒れる仕草をします。
次は、ハバナでございます。サラは、初めていただくドルセデレチェのおいしさに大満足で、酔った いきおいでご機嫌です。それまで、お堅い布教のMission Dollだった彼女がはじけて、カウンターに のぼって男達と踊り始めます。Skyは、それをやれやれという目をおくりつつ、なんだかそのはじけぶ りをかわいく思っている様子。おっと、忘れてました。ここのアダムのスーツは、黒なのですよ。お お、白もよかったけど、やっぱり黒だわよ。ぴりっとしまって、さっきのお坊ちゃんぶりはどこへや ら。大人の男性の香り漂います。う〜ん、わたしもハバナへ連れて行って。サラの悪ノリがエスカレ ートして、地元の男にチュッとキスをしてしまう。それをみていたフラメンコっぽい女が怒り出し、 サラとフラメンコ女の喧嘩がダンスまじりにはじまります。ここは、大変嬉しいところです。この半 年以上もの間、待って待って待ち続けたアダムのダンスがみられるのですよ。最初は、フラメンコ女 とのペアです。なんてぜいたくな女でしょう。今まで、地元のチンピラまがいの男とダンスしていた のに。いきなり、ノーブルな香りただようアダムクーパーとのダンスなんて。アダムの踊りをもっと 、もっとみせてと思うのに、ここはソロじゃなく、他の人といりまじって踊るのです。見えないよ〜 、と思うこともしばしば。やがて音楽は激しく、女たちがぐるんぐるん振り回されるダンスが続いて 、音楽がやむとアダムが女性に支えられた格好で深いくちづけ。フラメンコ女は力もちなのか、重く ないようにアダムが膝でふんばっているのか、みていても疲れそうなポーズでした。それをみたサラ は、怒ってフラメンコ女をひっぱたき、二人は喧嘩に。Skyがやっと二人をひきはがし、ハバナの夜へ サラを連れ出します。
サラの酔いは醒めません。ご機嫌で、今の気分をたずねてみてといいながら、ディンドンディンドン の歌を歌います。この無邪気さがすごくかわいくて、Skyが恋におちていくのがよく理解できます。帰 りたくないわというサラを背負ってSkyは飛行機にのります。
ニューヨークに着いて少し冷静になったサラ。Skyは、ここで、サラへの気持ちを打ち明けます。はじ めて、人に自分の本名を告げます。そして、これは一幕最後のクライマックス。'I've never been in love before'ですよ。う〜ん、もう、アダム素敵すぎ。土曜日マチネにみた時、あまりに素敵すぎて 、涙がじわっとにじんできました。あ、けっして、歌がうまくてというのじゃないのですけど。悪く はないのですよ。今までで、一番上手かも。でも、そんなことじゃないのですよ。なんだかわからな いけど、プレイボーイのギャンブラーが本気の恋を語る真摯さが心を打つのですね。アダム、やっぱ り好きです。素敵です。
二人が大盛り上がりをしていると、夜通し布教活動をした救世軍が事務所にもどってきます。Skyが夜 に布教したからとアドバイスをしたからとのこと。事務所では、そこを堵場に使ったギャンブラーた ちが、警察の手入れをからくもふりきり逃げていきます。救世軍は、自分達がSkyにだまされたと思い 、Skyはショックをうけて一幕終了です。
二幕は、またまたアデレイドのショーです。ここは、すごいよ。Tバックの下着一枚になっちゃうんで すよ、最後は。ここまでやる必要あるのかな。まあ、これも哀しいクラブ勤めですね。
ショーがはけて、アデレイドは、ネイサンと結婚するための旅の姿。そこへSkyとNicely Nicely Johnsonがあらわれ、ネイサンは現れないことを告げます。アデレイドは、またギャンブルのために裏 切られたとショックを受け、Skyは、自分たちのようなGuysは普通の人のような生活(結婚とか)には 属さない人間なんだ、どうして他の男にしないんだといいます。アデレイドは、だって彼を愛してい るから、とつげ、自分もサラを愛し始めたSkyはなんとなく納得したりするのでした。
Skyにだまされたと思いつつ、忘れられないサラですが、Skyをみると意地をはります。その誤解をと きたくて、Skyは罪人をなんとしても山ほど事務所に連れて行こうと決心します。そして、Nicely Nicely Johsonに堵場の場所をたずねます。なんと、堵場は、地下のマンホールの中だったのです。
次は、地下のシーンです。ここは、大好きなシーンでした。何が悲しくて、わたしがアメリカンコメ ディをみなくちゃいけないんだと思いつつ、このシーンみたら認識変わりました。このミュージカル 好きです。何がよいって、Guysたちの骨太なダンスなのですよ。ビッグジェリーもネイサンも、踊り ますよ。今まで、アダムが振付けたスマートなダンスをみつけているわたしには、新鮮な男っぽいご っついダンスです。当初は、アダムは踊らないのですけど、アダムぬきでも大好きなダンスシーンで す。群舞の真ん中で、ひとりが踊る人が3人いるのですけど、二人目の人とビッグジェリーがいい味 だしてました。ビッグジェリーは、後半2日はちびっこでなく背の高い人が演じたのですけど、ちび っこのビッグジェリーが個性的でした。このダンスは、目に焼きつきますよ。終わってから、あがる ほうの腕をくいくいさせて真似したりしたものでした。
