Review
レビューというよりも、観劇ノートのように感じたままをそのまま綴っています。


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 [6]   くるみ割り人形 小林紀子バレエ
2007年12月28日
メルパルク(東京)
金平糖の精 :島添亮子 王子:ロバートテューズリー
クララ:谷川千尋 ドロッセルマイヤー:中尾充宏
 
昨日に引き続き連続くるみ割りです。本日もかわりなく、いや、一層発表会関係者が多かったと思います。本当にバレエとして来たお客はわたしとあの髪の長い人だけでしょう。共に、スタダンで誰よりも傷つき、心に深いトラウマを追った者同士でしたが、昨日と今日と完全に癒されました。2日とも行ってよかったです。発表会ノリであろうとも、観客が保護者ばっかりであろうとも、テューズリーの踊りはかわらず、優雅でしなやかで、ノーブルで、どうして、いつもバレエを見ている人々がこの姿を見ずして年を越せるのだろうかと思えるほどでした。
 
と、自分の嬉しさばかり語っていては昨日と同じなので、ちょっとレビューらしいことも書きましょう。小林紀子バレエのくるみは、ワイノーネン版をベースに小林紀子が再振り付けをした小林紀子バージョンです。他のくるみを観たことがないので比較はできませんが、印象としては、子供がいっぱい登場しますね。これは、何度も書いていますように、年末恒例小林紀子バレエ関係生徒の発表会でもあるわけで、その辺を十分加味したものと思われます。幕があくと、パーティーに出かける家族たちが雪道を歩いています。クララの家でクリスマスパーティーが行われており、家族は、父母と弟(でもフリッツでなくフランツ)、おじいちゃんおばあちゃん、使用人や乳母。ドロッセルマイヤーは、気のいい子供に人気のおじさんといった感じでしょうか。ちまたのお教室と同じように男の子が圧倒的に少ないらしく、女の子が何人か男の子役もやっています。パーティーにきた人々の女性はジュリエットみたいなドレスで、男性はタキシードです。今回は、借り物ではないようですが、全体を通して、色も形もお衣装はきれいで好感が持てました。クララは、ドロッセルマイヤーからくるみ割り人形をもらって、夜中に夢をみます。ねずみの軍団が襲ってきたところへ、くるみ割り人形がおもちゃの兵隊と共に助けにくるのかな?と、いうのもここでテューズリー登場のため、昨日はまわりがみえていなくて、本日ここで大量に兵隊役の生徒さんたちが登場していることを知りました。ねずみにスリッパを投げて勝利すると、くるみ割り人形が王子様にかわります。ここからは、いや〜、クララ役、中学生なのにテューズリーにリフトしてもらうんですよ。小林紀子バレエでお勉強してよかったねと思います。そのあと、雪の女王と王と雪の精の踊りです。他のバージョンでは、ここは王子が踊るところもあるそうなので、ここでテューズリーが出てこないのは実に物足りない感じがしました。雪の踊りが終わると一幕終了です。ちなみに、王子の軍服は赤でなく、小林紀子バージョンは青でした。
 
二幕は、わ〜、苦手なディベルティスマンだわと思っていましたが、なんだか慣れてきて、もしかしたら、他のバレエ団でもくるみ割り平気かもと思えました。まずは、スペイン。スペインは、白鳥でもそうですが、どのバージョンもかっこいいです。きびきびして情熱的ですから。こちらも同じくめりはりあってよいです。ダンサーの方々も上手。次がアラブ。わたしは、これはわりと好きでした。大森結城さんって、ジゼルでミルダやった人でしたっけ?この方は雰囲気のある踊りをする人です。そして、中国。これは、客席にはうけていましたが、わたしはどうでもよかったです。次がトレパックというので、ロシアっぽい踊りです。これもよかったと思います。その次と次の順番忘れましたが、両方つまんなかったです。ひとつは、マラトンズ。これはパドドゥなんですけど、男性のサポートがもうひとうなんですね。この2人は、雪の女王と王もやっているんですけど、この雪のペアの踊りもぱっとしなかったです。雪もふくめ、この2人の場面はカットするとしまりがよくなるでしょう。もうひとつは、またまた発表会演目。大きなスカートから大量の子供達がとびだしてきて、多分一番小さい子供達で、お遊戯(バレエになっていない)を踊って帰ります。客席は大賑わいですが、まじめなバレエファンとしては(と、ミーハーなバレエファンのくせにいう)、年末でなければカットしてほしい踊りだと思いました。いい加減、王子と金平糖をみせてくれと思うのですけど、世の中そんな甘くはありません。フラワーズの踊りです。これも悪くはありません。群舞の女性達は淡いピンクの衣装です。リーディングフラワーズは男女のペア4組で、ここは踊れる人々をもってきたのでしょう。どの組も遜色なくきれいでした。こういうところをちゃんとできているので小林紀子バレエは悪くないなと思うのですけど、発表会とミクスされてしまって、ちゃんと踊れる人々は気の毒だなと思います。で、やっと、やっと金平糖と王子の登場です。ここから、しばらくは充実の時間です。パドドゥに続き、王子のソロ、金平糖のソロ、ちょっとまた王子のソロ、金平糖のソロ、で、パドドゥです。島添さんは、もう十分お姉さんなので、かわいくてきらきらした金平糖というわけにはいきません。ジゼルなみの優雅なゆったりしたダンスですが、表情がもともと悲しい系なので、ちょっとこの役にはどうかなと思いました。が、パドドゥの時の表情はほんと、いいんですよ、この人。もう、うっとりと、幸せにつつまれている感じ。王子にしっかりサポートされて、身も心もまかせきっているのですね。この方は、こういう楽しいく見せるだけのバレエでなく、ドラマティックな大人の女性を演じるバレエの方がむいているような気がします。田中祐子さんといい、テューズリーは若くはない日本女性ダンサーを実に美しく踊らせる人です。まあ、このように夢のような世界を体験し、(実際夢なんでしょうけど)、クララは朝を迎えます。クララの傍らにはくるみ割り人形がいて、夢なのか現実なのかわからないけれど幸せな気持ちで幕は降りるのでした。
 
王子がもっとたくさん出てきてほしかったわという思いはかわりませんが、それでも、こうしてテューズリのクラシックを満足のうちにみれたことは大変幸せです。彼は、ほんと、わたしが観たいわ、好きだわという踊り方をする人なのです。くるみは苦手と思っていましたが、こうしてみれるきっかけもできたし、世の中なにがあるかわかりません。小林紀子バレエをテューズリーなしで観ようとは思いませんが、また彼が日本で踊るならば、選んでよいバレエ団だと思います。小林紀子バレエのおかげでよき年の暮れとなりました。
 
update:
2007/12/28



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