そして、そして、これは、アダムの出演舞台の中でも名場面の一つとして切り取っておきたいシーン でございます。ビッグジェリーのいかさまなゲームにうんざりしているところへSkyが登場。ピストル をつきつけるビッグジェリーをなぐりたおし、他のメンバーに話をもちかけます。自分が勝てば救世 軍の集会にでること、自分が負けたら1000ドル払う。男達は、そんなことならと賭けにのってき ます。そして、始まる、'Luck be a lady tonight'アダムが、あの白鳥の瞳でこちらをぐっとみつめ て、ダイスを投げる仕草をしながら歌います。おお、それまでは、単なるプレイボーイだった彼が、 初めてギャンブラーの姿を見せる時。ダイスを投げる仕草をする度に、思わず動かせるほうの左腕を 舞台のアダムに伸ばしたい衝動にかられます。ぐっとみすえる視線に、胸につきささり、息もとまり そうです。そして、そして、骨太な男たちの先頭にたって、ぽっけに手をいれたダンスです。う〜ん 、あの黒いスーツに、あの視線、オーラを放つ背中をむけたダンス。もう、感性ぐらぐらで、心がく だけそうになったら、あ、もうおしまい。。。。短いです。あまりに短すぎます。アダムのダンスが 、たったこれだけなんて。でもでも、すごいよかったこのシーン。アダムがSky役に抜擢された理由の すべてがここにありというようなシーンでございました。
もうアダムのかっこよさに酔いしれていますが、お話はがんがん進行します。賭けに負けた男たちが 続々とマンホールをあけて、救世軍の事務所に集まっていきます。アデレイドは、ネイサンをみつけ 、結婚のことを話しネイサンも同意しますが、集会にでなくちゃといって去っていきます。ネイサン が宗教なんかにかかわるわけないと嘘をつかれたと悲しむアデレイド。街を去ろうとします。
集会所にSkyは、男達をつれてきて何もいわず去っていきます。Guysたちの罪の告白大会が歌と共には じまり、反省してんだかしてないんだか、将軍達も大盛り上がりです。警官がやってきますが、集会 では手もだせないし、証拠もありません。警官がさり、ネイサンはハバナの夜にここで堵場をひらい たこを謝ります。また、Skyにサラとのことをもちかけ、Skyはサラをつれださなくて賭けに負けたと いいます。サラは、そこで初めてSkyの自分への気持ちの本気を認識したのでした。
旅立とうとするアデレイドとサラが道端でばったり会います。お互いの思う人のことをしみじみ思い ながら歌うシーンです。ごめんなさい、土曜日マチネをのぞいては、ここは休憩時間でございました 。ほとんど意識ありません。お二人の美しい歌声は、耳にここちよく、わたしを夢の世界へと導いて くれました。
と、いうわけで展開が不明なのですけど、次は、ニューヨークの町並みを結婚式の礼服をきた女性が 行進してきます。そして、ウエディングドレスのアデレイド。ネイサンがいません。と、思ったら、 工事現場の格好をしたネイサンが。かたぎになったのでしょうか。そして、そのつなぎの下には、結 婚式の礼服。救世軍の音楽も聞こえてきます。最後尾には、自ら赤い救世軍の制服をきたSkyも。アデ レイドとネイサン、サラとSkyがゴンドラにのって登っていきます。アデレイドが白いブーケを投げて 、幕が閉じます。
なんと、幸運なことでしょう!まだ右肩が痛くて、体調悪い最初の観劇の夜、このブーケがわたしの 座席に降ってきたのです。白いカーネーションとかすみ草に白いリボン。これまでの悲惨な痛みがい っきに癒されるような出来事でした。神様っているのかもしれないと思った瞬間でした。
正直、アメリカンコメディーのミュージカルか、気が重いわと思っていましたが、何のその、大変た のしい舞台でした。なんといっても、男性の骨太ダンスと、芸達者な歌。女性陣の熟練のハーモニー 。そして、何よりもアダムのかっこよさですね。もう、何がどうのといってもかっこいいんですわ。 アダムの役者としてのパフォーマーとしての成長だの、挑戦だの言葉をならべても、そのかっこよさ に勝る印象なしです。わたしは、アダムのダンスの芸術的な感動にはまった人間ですが、もう、今回 ばかりは、芸術だなんだという前に、とにかく、かっこいい、素敵なアダム、これにつきます。アダ ムの出演シーンもダンスシーンも、絶対に物足りなくて残念ですけど、その出演シーンのかっこよさ の密度はかなり高いものです。右肩痛くても、みんなに迷惑かけても、いってよかったです。あえて よかったです、アダム。素敵でした。忘れられません。
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